【第20話】共感力0のまま国家機密に指定される
ある日、俺の元に、一通の“通知書”が届いた。
差出人:カレルディア王国 情緒衛生管理局
件名:【感情バランスに関する緊急対応通知】
いや、嫌な予感しかしない。
開封した瞬間、ステータス画面に自動で追記された文面が表示された。
【あなたの存在が、国家の感情バランスに深刻な干渉を与えている可能性があります】
【分類:観測困難感情体】
【対応:国家機密として非公開保管処理を実行します】
──おい。
俺、ついに“危険人物”扱いを通り越して、国家機密になった。
スパイ? 暗殺者?
違う。“感情が存在しないサンプル”として、サイレントに処理される枠だ。
もはや、殺されもしない。
保護されもしない。
ただ“誰にも見つからないように保管”されるだけ。
即日、俺は王都から離れた立入制限エリアへ強制転送された。
そこは、魔法の防壁に囲まれた“未分類者収容区画”。
薄暗い地形、通信遮断。Wi-Fiも感情も通じない。
周囲にいたのは、俺と同じく情緒障害のレジェンドたち。
・共感力−7.2で過去に4都市を精神崩壊させた“笑顔の死神”
・「感謝されるとストレスを感じる」呪いを持つ禁断系ヒーラー
・他人の幸せログを見るだけで、魔力が腐る男
──隔離施設に、俺、ジャストフィット。
会話はない。
感情もない。
誰も互いを干渉しない。
それなのに、なぜか、妙な連帯感だけはあった。
俺たちは静かに、ただ各自の推しグッズを黙々と磨いていた。
外の世界にいた頃より、少しだけ居心地がよかった。
でも──
それでも、虚しかった。
“誰にも嫌われない”代わりに、“誰からも必要とされない”。
魔導水晶に表示された新たなログが、追い討ちをかける。
【状態:感情非対応保管体】
【権限:共感スキャン無効】【アクセス制限:全世界】
【あなたは、国家の感情衛生のために存在を非公開とされました】
もはや俺の名前は、行政記録にも載っていない。
ただ一つ、“サンプルA99・ゼロ感情体”としてデータベースに保存されている。
最終的に、俺のIDはこう改名された。
【分類名:志無野 睦夫 → 情報単位 Z-Log0】
──俺、“名前”すら国家に返納した。
第20話、終了──俺、感情を持たぬという理由で国家機密とされ、世界からログアウトに近い処理を受ける。




