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第10話 旅の準備

 昨日生み出したモンスターでこのダンジョンの防御能力はある程度整った。


 そろそろ人間の街を探しに行ってみたいが、どこにあるのだろうか。


 ラヴェンドラはこの前、侵入してきた冒険者風の男は南の方に行ったと言っていたが。


 「ラヴェンドラ、ちょっといいか?」


 野菜の収穫をしていたラヴェンドラは作業の手を止めこちらを振り向く。


 野菜も当初のトマトの様な野菜に加えて、ナスやキャベツ、ジャガイモ、かぼちゃの様な野菜が実っている。見た目は元の世界と多少異なるが、味などはこちらの方が上だった。


 「カガセ様、どうかされましたか?」


 「人間の街を探しに行きたいと思っているんだけど、どうだろうか。とりあえず南の方を探してみようかと思っている」


 「わかりました。では、わたしもご一緒します!」


 「一緒に来てくれるのはありがたいけど、その角と尻尾はどうする? 人間に見られたら魔族と気づかれてしまうんじゃないか」


 ラヴェンドラが着いてきてくれるのは心強いが、ラヴェンドラが魔族だとバレてしまっては大騒ぎになる可能性が高い。


 「う……。それは、そうですね……。今は他の服も持っていませんし、どうしましょう? このままだとご一緒できなくなってしまいます」


 そう言うとラヴェンドラはしょんぼりしてしまった。その垂れ下がった尻尾が彼女の落胆ぶりを物語っている。


 「そんなこともあろうかと考えておいたぞ。アラクネ!」


 俺は昨日生み出したアラクネを呼んだ。既にダンジョン内に蜘蛛の巣を張り巡らせ、俺の元に戻ってきていた。


 「来てくれてありがとう。君は布を作れるみたいだが、ラヴェンドラの角と尻尾を隠せるような服を作れないか?」


 アラクネは少し考えた素振りを見せた後、腹部から糸を吐き出し始めた。それは空中で球形を描き、その後だんだんと服のような見た目になっていった。


 そして、完成した服がラヴェンドラの手元にふわりと渡された。


 「これをわたしにくれるの?」


 アラクネはコクリとうなずく。


 「ありがとう! 早速着てみるわね!」 


 ラヴェンドラはとても嬉しそうにアラクネが作った服を着ていく。


 それは、フードが着いた足首が隠れるほどの長さのある旅人風のコートだった。


 「どうでしょう? これなら角も尻尾も隠れるのでわたしが魔族だと気づかれないでしょうか」


 すっぽりとかぶったフードで角は見えず、尻尾も目立っていない。これなら、気づかれることもないだろう。


 「ばっちりじゃないか。コートを脱がなければ魔族だとは気づかれそうにないな」


 「やったあ! これでわたしもご一緒できますね! アラクネありがとう!」


 ラヴェンドラはフードから顔を出し、コートのすそを両手で持ち上げて、得意げなポーズをしている。コート自体はくすんだ色の普通のものだが、彼女が着ると高級品にも見えるから不思議だ。


 アラクネも誇らしげにしている。


 「アラクネ。悪いが俺にもおなじコートを作ってくれるか。あのコートは旅をするのに便利そうだ」


 アラクネは再度コクリとうなずくと、あっという間にもう一着のコートを作り出した。


 「アラクネ、助かったよ。君のおかげでラヴェンドラと一緒に旅ができる」


 俺の言葉を聞いたアラクネは満足そうに両手を挙げて喜んでいた。


 「あとは、食料か。長旅になるかもしれないから、日持ちがする食料を準備しよう。俺は、果物を天日干しにしてドライフルーツを作るから、ラヴェンドラは森の中で動物を狩ってきてくれるか」


 「わかりました!」


 元気よく返事をしたラヴェンドラはコートを脱ぎ、森の中にかけて行った。


 さて、俺はドライフルーツを作るか。


 詳しい作り方を知っているわけではないが、水分量があまり多くないフルーツを数日間、天日干しすればいいはずだ。幸いこのダンジョン内はあまり雨は降らないようだから、適当な果物を見繕って家の前で干しておこう。


 ーーそうこうしているうちにラヴェンドラが戻ってきた。


 「ただいま戻りました」


 「おかえり。成果はどうだった?」


 「はい! こちらをどうぞ!」


 ドンっと俺の前に置かれたのは、ダンプカー並みの大きさのイノシシだった。


 「すごい収穫だな。結構手間取ったんじゃないか」


 「いいえ。森の中を歩いていたら見つけまして、エイっと狩ってきました!」


 エイって……。おれなら一撃でやられてしまいそうだが、それを事も無げに仕留めてくるとは、やはり彼女の力は凄まじい。


 「ありがとう。じゃあ、こいつの肉も干し肉にしたいから、半分は薄く切って干しておいてくれるか。残りは今日の夕食にしよう」


 「了解しました! 今日はイノシシの丸焼きですね!」


 そう言って彼女はルンルンと鼻歌を歌いながら、イノシシの解体を始めた。


 これだけ肉や野菜があるが、鍋などはないので、今は料理ができていない。簡単な木製の皿などはあるが、鉄製の調理器具があれば食事の幅も広がるのだが。人間の街を見つけたら、探してみるのもいいかもしれない。


 ーーその後2日ほど経った。干し肉とドライフルーツも完成し、アラクネには旅用のバッグも作ってもらった。ラヴェンドラに合わせて、大量の食料が詰められる大容量のものだ。


 これだけ準備すれば、問題ないだろう。


 「ラヴェンドラ。明日の朝一で人間の街を探しに出発しようか」


 「はい! いよいよですね! 頑張って見つけましょう!」


 ラヴェンドラは楽しそうに食料を詰め込み始めている。

 

 いよいよこの世界の人間に会えそうだ。


 この世界の人間はどのような街に住んでいるのであろうか。


 できれば人間社会とも繋がりを持っていたい。


 俺は期待に胸が高鳴るのを感じながら眠りについた。


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