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異世界戦国記  作者: 鈴木颯手
第五章・加納口の戦い
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第九十二話・荒れる尾張

 稲葉山城の攻略失敗から一月後。俺は漸く落ち着きを取り戻したことで久しぶりにゆっくりとした時間を過ごすことが出来るようになっていた。

 しかし、一月前とは何もかもが様変わりをしてしまっており、何もかもが元通りという訳ではない。先ず、斎藤家に関しては特に何かを言って来てはいない。軽く調べた結果、斎藤利政と俺たちを返り討ちにした斎藤高政は不仲らしく、親子でありながらまるで織田と今川・松平のように冷え切った関係だったらしい。つまり、利政にしてはあり得ない隙を晒したのは俺たちを利用して高政を消すつもりだったのだろう。その結果として稲葉山城が落城したとしても利政はどうにかしてしまえる策を用意していた可能性が高い。……もしかしたら朝倉家との戦いもポーズであり、最初から俺たちを利用して高政を消すための一連の流れだったのかもしれない。

 あり得ない、なんては言えないのが利政の恐ろしさだろう。実際、朝倉家はあれから接触してくる事はなく、俺たちの敗走を聞いてあっけなく兵を引いたのも利政と通じていたと思わせて来る一因になっている。とはいえ今更過ぎる話であり、きちんと調べていれば回避できたかもしれない俺のミスだ。

 次にこちらを狙っていた今川だが、松平が兵を集めている。清康の時代から考えれば比べようもない程規模が縮小した松平家は今川家の力を借りながらこちらへの侵攻準備を整えているようだ。松平単体で来るなら信繁に任せておけば問題は無いだろう。清康の時代ならいざ知らず今の松平に俺たちを相手に出来る力はないからな。いや、決めつけは良くないと稲葉山城で学んだばかりなんだ。しっかりと対策はしていかないとな。


 そして、一番の問題は同盟国の水野家だ。最近になってようやく状況が判明したのだが忠政は討ち死にしたらしい。それどころか次男の信元を覗き嫡男近守、三男信近も討ち死にするなどかなりの大損害を受けていた。それどころか重臣にも死者が出ており水野家は未だその混乱から抜け出せていなかった。


『信元殿。我らが不甲斐ないばかりに申し訳ない……』

『信秀殿のせいではございません。あれは、我々も油断していましたので』


 急遽水野家を継ぐことになった信元の元を訪れた際には謝礼金としていくらか払っている。その際に会ったのだが信元は大分やつれてしまっている。父と兄と弟をいっぺんに失ったのだ。仕方のない事かもしれない。

 俺も信康を失って悲しいから少しは気持ちが分かるが物凄い罪悪感で胸を締め付けられた。更に最近では信元に従わない豪族も出ており折角統一した知多半島はまた荒れる兆しを見せ始めてしまっている。


 とはいえ俺も人の事は言っていられない。俺が美濃攻略に失敗したことで斯波義統は激怒しているとの事で兵を率いていた織田三位を切り殺したという。5年前に初めて聞いた時には政に興味がないと聞いていたが信友の影響下から逃れたことでタガが外れたのだろうか? そのまま尾張守護としてこちらに命令でも出さないと良いんだが……。

 それと尾張北東部に領土を岩倉家織田家も最近はきな臭い動きを見せている。松平家と呼応でもしているのか。兵を集めていたり藤左衛門家の領土に斥候が入ってきたりと積極的に動きを見せている。現状、尾張で唯一弾正忠家である俺たちに従わない中立の勢力だったがいよいよ敵対しようとしているという事なのだろうか。


 このようにあの戦いを皮切りに再び尾張が荒れようとしている。折角尾張に平穏が戻ってきたのだ。何とかして維持したいものだが難しいだろうな。

 そう言えばお目通りを願う者がいるみたいだしその応対の準備もしないといけないか。ゆっくりできると思っていたけどやる事はまだまだあるしゆっくりしている場合じゃなかったな。


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