第8話 第1章 魔王を倒すための仲間を集めます!③
「……エリス、無理を言って連れてきてしまってすまない。言い訳でしかないが、うちみたいな田舎貴族が、こうした公爵様の公子の誕生日会に招待されること自体、滅多にないことなのだ。たぶんデフトル様と歳の近いエリスがいたからだろうが、滅多にない招待をお断りすることもできなかったんだ。ただ、エリスも頑張ってデフトル様にお祝いの言葉を述べたり、プレゼントを渡したりしてくれたから、最低限の礼儀は守ったと思う。エリスがもうこの場にいたくないのなら、デフトル様に挨拶をしてから帰ろうか?」
「……うん。お父様、ごめんなさい。もう帰りたい」
「(え⁈帰る⁈まだエリスと仲良くなれていないのに、それは困る!できれば、また会う約束をするところまではこぎつけたい!何か彼女と仲良くなれそうな話題はないか?話題……ん?あの本は……)」
エリスとの話題を考えていると彼女が大事そうに本を抱えているのが見えた。
俺は一縷の望みをかけて、その本の話題を振ることに決めてエリスたちに話しかけた。
「シトロギー伯爵、エリスさん、こんなところにいらっしゃったのですか。どうでしょうか?僕の誕生日会は楽しんでいらっしゃいますか?」
「これはこれはデフトル様。もちろん楽しんでいますよ。ですが、娘の体調が優れないようなので、そろそろお暇させていただこうかと思っていたところなのです」
「それは大変ですね。もう少しエリスさんとお話しできたらと思っていたのですが。おや、エリスさんが抱えている本はエヴィメリオ王国の建国記ですよね?僕も好きで何度も読んでいるんですよ。特にエヴィメリオ王国を建国したプロチオ王が仇敵である叔父のチェイオスを討ち果たしたところが好きなんですよ。エリスさんはどの辺りが好きですか?」
「(お願いだ!少しでも良いから、この話題に食いついてくれ!)」
俺が固唾を呑んでエリスの反応を伺っていると、彼女は緊張しているのか、まだおどおどとしていたが俺の顔を見て、「わ、私はプロチオ王が赤ちゃんの時に父親と母親を殺されて山猫に育ててもらったところが好きです。母親が必死で逃げたけど追手に見つかって、もう2人とも殺されてしまうのかなと思ったら、母親が木のうろにプロチオ王を隠してプロチオ王だけ助かった時は良かったと思ったけど、赤ちゃんのプロチオ王はこの後どうなるのかなとハラハラドキドキも感じました。そのあと、山猫が赤ちゃんのプロチオ王を見つけて育ててくれるのも動物の優しさを感じられて大好きです。」と、さっき挨拶してくれた時とは打って変わって一切言葉が途切れることなくエヴィメリオ王国の建国記の好きなところを教えてくれた。
「ああ、そのあたりも興味深いよね。母親が捕まった時は、『え⁈このあとどうなるの?プロチオ王が死んじゃったらエヴィメリオ王国を建国できないじゃん』と、本気で心配したよ。そのあとに山猫がプロチオ王を育ててくれるというエピソードがあるけど、そこはエリスさんが言う通り、動物の優しさを感じるし、プロチオ王の運の強さも僕は感じたよ。やっぱり国を建国する人というのは実力があるだけじゃなくて運も強くなければいけないんだなって思ったよ。」
「そうですよね!動物の優しさを感じますよね!それにデフトル様がおっしゃられた通り、プロチオ王は確かに運が強い方だと私も思います!」
「やはり、エリスさんもそう思いますか。本の感想が同じだと嬉しいものですね。……あの、エリスさんもし良かったらですが、もう少し建国記についてお話しませんか?」
「はい!私もデフトル様ともっとお話ししたいです!」
「エリス、体調の方は大丈夫なのか?」
「うん!大丈夫だよ、お父様!今はもっとデフトル様と建国記について話したいの。いいでしょ?」
「まあ、エリスの体調が悪くなければ、父さんは構わないよ」
「やった!デフトル様、もし良かったら、こちらにお座りになってください」
そう言ってエリスは自分が座っていた椅子を俺に譲ろうとしてきた。
「いえいえ。大丈夫ですよ。椅子ならその辺にあるのを取ってきますから」
俺が自分の座る椅子を取りに行こうとすると、シトロギー伯爵がすでに椅子を取ってきてくれていた。
「デフトル様、どうぞこちらにお座りください」
「ありがとうございます。シトロギー伯爵。それでは遠慮なく。」
俺がシトロギー伯爵の用意してくれた椅子に腰かけると、エリスが自分の座っている椅子を寄せてきて、「デフトル様は他に印象に残っている場面はありますか?」と尋ねてきた。
「そうですねぇ?他に印象深い場面は―――」
俺とエリスは誕生日会が終わるまで建国記について話し合った。
エリスとの共通の話題だから建国記の話を振っただけだったのだが彼女は歳の割に建国記を深く読み込んでおり、建国記について話し合うのはかなり楽しかった。
俺と―正しくはハモン家と―懇意になりたいと考えているエリス以外の公子や公女が話に混ざろうとしてきたが、俺とエリスの会話の内容について来られず、しばらくすると離れて行った。
誕生日会終了までもう少しというところでフロンが俺を呼びに来た。
誕生日会の最後に俺が閉会の挨拶をしなくてはいけないからだ。
本当はもっとエリスと話をして仲良くなりたかったのだが、あまり遅くなると招待した貴族の方々に迷惑がかかるので、しぶしぶ従った。
でも、その前にエリスともっともっと仲良くなるために、また会う約束を取り付けようと考えた。
「あの、エリスさん。もしよろしければ、またうちに遊びに来てくださいませんか?」
「はい!デフトル様がよろしければ、いつでも参ります」
断られることも想定していろいろと策を練っていたのだが、思いがけずあっさりとエリスと次に会う約束を取り付けられた。
「ありがとうございます。では、また会う日を決めるために今度手紙を出してもよろしいでしょうか?」
「はい。楽しみにしております」
「よろしくお願いします。それでは失礼します」
「よろしくお願いいたします。失礼いたします。」
エリスと次に会う約束を取り付けられたので、俺はルンルン気分で閉会の挨拶をする壇上へと向かった。
父上と俺が閉会の挨拶をして俺の5歳の誕生日会は終わった。




