第23話 第4章 作戦終了。(事件の結末)
俺がハモン家の屋敷に戻って4日後、エリスからお礼の手紙が届いた。
内容は違法に魔石を採掘していた坑道とため込んだ魔石を証拠として押さえることができたこととアナカトたちの様な実行犯を捕まえることができたことへのお礼だった。
実行犯のアナカトたちはシトロギー伯爵領の隣の領地の貴族であるプラナス伯爵の命令で魔石を採掘していたと認めたので、シトロギー伯爵はプラナス伯爵の悪事を貴族同士の争いを裁くエヴィメリオ王国大裁判所に訴えたらしい。
おそらくこれでプラナス伯爵を罰することはできるだろうが、黒幕のアプリト大臣まで裁くことは難しそうなため不安を払拭することができないとも書いてあった。
俺は最初から今回の計画でアプリト大臣まで裁くことができるような証拠を見つけることは無理だろうと考えていた。
だけど俺が今回の計画を実行に移したのは、違法に魔石を採掘していた坑道やため込んだ魔石を悪事の証拠として押さえることさえできれば、すべてがうまく行くと1度目の人生の知識で分かっていたからだ。
だから、俺は、『エリス、安心してください!アプリト大臣はそのうち勝手に失脚しますから』と返事の手紙に書いてエリスに送った。
1ヶ月後、エヴィメリオ王国大裁判所の裁判長はプラナス伯爵に爵位剝奪と禁固20年の判決を言い渡した。
一族郎党全員死罪になる国家反逆罪を捏造しようとした罪は認められなかったが、他の貴族の領地で違法に魔石を採掘していた罪が認められてかなりの厳罰が与えられた。
ただし、財産のほとんどを贖罪金としてシトロギー伯爵に支払えば、爵位剥奪ではなく領地の縮小と爵位を男爵に降格の罰にしても良いという判決が言い渡された。
プラナス元伯爵は贖罪金を払うことを選んだらしく、プラナス元伯爵の嫡男が男爵として家督を継いだらしい。
プラナス元伯爵は裁判中に「アプリト大臣にそそのかされた!」と発言したらしいが、アプリト大臣が否認したし、かかわっている証拠も見つからなかったらしく、アプリト大臣の罪が裁かれることはなかった。
エリスはそのことをかなり不安に感じているという内容の手紙を何度も寄越したが、俺はその度に、「アプリト大臣のことは大丈夫ですよ」という主旨の手紙をエリスに送った。
プラナス元伯爵の裁判の判決が出てから1ヶ月後、アナトリー国とディティカ王国の使者がエヴィメリオ王国にやって来てシルヴァリア国王陛下に対して、「契約した魔石がいつまで経っても送られてこないのですが、どうなっているのでしょうか?」と訴えたらしい。
国王陛下はそんな契約に全く身に覚えがなかったが、使者の話を聞くと、「アプリト大臣と契約書を交わしている」と答えたらしい。
国王陛下がアプリト大臣を問い詰めると契約書を交わしたことを認めたらしい。
しかし、それ以上は黙秘したらしく、国王陛下はアプリト大臣の身辺を徹底的に調べさせたらしい。
すると、アナトリー国とディティカ王国の使者が持参した契約書と同じものがアプリト大臣の執務室から見つかり、どちらの使者もアプリト大臣が、「そのうち大きな魔石の鉱山が手に入る予定だ」とおっしゃっていたと発言したらしく、プラナス元伯爵の裁判での発言が取りざたされた。
アプリト大臣はずっと黙秘したが、ある程度証拠が出てきたため、エヴィメリオ王国大裁判所からありもしない魔石の契約を他国と結んだ罪から領地没収と爵位剥奪、さらに禁固20年が言い渡された。
1回目の人生でアプリト大臣の罪が明らかになった時、アプリト大臣はシトロギー伯爵領の魔石が手に入る3ヶ月くらい前からアナトリー国とディティカ王国に魔石を売る契約をしていたらしいと聞いていたので、いつかはこうなるだろうと思っていた。
貴族間の契約や他国との契約では契約書が燃えたり破かれたりしないように、契約書を保護する魔法をかける魔石が含まれたインクで契約書を書くのが通例だ。
そのためアプリト元大臣は自分が持っている契約書を処分することができなかった。
だから他国と契約するときは慎重になるべきなのにアプリト元大臣は自分の計画が絶対成功すると過信して魔石が手に入る3ヵ月も前に契約してしまっていた。
でもそのおかげでプラナス元伯爵が裁かれた後、アプリト元大臣の罪を暴こうとこちらから行動しなくても自爆してくれたのでこちらとしてはありがたかった。
アプリト元大臣が失脚したニュースを聞いたエリスからは、「これで安心することができます。デフトル、あなたのおかげです。ありがとうございます」というお礼の手紙が送られてきた。
手紙には、「デフトルがアプリト元大臣は放っておいても失脚すると分かっていたのも神のお告げですか?」とも書いてあったので、「その通りですよ」と返事の手紙を送った。
エリスはアプリト元大臣失脚のニュースを知ってから、俺との約束を守るため魔法の特訓に本腰を入れているらしい。
まずは自分の魔力供給源が何なのかを探すところから始めているらしい。
自分の魔力供給源が何なのかを知ることが魔法を使用する点において一番大事だが、貴族でも16歳から18歳の貴族の公子が入学することを義務付けられている貴族学院に入学するまで自分の魔力供給源を知らない人がほとんどだ。
貴族学院に入学するとまず始めに自分の魔力供給源を知る授業を受けることになる。
直径20㎝くらいの巨大な魔石に触れると、数秒後には教員から自分の魔力供給源を教えてもらえる。
巨大な魔石は「触れた人の魔力供給源を判別することができる魔法」を使用することができる。
とても貴重な魔石でエヴィメリオ王国には、それ1個しか存在しないと言われている。
なので、ほとんどの貴族は魔法を使えるが、貴族学院に入学するまでは自分の魔力供給源を知らない人がほとんどだ。
貴族学院に入学する前に魔法を使えるようになる人は偶然自分の魔力供給源に気付くか、親や兄弟の魔力供給源とは同じか似ていることが多いので、そこから推察するかのどちらかだ。
1度目の人生でプルトの英雄譚を編纂したので、その仲間だったエリスの魔力供給源は知っているから、神のお告げで知ったことにしてエリスに教えようかとも考えた。
しかし、1度目の人生ではエリスは貴族学院に入学していないのに自分の魔力供給源に気付き、治癒魔法を使えるようになって魔王を倒すプルトの仲間として活躍した。
2度目の人生では今のところ俺の仲間になってくれそうだが、やはり1度目の人生と同じくらい活躍してほしいと俺は考えている。
エリスがここで俺から魔力供給源を知るという楽な道を通ってしまったら、ここぞというところで踏ん張れない人間になってしまいそうなので、俺から教えることはやめておいた。
それでもエリスはシトロギー伯爵の魔力供給源から推察したりして魔力供給源を特定して魔法が使えるようになろうと努力していると手紙には書いてあった。
もちろん、エリスにだけ努力させている訳ではない。
俺も日々努力していた。




