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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第36話:「魔法の携帯食と、具材が隠された宝箱」

「よし、これで完成!」


 早朝の厨房で、レナは山のように積まれた「白い塊」を前に汗を拭った。

 ウカの豊穣の力で大量に収穫された白米。それに海塩をまぶし、両手でふっくらと三角形に握り固めた、日本人の魂『おにぎり』である。


「おお! 米が丸められておる! 美しい三角形じゃ!」


 ウカがカウンターの上で狐の尻尾を振りながら、ヨダレを垂らしている。


「ただ米を丸めただけではないか。そんなものが、あの硬い携帯保存パンの代わりになるのか?」


 エドが怪訝そうに、木箱に詰められたおにぎりを見下ろした。

 彼の認識では、探索中の食事といえば「石のように硬いパン」と「干し肉」を水で流し込むだけの、ただのエネルギー補給でしかない。


「ふふん、まあ食べてみてのお楽しみだよ。さあ、今日はこのお弁当を持って、北の『水晶湖』までピクニックに出発!」


「なぜわざわざ湖まで行く必要があるのだ。私はこのログハウスのベッドで寝ていたいのだが」


 セリアが露骨に嫌そうな顔をするが、レナの「じゃあセリアの分のお弁当はなしね」という一言で、白銀の騎士は無言で荷物持ちを名乗り出た。


 こうして一行は、新たな食材(特に、和食に欠かせない『豆』や『茶葉』)を求めて、森を北上した。


 数時間後。

 道中の厄介な魔物たちを、エドとセリアが(お弁当への執念で)瞬殺しながら進み、一行は目的の『水晶湖』へと辿り着いた。

 その名の通り、底まで透き通った美しい湖畔だ。


「よし、お昼休憩にしよう! みんな、お疲れ様!」


 レナが湖畔の岩の上に布を敷き、木箱を開ける。

 海塩の素朴な香りがふわりと漂い、エドとセリアの喉がゴクリと鳴った。


「……いただく」


 エドが一番大きなおにぎりを手に取り、無造作にガブリと噛み付いた。


「――なっ!?」


 エドの目が驚愕に見開かれた。

 ただの塩むすびだと思っていたその中心から、濃厚な旨味が溢れ出してきたのだ。


「中から……肉が!? 砕いた『熊肉のスモーク』が隠されているぞ!!」


「えっ!? 私のは……『巨大ナマズの蒲焼き』が入っている! 甘辛いタレが、内側から米に染み込んでいるぞ!!」


 セリアも自分のおにぎりを二度見して絶叫した。

 異世界人である彼らにとって、外側からはただの白い塊にしか見えないのに、噛り付いた瞬間に「極上の具材」が現れる構造は、まるで魔法かサプライズの宝箱のように映ったのだ。


【料理名:『隠れ家食堂の特製おにぎり(熊スモーク&蒲焼き)』】

【効果:スタミナ継続回復。状態:『驚き』『遠足の加護』を付与】


「あはは、これが『おにぎり』だよ。片手で食べられるし、中にどんな具を入れるかで無限に味が変わる、最強のお弁当なんだから」


「素晴らしい……! ただの携帯食が、立派なご馳走に昇華されている! これなら武器を持ったままでも食えるぞ!」

「塩加減も絶妙だ! レナ、もう一つ! 違う具材のやつを寄越せ!」


「妾の米は最高じゃろう! さあ、妾にもそのナマズのやつを食わせるのじゃ!」


 美しい湖畔で、最強の騎士たちと豊穣の神が、両手におにぎりを持って夢中で頬張っている。

 隠れ家食堂のメニューは、ついに「持ち運べる飯テロ」という新たな領域へと足を踏み入れたのだった。

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