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14.愚者は月を欲し天の怒りを買う③


 返事を送り出してから、今度は四日後の事だった。ヴァーミリオンの屋敷に緊急の報が届く。家人には極力秘められ、それは当主にのみ伝えられた。

 これまでアルベルトの元に届いていた()()の封蝋は差出人個人のものだったが、これにははっきりと国章がついている。ナルマフ王国として、アルベルトに宛てられたもの、という意味だ。

 それがどんな意味をもたらすのか、きっと差出人は考えてもいないだろう。これまで読んだ手紙からそう思ったが、どうでもいい事だ。アルベルトはぺりっとそれを破った。

 書簡には思った通り愚かな言葉が並んでいる。曰く、


『たかが公爵風情が、ナルマフ王国の王子であるこの俺に楯突いて無事で済むと思うなよ。俺が直々に、思い上がった貴様のその鼻をへし折ってくれるわ! ついでにリリアンという娘とヴァーミリオンの財産もこの俺が頂いてやろう。首を洗って待っているがいい!』


との事だ。

 アルベルトはやはり、書簡を持つ手をすっと下ろす。


「ミスリル加工の職人とデザイナーの手配を」

「はっ」

「リリアンには何を贈ろうか。ブレスレットか、イヤリングか……ああ、ブローチもいいな。ミスリル鋼の独特の青は、きっとリリアンに似合うぞ」


 ふふ、とアルベルトはいつになくにこやかにベンジャミンを振り返る。


「お前もそう思うだろう」

「ええ。間違いございません」


 ベンジャミンの方も、先日とは打って変わって微笑んでいる。だが、二人とも目つきは鋭い。ぎらりとその目を光らせ、表面上は穏やかな会話をしている。そう、表面上は、だ。内心めちゃくちゃに書簡の差出人を馬鹿にし、こき下ろしていた。


「存分に毟り取ってくれる」


 なにを、とはアルベルトは言わなかったが、これからどうするかなんて決まっていた。適当に上着を引っ掴んで部屋を出る。ベンジャミンは用意しておいた書類を順番に取り出しアルベルトの後を追った。


「お父様? お出掛けですか?」


 ベンジャミンを引き連れたアルベルトが、玄関の辺りに差し掛かった時、階段の上からリリアンの麗しい声が降りてくる。視線を上げれば、そこには天使が佇んでいた。それを認めたアルベルトの表情は自然と柔らぐ。お父様に外出の予定はなかったはずだけれど、と首を傾げている姿は愛らしい。アルベルトはにっこり微笑んでリリアンに向きながら、袖を通した上着の襟を整えた。


「新しいミスリル鉱山が手に入りそうなんだ。数日留守にするよ」


 それに、まあ、とリリアンは目を見開く。


「急なのね」

「そういうものさ、仕事というのは」


 にこやかに茶目っ気を織り交ぜ、そう言えば、リリアンはくすくすと笑い声を上げた。


「それもそうですわね。お気を付けて行ってらっしゃいませ」

「ああ、行ってくるよ」


 すぐに戻るからね、とリリアンの頭を撫でて、アルベルトは屋敷を後にした。

 出発前に天使と会ったのだ。鼻歌混じりの出発であった。



 屋敷を出たアルベルトはベンジャミンを伴い馬を走らせる。向かう先はヴァーミリオン領だ。整いに整いまくった街道をひたすら真っ直ぐ行けば、次の日の昼前には目的地に辿り着く。

 ヴァーミリオン領はやや右に傾いた菱形のような形をしている。その西の頂点から北にかけては、あのアジルテ・ベオに続く山脈に面していた。山脈の頂上から向こう側が、不可侵の土地。トゥイリアース王国の国土に含まれるこちら側の山々は、豊かな恵みをもたらしてくれる普通の山だった。だが魔物の棲家とも呼ばれるアジルテ・ベオへ続くとして、大規模な採掘はこれまでされて来なかった。魔物は地中から沸くのだと、そういう伝承があるくらいには魔物の生態というのは未知数なのだ。もし万が一にも、この山脈の中に魔物が眠っていて、それを起こしてしまったりしたら。山脈は非常に険しく、そしてどこまでも続いている。並大抵のものではなく、とてつもなく巨大なものが眠っているかもしれない。そういう意味の分からない不安が人々の中に燻っているのだ。

 ただの土地でさえそうなのだから、このヴァーミリオン領でも似たような風潮は存在していた。ましてやここは王都にも程近い。先代や先々代の頃より開発と採掘が行われてはいたが、それも表層を漁るばかり。アルベルトの代に至ってはほとんど手を付けていない。何故ならここには大した鉱脈が無いからだ。それが分かっていたから、アルベルトはこれまでそこには手を付けなかった。

 トゥイリアース王国からナルマフ王国へ向かうには、アジルテ・ベオを迂回する形で、ゲブラアース王国とトールゲン王国とを経由しなければならない。持久力があり速度も出せ、空を飛ぶことも出来る魔鳥(まちょう)なら数日だが、陸路で普通に行くとなればひと月以上掛かる道のりだ。ただ、今はそんな悠長な事を言っていられない。

 ナルマフ王国のあの手紙の主は、愚かな事にこちらへやって来るようだった。しかも軍隊を引き連れて。

 その賛否はともかくとして、大所帯を率いるとなると更に時間が掛かるはずだ。そんなの待って居られないアルベルトは、その為にここヴァーミリオン領にやって来た。ヴァーミリオン領から見ると、アジルテ・ベオの険しい山と森を挟んだ北西の方向にナルマフ王国があるのだ。

 ナルマフ王国もまた、国土の一部がアジルテ・ベオに面している。珍しく表層にミスリルという希少な鉱石の産出する鉱山を有している事により、周辺の国から独立した歴史を持つ国だ。小さいながらも周囲の大国相手に渡り合って来れたのは、国主の手腕に寄るものだろう。愚かにもその苦心を台無しにする者が現れてしまったようだが。

 ともかく、アルベルトがヴァーミリオン領の北西にやって来たのは、ここからナルマフ王国に向かう為だった。


「方角は」

「こちらです」


 ベンジャミンは手元の地図と方位磁石とを示してみせる。最短でアジルテ・ベオを抜けるのに効率の良い場所、それを地図上からざっくりと確認する。

 まあ、だいたい真っ直ぐ繋いだ辺りだ。こっちの方かな、というのが分かればそれでいい。


「よし」


 なんとなく良さそうだったので、アルベルトは山の斜面に向いた。

 ここの山は、ここまでは緩やかな登りが続く山林となっている。それが急に立ち上がる岩山にぶち当たったように遮られ、この断崖の上はもうアジルテ・ベオの領域だった。周囲と比べてもここは極端に険しい山脈になる。その向こうは更に高くなって行き、植物の姿は見えない。岩肌が露出しているのが分かる。歴代のヴァーミリオン領主がここに手を付けなかった理由でもあった。岩山は硬く、さほどの利用価値が無かったのだ。

 その岩山に向けて、アルベルトは魔力を放った。魔力は真っ直ぐに岩肌を削って穴を空けた。ぼこんと開いた大口は暗く長く続いているように見える。

 穴は、馬に乗って充分に駆けることが出来る大きさだ。行きはともかく、帰りは迅速に戻れるよう、大きめに作る。馬は現地で調達すればいいからと連れていなかった。王都からヴァーミリオン領まで無理をさせたので、現在療養している。

 アルベルトは何も言わずにその穴に入って行った。ベンジャミンもその後に続く。中は当然真っ暗で何も見えないが、すたすたとアルベルトは奥へ進んで行く。少し進んだ所でベンジャミンが懐から蓄光灯を取り出し岩肌に突き立てた。直線の一本道なので迷う事は無いが、さすがに真っ暗な中を進むのは常人には無理だ、灯りは必要になる。


「む」


 そこからまた少し歩いたところで行き止まりとなった。アルベルトは、顎に手を当てうーんと唸る。使った魔法の効果と現在の状況とに少しだけズレがある。それでよくよく周囲を探ってみれば、なるほど、この辺りには魔力が漂っていた。その魔力に遮られ、魔法の効果が減衰してしまったらしい。

 ならば、とアルベルトは魔力を練った。そうして先ほどと同じようにして、地図に合わせて魔力を放つ。行き止まりの先に道が開いた。今度は山に漂う魔力に阻害される事なく、きちんと思った通りに続いている。

 左右の岩肌の向こう側、地中には伝承に言われているような魔物の気配はなかった。まあ、最初からそんなものが居るとは思っていなかったが、ならば遠慮は無用だと、アルベルトはズコンバコンと最大限に魔力を行使して長い穴を掘り進めていく。

 ちなみにこの時アルベルトが使っていた土属性の魔法は、通り道の分を消失させているのではなく、割れ目を入れて、それを外側に向かって、物理的に動かすというものだった。つまり穴の分、山が外側に動いているのだ。

 膨大な質量を持つ山脈に、支えもなく切れ目を入れる。それはいつ崩れてもおかしくない状況に思える。ただこのトンネルの場合、意外なものがこれを可能にしていた。それは、アルベルトの想定外だった山に漂う魔力だ。それが傷を補うように、トンネルの周囲を押し固め、形状を保たせている。おそらくだがこれがこの土地の特性なのだろう。長く魔力を帯びた物は、独自の性質を帯びるものだった。この山がひとつの物質のようになっているようだ。

 どんどんトンネルを掘り進めるアルベルトはそれに気が付いていた。アルベルトもトンネルを補助するよう、あちこちに楔を打つように細工をしていた。なので大丈夫だろうと思っていたのだが、予想よりも強固な保護が出来ている。そのお陰で補助をする必要が無くなり、余計な魔力を使わずに済んだ。張り切ってガンガン気合を入れてトンネルを掘っていく。

 アルベルトは無言でトンネルを掘り、ベンジャミンは無言でそれに着いていく。一日の後には、工程は半ばほどまで進んでいた。



◆◆◆



 ナルマフ王国の王都を出て南下すると、すぐに大河にぶち当たる。王宮の北はミスリル鉱脈を有する険しい山々で、だから王都は自然の要塞の様相を保っていた。過去に何度か周辺の国や民族に襲われたらしいがいずれも撃退している。王宮が現在もこの場に残っていると言うことは、それが真実であると言う事だ。

 だが、大河を越えてしまえば、その先は見通しのいい草原である。ナルマフは決して裕福な国ではなかったが、気候は安定しており自然の災害も少ない。だから真面目に農作業さえすれば、一定以上の収穫が見込める土地であった。

 その、真面目に農民達が手を入れてきた畑は今、この国の王子が率いる軍によって踏み荒らされている。

 なんてことだ、と農民の一人が叫んだ。


「どうしてこんな事をするんだ!」


 思わずといったような声は、不運にもヘラスの耳に入ってしまう。声のした方向をぎらりと睨むヘラスは、びくりと身体を硬直させた民と目が合った。間違いなく、その男が野次を飛ばした者であろう。ヘラスは怒りに任せて声を荒らげる。


「黙れ! この行軍は今の我が国に必要な事なのだ! なにも貴様ら民を害するものでもなし。ただこの俺が道を行くのみぞ! それを妨げるように、こんな場所に苗を植えるのが可笑しかろう!」


 ヘラスの言葉に幾人かの農民が驚愕に目を見開いた。そんな、という囁きは男の口からも、それ以外の者からも聞こえてくる。それはなにも農民に限った事ではなく、ヘラスの後ろに続く兵からも漏れていたのだが、ヘラスにしてみれば農民も兵も差はなく、囁いた者の全てが、ただの愚者であった。

 ただ、農民の中にはあまりの暴論に声を上げる者がいた。


「む、無茶苦茶だ……! この場所はうちが代々管理して、ずっとそのままなんだ。こんな軍が通るなんざ何十年もなかったんだ!」


 顔面蒼白になった農民はぶるぶると震えている。ヘラスはそれに、はん、と鼻を鳴らす。


「喧しい連中だ。……ならば、そうだ。俺が玉座に就いた暁には、金銭で賄ってやる。馬に踏まれた全てをな。それで文句はなかろうが」


 農民の彼はあんぐりと口を開いた。馬に踏まれた全て? それは生半可な量ではない。大河を渡った彼らは街道が狭いからとわざわざ畑を進んで来て、一切の収穫をだめにした。

 金銭に変換すれば、財源はともかく補填は出来よう。だがしかし、その金でなにを買えというのか。ナルマフはミスリルの産出以外に大した産業が無く、食糧は国民が畑を耕して賄うような生活をしていた。輸入の食糧がまったく無いわけではないが、大きな街道が少ない為に一度の入荷は限られている。そこへ、自国での収穫量が減ったとしたら。金はあっても買う物が無いのではないだろうか。それを、この王子は理解しているのだろうか。

 それに、不安もある。彼は思ったまま、その不安を口にする。


「そ、そんな……じゃあもし、王子様が玉座に座れなかったら、どうなるんだ?」


 だが、その言葉は最もヘラスを愚弄するものであった。ヘラスは即座に頭に血を上らせ、剣を抜いて振り上げる。


「貴様ァ! 俺が玉座に就けぬと、そうぬかすか!!」


 ぎらりと鈍く光を返す刀身と、ヘラスのあまりに険しい剣幕とに、周囲にいた農民達が恐怖に慄いた。


「ひっ、うわああああ!」

「危ない! 殺される!」

「逃げろぉぉ」


 その声に驚いた者までもが駆け出す。誰もが我先にと逃げ出そうとするものだから、その場は混乱の渦に飲み込まれてしまう。


「くそっ、貴様ら!」


 ヘラスの周囲が最も混乱していた。悲鳴を上げる者、とにかく距離を取ろうとする者、中にはヘラスを批判しようというのか石を投げる者までいた。それに更にヘラスが怒るとますます混沌とする。声を荒らげ、農民を追おうとすれば混乱した馬が嘶き嫌がる。それを宥めているうちに、農民達の姿は遠くに離れていってしまっている。


「くそ、忌々しい。たかだか農民ごときがこの俺を害そうとするなど」


 ヘラスは遠ざかった農民を睨み付けた。こちらの様子を伺っている者も居たが大半は姿を消している。周囲には彼らの家があるから、そちらに逃げ帰ったのだろう。

 それをひとつずつ暴いてやりたいとヘラスは思っていたのだが、側近の一人がそれを止めた。


「殿下、それまでに。民になにかあっては、キリウス殿下の付け入る隙を与えるようなもの。ここは堪えられますよう。なによりこれからの日程に障りが出ます」

「……チッ」


 側近の言う事はもっともだった。仕方なく、ヘラスは剣を鞘に収める。この後の事を考えれば捨て置くべき些事だ、そう考えれば怒りはなりを潜める。慣れない武装での行軍のせいで、ただでさえ行程は遅れていた。それもヘラスを苛つかせる要因となっていたのだ。

 それに、とヘラスはちらりと後方に視線を向けた。武器を持たない民を制圧するなどわけもないが、あの兵器を所持したままそれを行えば、キリウスは黙っていないだろう。それを取っ掛かりにヘラスの足元を崩しにかかるに違いない。そうなれば玉座が遠ざかってしまう。

 ふん、と鼻を鳴らしてヘラスは軍を急がせた。行く道はもちろん、畑の中だった。



◆◆◆



 その頃アルベルトは順調にトンネルを掘り進めていた。地図にあった通り、最初に掘った山を一日半進むと森に出た。どこにでもある普通の森に見えたアジルテ・ベオの森は魔物の気配も無く、半日ほどで抜ける事が出来た。ベンジャミンが目印にと願ったので、直線で進めるよう樹木は排除しながら進めばまた別の山にぶち当たる。現在はそれを掘っているところだ。この山も先の山同様、独特の魔力を孕んでいる。こちらの山の方が若干魔力は弱いようだったが、やはり穴を開ければそれを補うような動きを山全体がしてみせる。


「まるで魔物だな」


 アルベルトは率直にそう思った。魔力を持ち、それを使って自己を修復する。それは丸きり魔物と同じ動きだ。


「おやめ下さい、気味の悪い」


 ベンジャミンはそう言って眉を寄せた。もしもそうであれば、今自分達は魔物の体内を進んでいる事になる。のみならずその胴体に風穴を開けているのだ、それが事実なら何かあるかも知れない、と思ってしまうのが通常の感覚だろう。

 だが、この二人にはそんなまともな神経は備わっていなかった。


「そうか? 便利だと思うが」

「それはまあ、山の方からこちらに赴いてくれれば、様々な問題が解決しますからな」

「そうとも。鉱脈を差し出させる事だって出来るかもしれんぞ」

「聞き分けが良いといいのですがね」


 はあ、とベンジャミンは息を吐く。呆れたのでも疲労からでもなく、ただ「もしそれが本当なら」という空想に思いを馳せているからだった。


「ただでさえ聞き分けのない旦那様に手を焼いているのです。この上こんなデカブツまでもがそうであったらと思うと、それだけで胃が痛みます」

「はっはっは。随分と想像力が豊かだな!」

「アルベルト様には負けますが」

「そんなわけなかろう、一緒にするな」

「いえいえそんな、ご謙遜せず」


 ああ言えばこう言う言い合いをしていると、ボコリと手応えの違う音と共にぱっと光が差し込んできた。


「通ったか」


 アルベルトの言葉の通り、かなり先の方に明かりが見える。やっとですか、とベンジャミンは息を吐いた。


「お疲れでは」

「別に」

「如何にアルベルト様と言えどもお辛いのでは?」

「それを言うならお前だろう。よく付いて来られたな」


 お互いの声には呆れが混じっている。そう、屋敷を出てから三日以上経っているが——しかもその間ずっとアルベルトは魔法を使いっ放しだが——肉体的な疲労感が薄いのだ。

 最初の山を掘り進めている間は、トンネル内で日を越した。二人ともやる気に満ち溢れていたし、陽が差さないので時間的な感覚が狂った事もあって、そのせいかとも思ったが、おそらく違う。これはアジルテ・ベオを通ったからだろう。

 神域と言われているだけある。山の魔力が、その中を通る二人の体力を補ったようだ。


「まったく恐ろしい」

「便利じゃないか」

「……アルベルト様はそうでしょうな」


 ベンジャミンはそう言って息を吐いた。貴族家の出身である為ベンジャミンも魔力を有してはいるが、魔法を行使する事はできない。ただ、魔力でもって体力を補う、初歩的な術は使えるようになった。そうでもしなければ、アルベルトに付き従うのが難しかったから覚えたのだ。

 この二国間をショートカットする手段をアルベルトが思い付いた時から、相当疲弊するだろうなと覚悟はしていた。だが実際やってみればさほどの疲労感はない。普段とほとんど変わらなかった。

 それを、気味が悪い、ではなく、便利と言い切るアルベルト。やはりこの方は只者ではないな、とベンジャミンは思った。具体的には「異常だな」とそう思ったのである。

 そんなベンジャミンを背に、アルベルトはごくごく普通の足取りで光の元へ向かった。


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