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第24話 風の刃に鉄の塊

 たたら製鉄所を作成してから5日が過ぎた。


 雷狼族による製鉄が始まってから、そろそろ丸三日が経過する。


 その間、俺は毎日ラヴェンドラと修行していた。


 魔力が体を流れる感覚にも慣れ、今ではモンスターのスキルを使っても気を失うようなことはなくなり、体の使い方もわかってきた。


 ユノーからは今日の午後くらいに鉄の精錬が終わると聞いている。 


 一通り午前の修行を終え、今はラヴェンドラと湖畔で休憩していた。


 そろそろ次のモンスターも作成しておいた方がいいか。


 ダンジョンが成長してからは侵入者は現れてはいない。だが、これだけ大きなダンジョンがあるとなればかなり目立つだろうし、宝箱の中身もランクが上がっているかもしれない。


 『王の威厳』で使えるモンスタースキルももう少し充実させたい。ヒーリングとスパイダーウェブは便利だが、戦闘向きとは言い難い。メテオクラッシュに関しては斧がないと使えないようだった。


 俺はユグドラシルシステムを起動した。


 現在の源素は700。すべて使うことはしたくないが、何がいいか。


 『MONSTER』のリストを隅々まで確認し、俺が決めたのは次のモンスターだ。


 ーーロック鳥 巨大な白い鳥。その羽ばたきは空気の刃となり周囲を切り裂く。また3日に一度、卵を生み出す。モンスタースキル「スラッシュウインド」。必要源素500。

 

 モンスターの説明を見るに、おそらく風系のスキルが使えるのであろう。鳥系のモンスターがいればダンジョン内の把握も容易になるだろうし、卵まで生産できるとなれば言うことなしだ。


 「ロック鳥」


 光が弾けた瞬間、周囲に風が吹き荒れ、湖面に大きな波紋が広がっていた。


 俺の足元に純白の羽毛が数枚、ふわりと落ちた。


 風がおさまり顔を上げると、そこにいたのは、小型のトラック程の体長を持つ鳥だった。見た目は鷹に似ているが、全身が純白の羽毛で覆われ、巨大な翼と大きな嘴を誇っている。


 「新しいモンスターを召喚されたのですね」


 ラヴェンドラが興味津々といった様子で話しかけてきた。


 「今度は鳥さんですね。白い羽毛がとっても綺麗ですね」


 「ああ。ロック鳥さ。スキルも使えるし、卵も生んでくれるらしいんだ」


 「卵まで生んでくれるんですか。なんて良い子なんでしょう」


 ラヴェンドラはロック鳥の頭を撫でている。


 「ロック鳥。君はダンジョン内を飛び回って、異変がないか偵察してくれ」


 ロック鳥は「ピュロロロ」と喉を鳴らすと、飛び去って行った。


 さて、ロック鳥のモンスタースキルを使ってみるか。


 名前は「スラッシュウインド」。ロック鳥の説明にあったように、空気の刃で切り裂くスキルだろう。


 「ラヴェンドラ少し離れててくれるか」


 ラヴェンドラが後方にさがっていったことを確認し、俺は体の中に意識を集中する。


 腹の奥底を発し体内を巡る魔力の流れを感じ取り、右腕に集めた。


 右腕が熱くなるのを感じる。


 「スラッシュウインド!」


 俺は力ある言葉を発するのと同時に右腕を左から右へと振り払った。


 その瞬間、俺の右腕から緑色をした三日月状の空気の刃が躍り出た。


 放たれた刃は、空気を切り裂く高い音を発しながら、高速で進んでいき、俺の遥か前方にあった巨大な岩を真っ二つにした。


 「すごい……。これが俺の力か」


 これまでスパイダーウェブくらいしか使っていないせいか、モンスタースキルの能力をイマイチ実感できていなかったが、これほどまでの力を使えるとは。


 「今のが新しいスキルですか! 緑の刃がかっこいいですね!」


 後ろの方でラヴェンドラが褒めてくれている


 ラヴェンドラのスキルには到底敵わないだろうが、これで俺も戦うことができるかもしれない。ミネルバの時のように見ているだけなのはごめんだ。


 「まだ使い方がわかっていないから、修行しないとな」


 今はスキルを使うだけで時間がかかっているが、集中しなくても自然とスキルを使えるようになりたい。


 「わたしはいつでもお付き合いしますよ」


 「ありがとう。ラヴェンドラがいてくれて助かるよ」


 俺はその後、複数回スキルを使用したが、魔力が切れそうになったため、今日の修行を終えることとした。


 ふと太陽を見ると既に昼は過ぎているようだった。


 「ラヴェンドラ。そろそろ鉄の精錬が終わる頃だろうから、見に行ってみないか」


 「はい!」


 俺はラヴェンドラとの修行に一区切りつけ、たたら製鉄所の様子を見に行くこととした。


 たたら製鉄所に着いた時にはまだ鉄の精錬は終わっていないようだった。


 俺とラヴェンドラは近くで待つことにした。


 「カガセ様は鉄ができたら何が欲しいのですか?」


 「やっぱり、料理の道具かな。包丁に鍋、フライパンとかがあると料理ができるからな。こう見えて結構料理は得意なんだぜ」


 元の世界ではずっと一人暮らしをしていたが、週末にはパンを焼いたこともあるくらいには料理にはまっていたこともある。誰かに振る舞う機会には恵まれなかったのだが。


 「お料理ができるんですか! やっぱりカガセ様すごいのですね!」


 「ラヴェンドラは料理はしないのか?」


 そういえば、料理のことなんて聞いたことがなかった。サントの街では屋台料理や焼き菓子があったくらいだから、この世界の人間は料理もするんだろうが、魔族はどうなんだ。


 「わたしは魔族なので人間のようにお料理などはほとんどしません。大抵の魔族は料理はせず、ほとんどは生のまま食べちゃうか、お料理するとしても火で焼くくらいです」


 「はは。火で焼くだけは料理とは言わないな。じゃあ、料理ができるようになったら一番にラヴェンドラにご馳走するよ」


 「本当ですか! とっても楽しみにしていますね! 約束です!」


 ラヴェンドラは身を乗り出して俺の顔を覗き込んでいる。


 大げさに揺れる彼女の尻尾がその期待の大きさを示していた。


 その時、ミネルバの大きな声が飛び込んできた。


 「完成だ!」


 どうやら鉄の精錬が終了したらしい。


 俺とラヴェンドラは様子を見にたたら製鉄所まで向かった。


 「お越しいただきありがとうございます。やっと鉄ができました。これで鍛冶を行うことができます」


 精錬は三日三晩寝ずで行うと聞いた。ユノーをはじめその場にいた者たちは皆、顔まで黒ずんで汚れており、隠しきれない疲労がにじみ出ていた。


 「ご苦労様。大変だっただろう」


 俺のねぎらいの言葉にみんなは誇らし気な表情をしていた。


 「見てくれ! アタシ達がこのダンジョンで初めて精錬した鉄だ!」


 ミネルバが差し出したのはゴツゴツとした漆黒の塊だった。


 手に取ると見た目の大きさから想像していたよりかなり重く、持つ手にずっしりとした感触が伝わってきた。


 「あとは鍛冶だな! 作ってほしいものがあればなんでも言ってくれ!」


 「ありがとう。だが、みんな精錬で疲れているだろう。今日のところはゆっくり休んでくれ。鍛冶のことは明日伝えるよ」


 ユノーですら疲れた表情をしているというのに、ミネルバはなぜこんなに元気なのか。


 残念そうにしているミネルバを残し、今日は解散することとなった。


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