第27話 第6章 貴族学院入学!
アナムス兄さんが魔王軍との戦いで命を落としてから3年後、俺は16歳となり貴族学院に入学する年齢になった。
もう魔法が使える俺にとって貴族学院に入学して得られる恩恵は少ないのだが、貴族の公子は入学が義務付けられているのでわがままを言わずに入学した。
本音を言えば次の勇者選抜御前試合まであと2年しかないのでハモン公爵領の騎士団員の方たちと訓練している方がずっと有意義だと感じていた。
ずっと模擬試合で勝てなかった団長には15歳の時に初めて勝つことができた。
真っ向勝負で勝つことができたので、父上も俺が勇者を目指すことを認めてくださった。
その後、俺が貴族学院に入学するまで団長と23回模擬試合をしてもらったが、俺の10勝13敗で勝ち越すことはできなかった。
俺が貴族学院に在籍していた2年間は谷間の世代と言われていて王族が1人も在籍していない期間だった。
そのため、公爵の息子である俺が一番爵位が高かった。
だからといって1度目の人生の時も爵位を鼻にかけて偉そうに振る舞うなんてことはしなかった。
1度目の人生の時も次の勇者選抜御前試合に出て勇者に選ばれることしか考えていなかったので、周りに敵や取り巻きを作るなんてことはしなかった。
ただ、公爵の息子ということもあったので学院での成績は高い順位を保つように努力していた。
同じ学年に100人くらい貴族の公子が在籍していたが座学では5位以下を取ったことがないし、実習ではずっと次席だった。
もちろん、2度目の人生でも貴族学院はただの通過点に過ぎないので、周りに偉そうに振る舞って敵や取り巻きを作るなんてことはするつもりがない。
ただし、今度の人生では戦闘実習で主席を取りたいと考えていた。
貴族学院に入学して最初の授業で自分の魔力供給源を教師に教えてもらい、魔法実習の授業で魔法を発動できるように練習する。
そして、魔法が戦闘向きの生徒は戦闘実習で魔法を使用する許可が下りる。
だから、初めの内は戦闘実習で高い成績を残している生徒でも、生徒全員が魔法を使えるようになってくる頃には、戦闘向きの魔法を使える生徒に追い抜かれるということがある。
1度目の人生の時の俺は13歳の時から勇者に選ばれるために本気で鍛えていたので、最初の戦闘実習から好成績を残したし、魔法が使える頃になっても身体強化と物質強化という戦闘向きの魔法が使えるため成績は下がらなかった。
だが、ただ一人だけ一度しか勝てなかった相手がいた。
それがペイスマターリ侯爵の息子のスケーロと言う奴だった。
1つ爵位が上の貴族の息子と言うのが癪に障るのか、何かにつけて俺に突っかかってくるやつだった。
ただ、スケーロは頭があまり良くなかったので、座学の成績で俺が負けることはなかった。
それもまた気にくわないのか、唯一俺に勝てる戦闘実習では俺のことをこてんこてんに負かしていた。
しかし、俺も勇者を目指していたため1人だけ勝てない相手がいることが許せなかったので、必死に努力して貴族学院での最後の戦闘実習でなんとか1度だけスケーロに勝つことができた。
スケーロはペイスマターリ家の三男なので家督を継げないため貴族学院を卒業した後は王国騎士団に入団したというのを人づてに聞いた。
俺が2度目の人生の戦闘実習で首席になるためには、まずスケーロに勝つ必要性がある。
2度目の人生では一応勇者に選ばれるため10年以上特訓を欠かさなかった自負があるのでスケーロに負ける気がしなかった。
貴族学院に入学して3週間後、初めての戦闘実習の授業が行われた。
まだ生徒のほとんどが自分の魔力供給源を知ったばかりなので魔法を使える生徒は少なく純粋に戦う力が問われる段階だ。
まずは1対1で戦う試合形式の訓練から始まった。
最初に当たった相手は、へっぴり腰のうえに木剣すら握ったことがないような戦いの「た」の字も知らない相手だった。
一応貴族の公子なら少しは剣の練習をしているはずなのに構えすらまともにできていなかった。
いじめるのもかわいそうなので試合が始まったら、相手の木剣を叩き落として試合を終わらせた。
するとすぐに教師がやって来て、「ディスタシくんではデフトルくんの相手が務まらないみたいですね。どうしましょうかね。」と悩み始めた。
俺が周りを見渡すと俺とディスタシくんの試合の決着の早さに驚いてこちらを見ていた人たちが俺から視線をそらして自分たちの試合を再開した。
「(他の奴らも俺の相手は務まらないだろうな。一人を除けば)」
俺がそう考えていると、「うわぁぁぁぁぁぁ!」という叫び声が聞こえた。
声が聞こえた方へ目を向けると、座り込んで右肩を押さえている生徒とその生徒に勝って意気揚々としている図体のでかい生徒が見て取れた。
「大丈夫か⁈アーコンくん⁈スケーロくん、やり過ぎだぞ!」
近くで試合を監視していた教師がすぐにやって来て、図体のでかい生徒に注意をしていた。
「先生すみません。俺なりに手加減はしたつもりだったのですが足りなかったみたいですね。以後気をつけます」
「謝るのは私にではなくてアーコンくんに対してです!」
「そうですね。アーコンくん、申し訳なかった」
「いえ、僕も大きな声を出し過ぎたかもしれません。もう痛みも引いてきたので気にしないでください」
一見丸く収まったかのように見えたが、俺の近くにいた生徒が他の生徒に、「スケーロの奴、最低だな。アーコンくんの父親は男爵だから侯爵の息子である自分に逆らうことはできないと分かっていて、あそこまでやったんだよ」とボソッと話しているのが聞こえてきた。
1度目の人生の時も、この場面はあった。
その時は少しの正義感と強いやつと戦いたいという渇望から先生に頼んでスケーロと試合をさせてもらった。
結果で言えば俺の負けだった。
俺は4発攻撃を当てたがスケーロは6発攻撃を当ててきた。
しかも、最後の強烈な1発で俺は気を失ってしまった。
自分から勝負を挑んで負けるという醜態をさらしたが、この一件で俺はほとんどの生徒からの好感度を上げ、スケーロはほとんどの生徒からの好感度を下げることとなった。
「(今回は俺が勝つ!)」
「はい!先生!ちょっとよろしいでしょうか?」
「どうしましたか?デフトルくん?」
「スケーロくんと訓練をやってみたいのですがよろしいでしょうか?」
「スケーロくんと⁈まあ、デフトルくんならスケーロくんの相手ができるかもしれませんが……」
「お願いいたします」
「分かりました。スケーロくんとちょっと話をしてきます」
そう言って先生はスケーロの所へ行き、二言三言話をしてスケーロと一緒に俺の所へ戻ってきた。
「スケーロくんも是非にという話だったので、デフトルくんとスケーロくんで訓練を行ってもらいます。良いですか?デフトルくん。絶対に無理をしないでくださいね。そしてスケーロくんはあまり本気を出し過ぎないようにね」
「はい。もちろんです」
「分かってますよ。」
こうして俺とスケーロの1対1の試合形式の訓練が始まった。




