第7話 第1章 魔王を倒すための仲間を集めます!②
「お誕生日おめでとうございます!デフトル様!これプレゼント!」
「ありがとう!……クリマトくん。今日は俺の誕生日会にお越しいただきありがとう!存分に楽しんでいってくれ!」
「……はい。ありがとうございます。それじゃあ、またあとでね」
「ああ。またあとでな」
「(これで6人目か……)」
俺の誕生日会が始まってから、誕生日会に呼んだ貴族の公子や公女が親に連れられて、俺の誕生日を祝ってくれている。
公子や公女はまだ幼い子もいるので敬語がちゃんと使えていない子もいたが精神年齢が高い俺には、そんな幼さも可愛く映っていた。
しかし、その子の親たちは違うようで、公子や公女が敬語を間違える度に顔が引きつっているように見えた。
だが、親たちの本命は俺ではなくて俺の父上と懇意になることなので、俺への挨拶はほどほどにして俺の父上とばかり話していた。
父上もそれを理解しているとは思うが、大事な息子の誕生日を祝いに来てくれた人たちを無下に扱うことはできず笑顔でもてなしていた。
1度目の人生の時は父上の顔を立てて、たいして親しくない貴族の公子や公女と接しなくてはいけない誕生日があまり好きではなかったが、精神年齢が大人の2度目の人生では、父上や誕生日会に来てくれた貴族やその子どもたちの心の内を考えてしまい、大人の大変さや子どもの辛さなどが感じ取れて、楽しくはないが興味深くはあった。
それに俺にはある目的があって5歳の誕生日から2度目の人生をやり直すことにした。
それは誕生日会にやって来る、ある貴族の公女と良い関係を築くことだ。
そのため、楽しかろうと楽しくなかろうと目的を遂行するために、たいして興味のない公子や公女の挨拶に笑顔で受け答えし、その公女が挨拶に来るのを今か今かと待っていた。
「お誕生日おめでとうございます!デフトル様!本日はお招きいただきありがとうございます!こちらプレゼントです!」
「ありがとう!えーと、ガロスくん!今日は俺の誕生日会にお越しいただきありがとう!存分に楽しんでいってくれ!」
「はい!ありがとうございます!では、また後ほど」
「ああ、またあとでな」
父上に言われて、誕生日会が始まる前に今日やって来る貴族の公子や公女の顔と名前を覚えておいて良かった。
自分よりも爵位の低い貴族を相手にすることが多いとはいえ、さすがに名前を覚えてなかったら相手の貴族もいい気はしないだろうからな。
ハモン家の爵位は公爵なので、今日誕生日会に呼んだ貴族のほとんどは、うちよりも爵位が低い。
だから、ほとんどの貴族がハモン家に取り入ろうと親は父上や母上に、ある程度成長した子どもは俺にごまをすっていた。
さっきのガロスはその前に挨拶に来たクリマトよりも言葉遣いがちゃんとしていた。
年齢も9歳だったから分別がつくだろうし、俺に取り入ろうとしっかりと練習してきたのだろう。
そうなると俺にはガロスは損得勘定ができる大人の貴族連中と変わらないように見えてしまい、クリマトのような言葉遣いがまだちゃんとしてない幼い子の方が損得勘定で動いていない気がして好ましく見えてしまう。本当のところは分からないが。
その後も俺に挨拶に来る公子や公女が数人やって来た。しかし、目当ての公女が一向にやって来ないので、俺は少し苛立っていた。
挨拶に来る順番が決まっている訳ではないから、俺の苛立ちは全く無意味なのだが、俺にとってほとんど無価値と言ってもいいくらいの公子や公女と挨拶だけとはいえ付き合わされていると苛立つなと言う方が無理があると思う。
「……それではまた後ほど」
「ああ、またあとでな」
「(これで15人目か……次は誰かな?)」
次に挨拶に来たのは父親に手を引かれた公女だった。
「すみません。デフトル様。うちの娘は引っ込み思案なもので、父親の私が一緒じゃないと挨拶すらできないのです。ほら、エリス。デフトル様にご挨拶しなさい」
「……お誕生日……おめでとう……ございます。……デフトル様……」
おどおどと挨拶してきたエリスという名の公女、彼女こそが俺の待ちわびていた相手、1度目の人生で治癒魔法使いとして勇者プルトと魔王を倒す旅に同行し、プルトが魔王を倒すのに力を貸した3人の仲間の内の1人、エリス・シトロギーだった。
1度目の人生では、他の公子や公女と同じくぞんざいにとまではいかないが適当に扱ってしまい仲良くなることはなかったが、2度目の人生ではエリスと親しくなるために、彼女と初めて出会う日である俺の5歳の誕生日から人生をやり直した。
もちろん、ただ親しくなりたいわけではない。
2度目の人生では、将来的にプルトではなく俺のパーティメンバーとして魔王を倒すのに力を貸してもらおうと考えているからだ。
そういう下心が俺にはあるため、彼女がちゃんとした挨拶ができていなくても、「ありがとう!エリスさん!今日は俺の誕生日会にお越しいただきありがとう!存分に楽しんでいってくれ!」と、しっかりとお礼の言葉を述べた。
「ありがとう……ございます……」
そう言うとエリスはくるりと反転して俺から離れようとした。
まだまだ話し足りない俺は、「ちょっ……」と、呼び止めようとした。
すると、シトロギー伯爵が俺が呼び止めるよりも早く、「エリス、待ちなさい。まだデフトル様にプレゼントをお渡ししてないだろう?ほら、これをデフトル様にお渡ししなさい」と言って、エリスを呼び止めた。
シトロギー伯爵に呼び止められたエリスは俺の方を向き直してシトロギー伯爵から俺へのプレゼントを受け取り、「デフトル様……こちら……プレゼントです」と言って、俺にプレゼントを差し出してきた。
俺は差し出されたプレゼントを笑顔で受け取り、「ありがとう!エリスさん!うわー、中身は何かな~?開けるのが楽しみだよ!」と返答した。
俺としてはかなり友好的に振る舞ったのだが、エリスはこれ以上俺と話したくないようで、「では……また後ほど……」と言うと、俺に背を向けて離れて行った。
そんな娘の様子を見たシトロギー伯爵は俺に頭を下げて、「申し訳ございません!デフトル様!」と謝罪してから、「エリス!待ちなさい!」と、エリスを追いかけて行った。
「(まあ、会ってすぐに親しくなれるとは思っていないさ。まだ誕生日会が終わったわけじゃない!チャンスはまだある!)」
本当は今すぐ走ってエリスを追いかけたいが、まだ俺にお祝いの挨拶をしに来る公子や公女がいたので、グッと我慢をした。
エリスのあと4人からお祝いの言葉とプレゼントを受け取ると今日招待した公子や公女全員と挨拶を交わしたことになるので、最後の公子と挨拶を終えると俺はすぐにエリスを捜し始めた。
俺がエリスを捜して誕生日会の会場―うちの庭―をうろうろしていると、もっと俺と話をしたいと考える公子や公女が話しかけてきたので、できるだけ失礼にならないように―と言っても、かなり失礼だとも思うが―お断りと謝罪の言葉を述べてエリスを捜し続けた。
捜し始めて10分経過したぐらいに誕生日会の会場の端っこの方にシトロギー伯爵と一緒にいるエリスを発見した。
動き回ったため崩れた服や髪を一応整えて、俺はエリスたちに近づいて行った。




