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英雄譚の語り部という人生は嫌なので、人生やり直して今度は俺が魔王を倒します!  作者: 無自信


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第4話 プロローグ 人生やり直します!④

 モーラー様の部屋を出ると、そこは明るい光で満たされた神殿の様に荘厳《そうごん》で広い建物の廊下だった。


俺がその光景に圧倒されていると、「おい、デフトル!こっちだ!」とモーラー様が俺を呼ぶ声が聞こえた。


声がした方を向くと、モーラー様はすでに4~5メートル離れたところにいらっしゃった。


俺は急いでモーラー様の元へ向かうと、モーラー様は、「こっちだ。離れない様についてこい」とおっしゃってから歩き出された。


俺はモーラー様について行きながら、豪華絢爛《ごうかけんらん》なだけの王族や貴族の屋敷とは違い、立派ではあるが無駄な派手さがない神々がお住まいになられている建物の様式美に見とれて、周りをキョロキョロしていた。


「おい、デフトル!あまり周りをキョロキョロ見るな!こっちが恥ずかしくなる!」


「すみません、モーラー様!気を付けます!」


モーラー様からお叱りの言葉を受けたので、俺は周りをキョロキョロ見るのを出来るだけ抑えることにした。


しかし、俺とモーラー様の近くを通り過ぎた神様の数柱が楽しそうに独り言をおっしゃっているのが気になり、「モーラー様、神様というのは独り言をおっしゃるのが好きなのですか?」と、つい質問してしまった。


「は?何を言っているのだ、お前は?そんな好き好んで独り言を言う神がいるわけがないだろう」


「ですが、先程から数柱の神様が独り言をおっしゃりながら通り過ぎて行かれましたよ?」


「さっきから?……ああ、あれは独り言を言っていたのではなくて、肉体を持たない神と肉体を持った神が話していたのだよ。肉体を持たない神は人間の目には見えないから、デフトルにはそう見えたのだろう。」


「さようですか。疑問が解決しました。ありがとうございます」


「そうか。あまり無駄な時間を作るんじゃない!グノースとカイノスが待つ部屋までまだまだ歩くのだからな」


「申し訳ございません!以後気を付けます!」


それからは黙って周りをキョロキョロ見ずにモーラー様の後をついて行った。


「着いた着いた。グノースとカイノスが待っているのは、この部屋だ」


そうおっしゃってモーラー様はある部屋の前で立ち止まられた。


まだまだ歩くとおっしゃってから、体感だが3分ほどしか経っていないように感じたので、「(普段肉体を持たないモーラー様にとっては肉体があることは不便なことでしかないんだな)」と俺は心の中で納得していた。


モーラー様はドアをノックして、「グノース!私だ!モーラーだ!デフトルを連れて来たぞ!ドアを開けてくれ!」と部屋の中にいるグノース様に呼びかけた。


モーラー様が呼びかけてから数秒後、ドアがバーンッと大きな音を立てて開き、部屋の中から金色の長い髪で豊満な胸のとんでもなく美人の女性が出てきた。


「遅~い!モーラーちゃん!カイノスちゃんはとっくに来ているのに!」


「悪い悪い。デフトルにいろいろと説明していたらちょっと時間がかかってしまった」


「まあ、悪いと思っているのならいいけどね。きゃ~!デフトルちゃ~ん!会いたかったわ~!」


そう言ってグノース様とおぼしき女神は俺に抱きついてきた。


俺はいきなり抱きつかれたことに驚いたのとグノース様から漂ってくる―香水によるものなのか体から自然と発せられているものなのかは分からない―とてつもなくかぐわしい香りとグノース様の豊満な胸が俺の体に当たっていることにドキッとしたために体を硬直させてしまった。


「デフトルちゃん頑張ってね!絶対に魔王を倒す英雄にふさわしいのはプルトちゃんじゃなくてデフトルちゃんなんだから!……ん?どうしたの、デフトルちゃん⁈顔が真っ赤じゃない⁈どこか具合でも悪いの?」


グノース様からご指摘を受けて初めて俺は自分の顔が赤いことに気付いた。


何か言い訳をしようと思ったが、グノース様が俺に抱きついているため、グノース様のとんでもなく美しいご尊顔が俺の顔の至近距離にあるので緊張して何も言葉を発することができなかった。


「大丈夫?ねぇ、大丈夫?」


俺が真っ赤な顔で体を硬直させて何も言葉を発せずにいると、余計に心配したグノース様が俺の体にギュッと抱きついてきて俺の顔にご尊顔を寄せて来る。


そのせいで俺はますます体を硬直させ、自分でも体温が上がっていることを感じるほど顔を真っ赤にしていた。


その状況を見かねたのだろう。


モーラー様が俺の体に抱きついているグノース様を引っぺがしてくださった。


「グノース、いい加減にしろ!お前が抱きついているからデフトルは緊張しているのだろう!」


「は~い。ごめんね。デフトルちゃん。」


「……いえ、全く気にしておりません。むしろ、少し運が良かったと……いえ!何でもありません!」


「そう。良かった。」


グノース様に抱きつかれたことを謝っていただいたが、その謝り方を拝見すると反省していらっしゃるようにはお見受けできなかった。


まあ、神様のちょっとしたお戯れは人間である俺は黙って受け入れるしかないのだろう。


それにそんなに嫌なお戯れでもなかったしな。


「カイノスが待っているのだろう?早く中に入れてくれ!」


「分かっているわよ。それじゃあ、モーラーちゃんにデフトルちゃん!私の後について来てね!」


そうおっしゃってからグノース様は自分の部屋に入って行かれた。


その後に続いてモーラー様、俺の順番でグノース様の部屋にお邪魔した。


部屋の中に入るとそこは真っ暗な長い廊下だった。


真っ暗なのになぜ廊下だと分かったのかと言うと長く真っすぐ続いた床だけが真っ暗なのにはっきりと見えていたからだ。


床以外は暗くて見えないというより、まるで壁や天井は存在せずに真っ暗な空間が広がっているところに道しるべとして床だけが存在しているみたいだった。


モーラー様は全く気にされるご様子もなく、どんどん前に進んでいかれた。


俺はその後ろを不安を抱えながらついて行った。


モーラー様は平然と進まれていたが、俺はどうしても不安がぬぐいきれなくて、モーラー様に後ろから、「モーラー様、すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」と声を掛けさせてもらった。


「どうした?デフトル?」


「すみません。モーラー様。この空間は一体何なのでしょうか?モーラー様のお部屋とはだいぶ違うように見えるのですが……」


「ああ、この空間は一種の防犯装置みたいなものだな」


「防犯装置ですか?」


「さっきも言ったが、人間が作ったものを集めたりする神もいるから、部屋と廊下の仕切りがドアだけだと盗まれるのではないかと不安に感じる神もいるのだよ」


「さようですか。つまり、それぞれの神様たちの部屋の空間は自由に作れるから、集めたものを盗まれないようにドアと集めたものが保管されている部屋との間に別の空間を作って、保管されている部屋に入られないようにしていらっしゃるということですね?」


「そういうことだ」


「もう1つ質問してもよろしいでしょうか?」


「なんだ?言ってみろ」


「グノース様は本当に知の神様でいらっしゃられるのでしょうか?」


「どういう意味だ?」


「グノース様がすごく美しいお姿をされているので、本当は美の神様ではないのかなと思いまして……」


「アッハッハッハ。なるほど。そういうことか。グノースは知の神だよ。美の神はちゃんと別にいる」


「さようですか。知の神様であの美しさということは美の神様はさぞかし美しい神様でいらっしゃられるのでしょうね」


「う~ん?どうだろうな。美しさの定義は人それぞれ違うように神それぞれにも美しさの定義は違うのだよ。それに見た目だけの美しさだけじゃなくて、中身の美しさもあるのだよ。デフトル、それを理解しておけよ」


「はい!私は浅はかなことを聞いてしまいました。以後気を付ける所存です」


「モーラーちゃん!デフトルちゃん!早く早く!」


先に行かれたグノース様がドアの前で手招きされていた。


「分かった分かった!デフトル。本当は走りたくないのだが走るぞ!」


「はい!承知いたしました!」


俺とモーラー様はグノース様が待っているところまで走った。距離としては80メートルあるかないかぐらいだったが、到着した時にはモーラー様は肩で息をされていた。


「モーラーちゃん体力なさすぎ」


「うるさい!普段から必要のない肉体に入って行動しているお前の方がおかしいのだからな!というか、そんなことよりも早く中に入れろ」


「そうだったね。モーラーちゃん、デフトルちゃん、私の部屋にようこそ!」


そうおっしゃってグノース様はドアを開けられた。俺はモーラー様の次に部屋の中に入った。


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