第29話 第6章 貴族学院入学!③
いろいろと助言をもらい、自分の好きな戦闘スタイルと照らし合わせた結果、スケーロは二刀流を選んだみたいだ。
あと性格も少し変わったような気がする。
今までの俺はスケーロに対して粗暴で単純な奴だというイメージしかなかったため、教師や同学年の生徒の意見などはすぐに聞かなくなるのではないかと思っていたが、意外と真面目に他の人の意見や助言を聞く素直なところがあったみたいだ。
ただ、これはスケーロの性格が素直なのか強くなりたいという欲求に素直なのかはよく分からなかった。
さらにスケーロは単純な奴だから少しでも強くなったら俺に再戦を挑んでくるだろうと思っていたが、俺がスケーロに勝って助言を与えてから1年経っても勝負を挑んでこなかった。
スケーロはきっと確実に勝てると思える日まで勝負を挑まないつもりなのだろうと考え直したが、さすがにあと少しで貴族学院を卒業する頃になっても勝負を挑んでこないとは思わなかった。
スケーロがこんなに慎重な奴だとは思わなかったためにかなり驚いた。
俺から勝負を挑もうかとも考えたが、最高に強い状態のスケーロと戦いたかったので、強くなっている段階のスケーロに俺が勝ってスケーロが強くなるのを諦めてしまってはもったいないと考え、じっくり機が熟すのを待った。
そして遂にその日がやって来た。
卒業まであと4ヶ月という日の戦闘実習の授業でスケーロが、「デフトルくん、手合わせをお願いできるかい?」と聞いてきた。
周りの生徒も手を止めて、俺の返答内容に聞き耳を立てていた。
「もちろん、いいとも!それじゃあ、さっそく始めようか」
試合のコートが1つ空いていたので担当教師に審判をお願いして試合を始めることになった。
「随分と久しぶりだなぁ。スケーロくんと戦闘実習で試合するのは」
試合が始まる前に何気なくスケーロから長い間試合を申し込まれてないことを口に出してみた。
するとスケーロは、「長い間待たせて申し訳なかった。でも、デフトルくんに太刀打ちできる水準になるまで試合を申し込みたくなかったんだ」と答えた。
「ということは、今はその水準に達しているってことだね?」
「それは口で言うより、試合で証明するよ」
スケーロからは、かなりの自信が見て取れた。
スケーロが今まで必死に努力していたことは知っていたので、自信がついているのも納得できた。
「ではこれより、デフトル・ハモンくん対スケーロ・ペイスマターリくんの試合を開始する!それでは……始めっ!」
審判の号令で試合が始まった。
コートの周りで素振りなどをしていた生徒だけでなく、他のコートで試合をしていた生徒までもが手を止めて俺とスケーロの試合に釘付けだった。
他のコートの審判をしていた教師が一度は試合を中断しないように注意したが、「これは無駄だろう」と感じたのか、それ以上は注意しなかった。
俺は最初にスケーロと試合した時と同じく少し下げた位置で木剣を構えてスケーロが攻めてくるように誘ってみたが、スケーロはその誘いに乗らなかった。
「(こんな誘いに乗るようじゃ成長しているとは言えないよな。だけど、これには対処できるかな?)」
俺は右足を引いて姿勢を低く構えた攻撃態勢をとった。
さらに笑顔を作ってスケーロとの試合で始めて魔法を使用した。
「全力で行くぞ!スケーロくん!」
「来い!デフトルくん!」
俺は左足で強く床を蹴ってスケーロに向かって突進した。
団長に勝つために速く動く訓練はしてきたので、この速さならスケーロも対処できないだろうと考えた上での戦法だ。
思った通り、すんなりとスケーロの懐に入ることができたので、スケーロの右脇腹に重たい一撃を加えてやった。
だが、スケーロは全く動じることなく―おそらく魔法で体を鉄のように硬くしていたから耐えられたのだろう―俺目掛けて両手の木剣を振り下ろしてきた。
俺はそれを素早く後ろへ飛び退いてよけた。
態勢を整えようとしたが、スケーロは後ろへ飛び退いた俺をさらに追撃してきた。
2本の剣をただ振り回すのではなくて、基本は右手に持った木剣で攻撃してきて俺の攻撃を防ぐ時に左手に持った木剣を使っていた。
二刀流のスケーロと戦うのはこれが初めてだから単純な比較はできないが、以前のスケーロよりも剣の扱い方が上手くなっているように感じた。
ほぼ押されっぱなしな状況だったが、俺は勝機が来るのをじっと待った。
するとやはり攻撃一辺倒だったスケーロは息切れを起こして攻撃の手を一旦緩めた。
俺はそれを見逃さず、スケーロの首のあたりを目掛けて木剣を振った。
スケーロはそれに対応して左手の剣で俺の攻撃を防いだが、スケーロの木剣の刀身は折れた。
俺がさらに追撃を行うとスケーロは右手の木剣で俺の攻撃を防ごうとしたが、さっきと同じくスケーロの木剣の刀身は折れた。
「そこまで!」
審判をしていた教師から試合終了の号令があった。
「スケーロくんが試合続行不能により勝者デフトルくん!」
俺とスケーロは試合開始の立ち位置に戻り、お互いに、「ありがとうございました」と言って頭を下げて試合は終了した。
試合が終了した瞬間、ワッと歓声が上がって俺とスケーロは同級生に囲まれてしまった。
「さすがデフトルくん!信じられない強さだよ!」
「でも、スケーロくんもすごかったよ!」
「そうそう!途中まではスケーロくんが優勢に見えたからね!」
「木剣が折れなかったら試合結果は変わっていたかも!」
俺は周りの同級生にもみくちゃにされて少し戸惑っていたが、スケーロの方を見るとスケーロは俺よりも戸惑っているように見えた。
俺は俺を囲んでいる同級生をかき分けてスケーロの方へと向かった。
「スケーロくん、良い試合だった!ありがとう!」
「デフトルくん……そう言ってもらえると少しは救われるよ。俺の努力も全くの無駄ではなかった気がして」
「誰かに無駄な努力だと言われたのかい?」
「いや、そうじゃない。ただ、デフトルくんはさっきの試合で本気を出していなかっただろう?それで、俺の今までの努力ぐらいではデフトルくんに本気を出させることはできないんだなぁと思ってさ」
「スケーロくん、それは……」
「分かってるよ。デフトルくんは勇者に選ばれるためにずっと努力してきたんだろう?それに比べたら俺の努力なんて……」
「ちょっと待ってスケーロくん!俺が勇者に選ばれるために努力しているってキミに話したことあった?」
「いや。でも卒業生の確かシトロギー伯爵家の令嬢が話しているのを聞いたことがあるんだ」
「(エリスか。あまり他の人には言わないでほしいと言ってあったのだけどなぁ)」
「……デフトルくん、俺じゃ力不足かもしれないけど、また俺と試合してくれるかい?」
「ああ、喜んで」
そう言って俺とスケーロくんが握手すると、また周りの同級生の歓声が上がった。
この戦闘実習の授業の後は卒業するまでスケーロくんとは何度も試合をした。
全試合俺が勝ったが、試合結果が気にくわなくてスケーロくんが暴れるということもなかった。
1度目の人生の時と同じ人物だとは思えないくらいスケーロくんはまともな性格になった。
きっと1度目の人生の時は常勝していた状態がスケーロくんを思いあがらせていたのだろうと俺は結論付けた。
2度目の人生では俺に何度も負けることで、思いあがるような実力がないことを痛感して1度目の人生の時は見せなかった真面目さやひたむきさを見せたのではないだろうか。




