閑話2・土田の姫
閑話です。土田御前との出会いを書きました。
「皐と申します。信秀様、どうぞよろしくお願いいたします」
「よろしく頼む」
信康の死を受け入れられないまま勝幡城に帰城した俺は家臣たちに指示を出して直ぐに土田政久の娘、皐と会っていた。既に留守居役の家臣や雪とは顔合わせを終えたらしくある程度は打ち解けていた。
皐は少し性格的にキツい印象を抱かせる美人であり、プライドが高そうな雰囲気を醸し出している。とてもではないが誰かに頭を下げるような人物には思えなかった。それも、一瞬驚くほどの平身低頭の様子で。
恐らくだけど生家が既に存在しない事が原因だろう。土田家はあの後直ぐに斎藤家の攻撃で落城したと聞いた。皐もそれを聞いており、故にこうして織田家に縋るしかないから頭を下げているのかもしれない。
「頭を上げてくれ。……土田政久殿の件は本当にすまなかった。俺がもっとしっかりとしていれば……」
「……信秀様が謝る事ではございません」
俺の言葉を聞き、頭を上げた皐はきっぱりと言い切った。そこには戦国武将の娘としての強い覚悟が刻まれているように感じた。
「戦での勝敗など終わるまで分からないものです。勝っていたと思えば負ける事もあります。父上は亡くなるべくして亡くなったと思うようにしております」
「……そうか。だが、俺が不甲斐ないせいなのは事実だ。償いにはならないとは思うが土田家の生き残りは保護するように言ってある。もし、親族で生き残りがいれば真っ先に報告しよう」
「お気遣い痛み入ります」
……仕方ないとは言え皐との会話はものすごく硬い。このままだと親しくはなれそうにないな。近くで様子を見ている雪に視線を向けても悲し気に首を振られるだけだった。どうやら雪でもダメだったようだ。いや、正室と側室だとこんな感じなのか? 俺には正直分からないからどうすれば良いのかも分からない。なまじ雪との仲が良いために皐とどう接すれば良いのか分からない。
「……と、とにかく。土田政久殿との約定は守るつもりだ。不甲斐ない夫ではあるがよろしく頼む」
「こちらこそ、既に亡き土田家との約定を守っていただき感謝します。……私も、信秀様を失望させないように誠心誠意奉仕させていただきます」
「……」
これは、どうすれば良いんだろうな。土田政久が生きていればここまで硬くはならなかったのかもしれないがタラればでしかないし、生きていたとしてもこうなっていたかもしれない。結局、俺に出来るのは直ぐに仲良くなることは諦めて時間と共に仲を深められるように努力することだけだった。
しかし、俺はここから織田家の立て直しの為に精力的に働き、雪もまた妊娠のつわりで皐に構ってやる事が出来ずに半ば放置するような形となってしまった。それが影響したのかしていないのか分からないが俺と皐の仲が深まる事はなく、義務的なやり取りを生涯にわたって続けることとなり、その影響が子供たちの代から出てくる事になるとはこの時の俺は予想もしていないのだった。
土田御前の名前が分からなかったので土田家がいた可児市の市の花であるサツキにしました。
因みに多分ですけど土田御前の出番はこれで終わりだと思います。最終話らへんで出てくるかもしれないですが。




