第21話 新たな力
雷狼族を受け入れてから一週間が経った。
彼等は今では元気を取り戻し、毎日森に狩りへ行っている。
彼らの狩りは狼らしく複数人で行っており、追い立てる役や逃げ道に先回りする役、仕留める役など役割もしっかりしていた。その中でもやはりユノーとミネルバの能力は突出しており、ユノーの全体を俯瞰した的確な指揮とミネルバの圧倒的な力のトドメにより着実に獲物を得ている。
また、アラクネに頼んで少しずつ新しい服も作っている。彼らは身軽な服を好んで着ている。
そんな時、俺とラヴェンドラが家の近くの湖の湖畔で今後の話をしていると、ユノー達が一族の若者を引き連れて現れた。
「カガセ殿、ラヴェンドラ殿、お時間をいただけますでしょうか」
「構わないが。改まってどうしたんだ」
彼らは一斉に俺たちの前に片膝をついて跪いた。
珍しくミネルバも神妙な面持ちをしている。
「まず行き場を失くした我々を受け入れてくれたことに対し改めて一同から感謝申し上げます。この一週間、我々はお二人のご厚情にあずかり、以前の生活を取り戻すことができました。更には衣服まで与えていただき感謝の念に堪えません。然るにお二人からは何の対価の要求もありません」
ユノーの言葉には力がこもっている。
「御恩を受けた以上、お返しするのが道理。ですが我々は何も持ち得ません。率直に申し上げます、我々をカガセ様、ラヴェンドラ様の配下とさせてはいただけないでしょうか。我らにできることなど高が知れておりますが、我ら一同、絶対の忠誠をお約束いたします」
辺りには静寂が満ちている。
俺はユノー達を配下にしたくてこのダンジョンに呼び入れたわけではない。
自分でも俺が誰かの上に立つべき人間だとは思っていないが、彼らの思いは無下にしたくない。
ラヴェンドラを見ると、彼女は俺に向かって小さくうなずいている。
覚悟を決める時か。
「お前たちの気持ちは十分にわかった。いいだろう。今後、俺とラヴェンドラの配下となることを許す。だが、俺としてはお前たちは仲間だと思っている。それは忘れないでくれ」
「ありがたき幸せ。これより雷狼族はお二人に永劫の忠誠を誓います」
ユノーの言葉が終わった時だった。
大地から光の粒が立ち昇り、ダンジョン全体を覆っていった。
俺たちの周囲にも光が溢れ、何も見えない状況だったが、その光は温かく、どこか安心感があった。
そして数秒後、光は消えていった。
今の光は何だったのだろう。悪いものではないと思うが。
「お二人とも今の光に心当たりはありますか」
雷狼族からも困惑の声が上がる中、ユノーが口を開いた。
「いや、何だったのかはわからない」
「わたしも同じです」
「承知しました。ルシナ、ネーニア。お前たちはダンジョンに何か異変が起こっていないかしらみつぶしに確認してこい」
ユノーに命じられた雷狼族の二人は、短く返事をすると素早く森の中に消えていった。
もしかしたらユグドラシルシステムで何かわかるかもしれない。
「では、我々も異変がないか確認してまいります。これよりよろしくお願いいたします」
「よっしゃ! 初仕事といくか!」
威勢のいいミネルバの声とともに、ユノー達も各々ダンジョン内に散っていった。
後には俺とラヴェンドラの二人だけが残されている。
「おめでとうございます! まさか彼らが自ら配下になることを申し出るとは思いませんでした。これもカガセ様の人徳のなせる業ですね。それにしても先ほどの光はなんだったのでしょうか。悪い感じはしませんでしたが」
「もしかしたらダンジョンに何か変化があったのかもしれない。それとあの光を浴びて以降、俺の体も何か変わっている気がするんだ。うまく言えないが力が溢れる感覚というか……」
ラヴェンドラと二人で戻ると明らかにユグドラシルが大きく成長していた。
「カガセ様。ユグドラシルが大きくなっていませんか?」
「ああ。これもさっきの光の影響なのかな」
俺は急いでユグドラシルシステムを起動した。
そこには、次のとおりポップアップメッセージが表示されていた。
『迷いの森のランクが上がり、支葉碩茂の森林に進化しました。今後はダンジョン内であれば紋章に触れずともシステムを起動することが可能です』
「なんだ、これは……」
ポップアップメッセージが消えた後は普段の画面に戻っていた。
だが、従来『迷いの森・Rank1』と表示されていた場所には『支葉碩茂の森林/Rank2』と表示されている。
更には『BUILD』と『MONSTER』のリストにもこれまでいなかった種類が表示されていた。
「カガセ様、どうかされましたか?」
ラヴェンドラが不安そうに声をかけてきた。
「なんでもないよ。もしかしたらさっきの光はダンジョンが進化した証なのかもしれない。ダンジョンの名前も『迷いの森』から『支葉碩茂の森林』に変わっているし、召喚できるモンスターも増えている」
「支葉碩茂の森林……このダンジョンらしい良い名前ですね! それにしてもダンジョンって進化するんですね。やっぱりダンジョンマスターのお力でしょうか」
ラヴェンドラもダンジョンの成長は知らないようだ。
「おそらくユノー達が仲間になったことが原因じゃないかな」
「なるほど! じゃあもっと仲間を作れば、もっと成長しますね!」
眼をきらめかせているラヴェンドラを横目に俺はユグドラシルシステムを更に確認していった。
『MONSTER』の欄の下、『D-SKILL』の項目は以前までは「???」と表示されていた。しかし、今は2つの名称が記されている。俺が恐る恐るその2つを確認すると、そこには次のとおり表示されていた。
ーー王たる器:召喚したモンスターのステータスの一部を自分の力とすることができる。効果はモンスターが消滅するまで消えない。
強化値:生命力=Dー
魔 力=E+
筋 力=D+
知 力=E+
体 力=Dー
素早さ=E-
器 用=E+
ーー王の威厳:召喚したモンスターのスキルの一部を使用することができる。スキルの使用には魔力を消費する。モンスターが消滅した場合はそのスキルも使用できなくなる。
使用可能スキル:ヒーリング(木霊) 対象の生命力をわずかに回復する
スパイダーウェブ(アラクネ) 対象を蜘蛛の糸で絡めとる
メテオクラッシュ(ミノタウルス) 手に持った斧を渾身の力を込めて振り下ろす




