第3話 プロローグ 人生やり直します!③
ずっと気になることが1つだけあったのでモーラー様の機嫌の良さそうな今が聞くチャンスだと考えて聞いてみることにした。
「モーラー様、1つ質問してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないぞ」
「モーラー様は何故プルトではなく私が勇者にふさわしいとお思いになったのですか?」
「ああ、そのことか?それは単純な話だよ。プルトが神に対する信仰心が薄いからだよ」
「それだけですか?」
「それだけ?それだけあれば十分だ!我々神という存在を軽んじるようなやつに栄誉を与えること自体間違っているのだ!まあ、プルトに与えられた運命は魔王を倒す勇者に選ばれることであって、魔王を倒すことまでは決められていないと言えば決められていないのだが」
「え⁈勇者に選ばれても必ず魔王を倒せるわけではないのですか?」
「そうだ。神々は面白い運命を見たいから一番面白いところは結果を決めないで置くのだ。結果が分からない方が楽しめるからな」
「そうですか……ということは、モーラー様や他の5柱の神様以外の神様たちは私よりもプルトを勇者に選んだ方が面白そうだとお考えになったということですか?」
「おそらくそういうことになるな。プルトの英雄譚を編纂したデフトルなら知っていると思うが、プルトの父親は先々代の勇者に選ばれて魔王を倒す旅に出たが返り討ちにあって殺されてしまう。それだけでなくプルトが育った村は魔族によって滅ぼされてしまう。そして、プルトは天涯孤独になる。プルトが勇者に選ばれて魔王を倒したら物語を引き立てるだろう要素がこれだけあると面白い運命を見たがるだけの神々はプルトを勇者に選ぶだろうな」
「そうですよね。私自身もプルトの英雄譚を編纂している時、何て物語みたいな人生を歩んでいるんだろうと思いましたから」
「実は私も面白さだけで言ったらデフトルよりもプルトの方を推したくなる気持ちがあった。だが、信仰心の薄いプルトよりも毎日の礼拝を欠かさないほど信仰心の厚いデフトルの方が勇者にふさわしいと私は考えた。プルトが魔王を倒した後、不憫に思うほどの人生をデフトルが歩んだのを見て、私はパンディナモス様にそのことを直訴した。そのことで、他の神々から冷ややかな目で見られているが私は気にしない!だからデフトル、できることなら私の行動が無駄にならないように努力してほしい!」
「承知いたしました。モーラー様。私はモーラー様の行動が無駄にならないように2度目の人生では必ず勇者に選ばれて魔王を倒します!」
「ああ、頼んだぞ!実は運命を変えることはできないが、デフトルを推す神の中に知の神であるグノースがいるから知識の加護を与えることをパンディナモス様がお許しになっているのだ」
「知の神のグノース様?知識の加護?失礼かもしれませんが、それは具体的にはどのような加護なのかお教え願えますか?」
「フフッ。聞いて驚くなよ。なんと1度目の人生の記憶を持ったまま2度目の人生を始めることができるのだ」
「1度目の人生の記憶を持ったまま?ということは1度目の人生で失敗したことや選択を間違えたことを今度は変えられるかもしれないということですね?」
「ああ、それも可能だ。しかしデフトル、お前は重大なことに気付いてない。お前の1度目の人生で魔王を倒すのに一番役立つものがあるだろう?」
「私の記憶の中で魔王を倒すのに役立つもの……もしかして私が編纂したプルトの英雄譚の知識ですか?」
「その通り!お前の人生で多くの時間を費やしたプルトの英雄譚を編纂し語り継がせる仕事が役に立つときが来たのだ。その記憶があればプルトが倒した魔王軍の幹部が使う魔法だけでなく、魔王が使う魔法も分かるわけだからな」
「それだけではなくてダンジョンの攻略法なんかも分かりますね。いいことずくめではないでしょうか。あれだけ嫌々やっていた仕事でしたがこんなふうに役に立つときがやって来るなんて人生って分からないものですね」
「まあ、お前がプルトに負けた後、プルトの英雄譚に関する仕事に就かなければ、私はお前のことを不憫に思わなかったかもしれないから、1度目の人生でプルトの英雄譚に関する仕事に就いていて良かったかもしれないな」
「そうですが、欲を言えば1度目の人生で勇者に選ばれる方が良かったですね」
「ハハハハッ!確かにそっちの方がやり直さなくて良いから、そっちの方が良かったよな。さて、私からの話は大体終わったから、そろそろ移動しようか?」
「移動?どこへ移動すればいいのでしょうか?」
「知の神グノースと時の神カイノスが待っている部屋までだよ」
「部屋?この何もない空間に部屋なんてあるのですか?」
「ああ。ここは私の部屋で、このドアから出られるぞ」
モーラー様がそうおっしゃられたので、俺はキョロキョロと辺りを見回すのをやめてモーラー様の方を向いた。するとさっきまで何もなかった空間にドアが出現していて、モーラー様がドアノブを握っていらっしゃった。
「どうなっているのですか?さっきまでドアなんてなかったですよ!」
「この空間については説明してなかったか?私たち神が精神だけの存在で普段は肉体を持たないことは説明したよな?」
「はい。それはお聞きしました」
「精神だけの存在だと何もない空間でも問題はないのだが、神々の中にはいろんな考えを持つ神がいて、普段から肉体の中に入って過ごしたり、人間が使っている物を集めたりする神もいる。そんな神々が1柱で過ごせる空間を求めるようになったので、神々の議会で神1柱ずつに個別の部屋を与えることが決まったのだ。」
「つまり、モーラー様は普段肉体を持たないし、人間が使っている物を集めたりもしないので、モーラー様の部屋はこのような何もない空間が広がっているというわけですか?」
「そういうことだ。ちなみにドアからしか部屋から出ることはできないし、部屋に入ることもできない。はっきり言って、私からすれば不便になったとしか言えないな。以前はもっと簡単に他の神々の所へ行けたのだがね」
「私のようなただの人間には理解できない苦労があるのですね」
「まあ、そうだな。それではデフトルの質問にも答えたし、グノースとカイノスがいる部屋に向かうとするか」
「はい」
モーラー様がドアを開けて部屋を出て行かれたので、俺もそれに続いた。




