【第17話】孤独スキルを極めて逆に進化
俺は、生きていた。
けれど、“存在”はしていなかった。
記憶儀式で精神をクラッシュし、しばらくの間、ログが読み込まれないような状態になっていた俺──志無野 睦夫(49)。
気づいたときには、“情緒遺棄区域”という場所にいた。
そこは、共感力の著しく低い者たちが隔離される、人知れぬ空白地帯。
誰も喋らず、誰も近づかず、誰も目を合わせない。
感情のインフラが切断された場所──情緒の無風地帯だ。
仲間と呼べる存在はいない。
そこにいたのは、俺と同じ“情緒不適合者”たちだった。
・愛を論理記号で語る自己愛魔導師
・悲しみを解釈できず、石像化した吟遊詩人
・感情交換を禁じられた禁呪研究者
ここで、俺は静かに“孤独”を極めていった。
最初のうちは、まだ誰かとすれ違った。
目も合ったし、空気の振動も感じられた。
だが、次第に周囲が、俺のことを認識しなくなっていく。
孤独スキルがレベルアップしていくのが、ログで確認できた。
孤独Lv1:話しかけられない
孤独Lv5:話しかけられても気づかない
孤独Lv10:存在そのものが“他者の認知”から外れる
ある日、集落の広場に立っていた俺の横を、誰かが素通りした。
彼のステータスログに、俺は表示されていなかった。
“すれ違った”のではない。
“通り抜けられた”のだ。
俺の情報が、感情ネットワークから切断されつつある。
そして──孤独スキルLvMAX到達。
【孤独スキル効果:存在視認不可】【記憶残留:ゼロ】
その瞬間、風が吹いた。
どこからともなく、耳元で声がした。
「お前はもう、存在していない」
ログインステータスに新たな異常が発生。
【状態:ゴーストプロトコル】【種別:未登録ログ】【排他ID:発生】
俺の名前は、街のID記録から削除され、
住民台帳からも“空白”で上書きされていた。
まるで、生まれてこなかったかのように。
最後に手元の魔導水晶に通知が届いた。
【新称号を獲得しました:孤独の完成体】
【称号効果:世界から必要とされない】
第17話、終了──俺、“孤独”を極めすぎて、人間カテゴリから除外される。




