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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第34話:「泥濘(ぬかるみ)の湿地帯と、幻の稲穂を愛する守護者」

「ええい、不快だ! なぜ私がこんな泥水をかき分けて歩かねばならんのだ!」


 ズボッ、ズボッ。

 膝まで浸かるような深い泥の湿地帯。

 白銀の鎧を泥で汚したセリアが、ヒステリックな声を上げながら剣であしをなぎ払っていた。


「文句を言うなセリア。おにぎりのためだ。……チッ、この泥、へばりついて重いな」


 エドもまた、漆黒の外套の裾を泥まみれにしながら、不機嫌そうに舌打ちをする。

 彼らにとって、強敵との戦闘は日常茶飯事だが、こうした「環境ダメージ」を伴う探索は最も嫌う作業だった。


 そんな二人をよそに、一人だけ優雅なのが新入りの神様だ。


「よいではないか、若造どもよ! 大地とはすなわち泥! 泥こそが生命を育む揺り籠なのじゃ! ……ゆけ、我が愛馬よ!」


「わんっ!」


 ウカは、パピーのふかふかの背中にちょこんと跨り、偉そうに指示を出している。パピーもまた、神様を乗せているせいか、泥の上を軽やかに(水面歩行のように)進んでいた。


「ずるいぞ狐! 降りろ! 私がパピーに乗る!」

「ならぬ! 神の威光に泥を塗る気か! ……むっ!? 待て、皆の者! 止まるのじゃ!」


 ウカがピンと狐耳を立て、湿地帯の奥を指差した。


「この香り……間違いない! 『幻の稲穂』はこの先じゃ!」


 一行が指差された開けた場所へと出ると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 濁った泥水の中から、そこだけスポットライトを浴びたように、黄金色に輝く数本の「稲」が自生していたのだ。


「あれが……お米の苗……!」


 レナが目を輝かせて駆け寄ろうとする。

 だが。


 ゴポォォォォォッ……!!


 泥沼が大きく盛り上がり、黄金の稲穂を守るように巨大な影が立ちはだかった。

 ヌメリとした長い巨体。太い髭。そして、人間を丸呑みできそうな巨大な口。


「出おったな! 稲穂の守護者、『大沼のジャイアント・キャットフィッシュ』じゃ!」


「ナマズ……? うわぁ、大きい!」


 レナが見上げるほどの巨大ナマズが、侵入者を威嚇するように長い尾を叩きつけた。


 バシィィィィンッ!!


 泥水が爆発し、強烈な衝撃波が襲う。


「……ふん。ただのデカい魚か」


「泥遊びの代償としては安すぎるが……まあいい。八つ当たりさせてもらおうか」


 エドとセリアが、待ってましたとばかりに前に出た。

 泥汚れのストレスをすべてぶつけるように、二つの殺気が膨れ上がる。


「邪魔だッ!!」

「消え失せろッ!!」


 ズドォォォォォン!!


 エドの巨剣がナマズの頭蓋を粉砕し、セリアの突きが心臓を一撃で貫いた。

 湿地帯の主は、悲鳴を上げる暇もなく、ただの巨大な食材へと変わって沈んだ。


「……相変わらず、食材への殺意が高いね」


 レナは苦笑いしながら、主がいなくなった泥沼へ入り、丁寧に黄金の稲穂を根っこごと採取した。


【貴重品:『幻の稲穂(神の種籾)』を入手しました】


「やった……! これでお米が作れるよ!」


「うむ、見事じゃ! さあレナよ、急いで帰るのじゃ! 泥抜きをして、精米をして……今夜は炊きたての銀シャリ祭りじゃあ!!」


「そうだね! ついでに、この大きなナマズも持って帰ろう。蒲焼きにしたら絶対に美味しいよ!」


「カバヤキ……? 肉か? ならば私が持とう」


 エドが巨大ナマズを軽々と担ぎ上げる。

 泥だらけの探索は終わった。

 手に入れたのは、日本人の心「お米」と、極上の白身魚。

 今夜、ログハウスの食卓に革命が起きる。

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