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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第2章:「最強の護衛と、夢の食堂の予定地」

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第28話:「黄金のハチミツと、ふわふわパンケーキの魔力」

 ログハウスの厨房は、かつてないほど甘く、平和な香りに包まれていた。


「いいですかレナさん。ハチミツの風味を殺さないよう、加熱は慎重に。そして生地には『コカトリスの卵』を贅沢に使いましょう!」


 シャルルがカウンター越しに、目を血走らせて指示を飛ばす。


「わかってるよシャルルさん。……よし、卵白をしっかり泡立てて、メレンゲにして……」


 レナの手元には、木のボウルいっぱいの白い泡があった。

 現実世界では高級品だった卵も、ここではエドたちが狩ってくるコカトリスの巣から無限に手に入る。濃厚な黄身と、タウロスの乳、そして小麦粉を混ぜ合わせ、最後にふわふわのメレンゲをさっくりと合わせる。


「焼くよ!」


 熱した鉄板(普段はステーキ用)に、レナがお玉で生地を落とす。


 ジュワァ……


 優しい音と共に、甘い香ばしさが爆発的に広がった。

 生地はみるみるうちに膨らみ、子供の枕ほどの厚みを持つ「極厚パンケーキ」へと育っていく。


「なんだそれは……? 肉ではないな。膨らんでいるぞ」

「パンか? だが、いつもの硬いパンとは匂いが違う。……甘ったるくて、気が抜けそうな匂いだ」


 エドとセリアが、怪訝そうに鼻をひくつかせている。

 彼らにとって食事とは「肉と塩」であり、この「ふんわりとした物体」は未知の領域だった。


「はい、お待たせ! 『特製・ハチミツたっぷりのスフレパンケーキ』だよ!」


 ドンッ、とカウンターに置かれた皿を見て、全員が息を呑んだ。

 三段に重ねられた、ぷるぷると揺れる分厚いパンケーキの塔。

 その頂上には、タウロスの乳から分離させた『特製バター』が乗せられ、熱でとろりと溶け出している。

 そして仕上げに――レナが『クイーン・ビーの黄金ハチミツ』を、惜しげもなく回しかけた。


 トロォォォ……ッ


 黄金の滝がバターと混ざり合い、パンケーキの肌を艶やかに濡らして皿へと流れ落ちる。


「こ、これは……ッ!! 芸術だ……!!」


 シャルルが震える手でナイフを入れる。抵抗などない。雪のようにフワリと切れた。


「――いただきますッ!!」


 全員が同時に口に運ぶ。


「――んっ!!?」


「……消えた?」


 エドとセリアが目を見開いた。

 噛む必要すらなかった。口に入れた瞬間、シュワリと音を立てて生地が溶け、濃厚な卵のコクと、ハチミツの暴力的な甘さが口いっぱいに広がったのだ。


「甘い……ッ! なんだこの甘さは! 疲れが一瞬で吹き飛ぶぞ!」

「うまい……! 肉とは違う、この幸福感……! 脳がトロトロになるようだ……!」


「おいひいですぅぅぅ……お花畑が見えますぅ……」


 最強の騎士たちが頬を緩ませて骨抜きになり、ミレはまたしても泣いている。シャルルに至っては「これぞ王宮の味……いや、それ以上だ!」と天を仰いでいた。


【料理名:『黄金ハチミツのスフレパンケーキ』】

【効果:MP・精神疲労完全回復。状態:『至福』『糖分の加護』を付与】


「あはは、みんなすごい顔。……うん、甘いって、美味しいね」


 レナ自身も、現実では味わったことのない「本物の甘味」を口にし、その温かさに心からの笑みをこぼした。

 塩気と脂に支配されていた食堂に、ついに「スイーツ」という新たな武器が加わった瞬間だった。

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