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第31話 森の集落

 「これは……。凄まじい痕跡ですね。何があったのですか」


 気が付くとユノーが近くまで来ていた。


 俺が作ったクレーターを見て、驚愕の表情を浮かべている。


 「まあ、それは後でいいでしょう。以前カガセ様からご依頼のあったマキリャ族なる人間達の住処が判明しましたのでご報告に参りました」


 「本当か!? 詳しく教えてくれ」


 やっとククルにつながりそうな糸口が見つかった。


 「ここから東に歩いて1日ほどの場所にハカラ山という岩だらけの山があります。彼らはその山の中腹に100名ほどの村を築いているとのことです。彼の地は我らも近づかぬ不毛の地。かなり暮らし向きは苦しい様子だそうです」


 サントの村の門番の言っていた事は事実だったようだ。彼らは街の人間から差別され、そのような地に追いやられたのだろうか。


 「村に小さな女の子はいなかったか」


 「申し訳ございません。子どももいるようですが、現状、村の詳しい状況までは把握できておりません」


 「いや、俺の気が逸っただけだ。すまない」


 初めて得た情報につい前のめりになってしまった。


 今は焦っても仕方がない。


 ユノーたちには継続して情報収集してもらうことにしよう。


 「引き続き、村の様子を探ってくれ」


 「承知いたしました。もうひとつご報告がございます。先日お許しいただいた我々雷狼族の家が完成しました。」


 「できたか! 俺も見に行っても良いか?」


 「わたしも行ってみたいです!」


 「もちろんです。ご案内いたしますので、私の後に付いてきてください」


 俺とラヴェンドラはユノーについて、森の中に向かった。


 なお、ミネルバにはクレーターを元に戻しておくようにお願いしている。


 広場から5分ほど歩いた頃に、ユノーが足を止めた。


 「こちらです」


 「おお!」


 目の前の木立を抜けるとそこには木造の家が数軒建っていた。


 辺りはあまり整地されておらず、樹々の中に家が点在しているようだ。


 家について見れば、三角形の様な形をしており、大きな屋根には苔がびっしりと生え、焦げ茶色の外壁には、ガラス窓はないが代わりに開閉式の木製の窓がついている。


 「良い家だな。何軒くらいあるんだ」


 「この周囲に8軒ほどあります。先にも述べたとおり、我ら狼は元々森の種族ですので、家も森に溶け込むようなものを好みますのでこのような形になりました」


 俺はてっきり規則正しく並んだ家と整地された広場ができるのかと思っていたが、そう言われるとこの方が狼の家という感じがする。


 「わー。可愛らしいお家ですね! 中はどうなっているんですか?」


 「ご覧になりますか? こちらが我が家ですので、どうぞお入りください」


 近くの家の前でユノーが玄関を開けて待っている。そういえばユノーの私生活は何も知らないな。


 「お邪魔しまーす」


 ラヴェンドラの後に続いて俺も中に入った。室内は広いとは言えないが、中央にテーブルがあり、その他の家具も綺麗に配置されていた。そこには中年の女性と女の子がいた。


 「いらっしゃい」


 「こんにちは!」


 二人とも俺たちを見て挨拶している。年の頃は40代と小学校高学年といったところだろうか。


 「母のフローレと妹はエトリアです」


 ユノーにも家族がいたのか。全然そんな素振りを見せないので独り身なのかと思っていた。目の前の二人はどことなくユノーに似ているが、いつも真面目な表情のユノーと違って二人とも表情豊かだ。


 「あ、カガセ様! 前にごちそうしてもらった料理とってもおいしかったです! ありがとうございました」


 さすがユノーの妹は礼儀正しい。今も丁寧にお辞儀をしている。


 「どういたしまして。いっぱい食べて大きくなるんだよ」


 頭を撫でるとエトリアは嬉しそうに笑った。


 「カガセ様。私からもお礼を言わせてください。『赤土の断崖』から逃げだした私達が今こうしていられるのはあなた様のおかげです。それに最近のユノーはとても楽しそうにしているのです。いつもこの顔ですけどね」


 フローレさんもどことなく品があり、大人の女性といった風格だ。


 「あの日、私達を逃がすために、一族の長だった夫は亡くなりました。荒野を彷徨っていた時のユノーは新たな長としての責任とどうしようもない現実に潰れそうになっているようでした。それが今は毎日生き生きとしています。私には感謝しかございません」


 「母さん。俺のことはそれくらいにしてくれ」


 ユノーも家族の前だと一人称が『俺』になるのか。カワイイ奴め。


 「私もユノーにはいつも助けられています。彼がいてくれるから、鉄もできましたし、こうやって皆さんが家を建てる事もできました。私こそ感謝しております」


 「わたしもユノーさんにはいつも頼っていますよ」


 俺とラヴェンドラの言葉を聞いたユノーの表情は相変わらずいつもどおりだ。


 雷狼族とこれだけ良い関係を築けているのはユノーがいてくれるからこそなのは間違いない。


 「お二人とも私を喜ばせても何もでませんよ。ですが、今日は我が家でゆっくりしていっていただければ幸いです。大したおもてなしはできませんが」


 「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ」


 その日はユノーの家族と数時間過ごし俺たちは帰宅した。


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