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第12話 サントの街

 「おいしい! お肉なんて食べるのすっごくひさしぶり! 果物もあまい!」


 「まだあるからゆっくり食べな」


  ククルは口いっぱいに食べ物を詰め込みニコニコしている。


 「ふふふ。お口が汚れてますよ」


 ラヴェンドラが優しくククルの口を拭う。


 「お姉ちゃん!やさしくしてくれてありがとう!」


 「え、いや、いいえ。どういたしまして」


 ラヴェンドラは驚いたような表情になってしまった。何かあったのだろうか。

 

 「ごちそうさま!」


 ククルは満足したような顔をしている。


 「ククルはこのあと、街まで戻るのか?」


 「うん。そうだよ」


 「良かったら俺たちを街まで案内してもらえないかな。このあたりのことはあまりわからないんだ」


 「いいよ! わたしも一緒だとたのしいし」


 「じゃあ、薪はわたしが持っていきますね」


 そう言ってラヴェンドラはククルの薪を背負おうとしている。


 「いや、俺が持つよ。ラヴェンドラには食料とか持ってきてもらったし、全部持ってもらうのは俺が申し訳ない」


 いくらラヴェンドラが竜だといっても見た目は少女だ。なんでも持たれてしまっては男がすたるというものだ。


 「そんな。カガセ様にお持ちいただくわけにはまいりません。わたしが持ちます。それにこれ結構重いですよ」


 「大丈夫。大丈夫。ラヴェンドラはククルが危なくないように周りを見張っていてくれ」


 そう言って不満そうな顔のラヴェンドラから薪を受け取る。


 「うっ…」


 「ほら。重いじゃないですか」


 子どもが背負っていたのだから、軽いだろうと思っていたが、実際背負ってみると思いのほか重かった。


 「わたしは持たなくていいの? 怒らない?」


 ククルがおどおどと聞いてくる。


 「街まで案内してもらうお礼だよ。お兄さんに任せなさい」


 「ありがとう!」


 こんなものをククルは背負っていたのかと思うと胸の奥が痛くなった。


 「じゃあ、行こうか」


 ククルから聞いた街までの時間はそこまで遠くないようだった。日が暮れるよりかなり早く着けそうだ。


 彼女からは道中色々な話を聞いた。彼女は街の出身ではなく、近くにある別の村の出身であること。村が貧しいため、街の食堂に奉公に出されていること。食堂の主人が厳しく、食事もあまり出されていないことなどだ。思ったとおり、彼女の境遇はかなり悪いようだった。

 

 「見えた! あれがサントの街だよ!」


 ククルが指さす方には石造りの城壁で囲まれた大きな街が見えた。


 「やっと着いたな! ククル、案内してくれてありがとう」


 「大きな街ですね」


 結局迷いの森からは1日半ほどかかった。


 しばらく歩くと、大きな門に行き当たった。


 門の前には鉄製の鎧に身を包んだ兵士が立ち、片手に槍を持って出入りする者を監視している。


 あと数刻で日が暮れる時刻だからか、出入りはまばらだ。


 幸い、手形や身分確認などはしていないようなのでラヴェンドラのことに気づかれることもないだろう。


 「ここがサントの街だよ! わたしはここでバイバイするね。早く戻らないとご主人様に怒られちゃう」


 ククルは元気にそう言うと俺から薪を受け取っていく。


 「薪を持ってくれてありがとう! お昼ご飯もとってもおいしかった! お兄ちゃんもお姉ちゃんもありがとう! また会えるとうれしいな。バイバーイ」


 そう言うと彼女は街の中に消えていった。


 俺でも重い薪を背負わざるを得ない彼女に未来の希望はあるのだろうか。


 「あの子どもはお前の連れか?」


 俺がククルを見送っていると門の兵士が俺に話しかけてきた。


 「いや。外で知り合っただけだよ。俺がこの辺の地理に明るくないから案内してもらったんだ」


 「なんだ、お前、女なんか連れているが冒険者か。あの子どもはマキリャ族だぞ。あまり近づくな」


 「マキリャ族? なんだそれ」


 「知らないのか? あいつらは奴隷みたいなもんだよ。この辺りじゃ有名さ。近くに村を作ってるが、街の中で最底辺の仕事をしているやつらもいるな。あいつらに近づくと穢れるからって誰も積極的になんて近づかないんだよ」


 なんだって……。ククルにそんな事情が……。


 彼女の見た目やこれまで言動を踏まえればこの兵士の言っていることは間違いではないのだろう。


 「なんで、そのマキリャ族とやらは、奴隷みたいな扱いをされてるんだ」


 「詳しくは知らんが、大昔にこの大陸に存在した魔王に協力したとからしいぞ。本当に魔王なんていたのかわからんがな」


 先祖の業による差別か。それならククルは何も悪いことはしていないじゃないか。


 結局この世界の人間も、元の世界の人間と変わらないのかもしれない。自分より弱い者を作って、自分の地位を確認したいのだろう。


 しかも差別の理由は魔王に協力したからだと。ラヴェンドラは俺を魔王と言っている。これまであまり気にしていなかったが。魔王とはなんなんだ。この世界の過去に何があったんだ。


 ふと、ラヴェンドラの方を見ると、下を向いて震えている。その様子からは静かな怒りを感じる。ラヴェンドラが考えなしに暴れるとも思えないが、俺はこの場を離れることとし、兵士に型どおりの礼を述べ街の中に入った。


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