第22話 第4章 作戦終了。(帰宅)
エリス1人で馬車に乗るのは寂しいだろうから俺とスピドロが乗る馬車に一緒に乗らないかと提案してみた。
すると、昨日までの不機嫌さはどこに行ったのかというくらいの笑顔で、「乗ります!」とエリスは答えた。
馬車での移動中も機嫌が良さそうに会話してくれるので、昨日までの不機嫌さは俺の勘違いかとも思えた。
だが、どうしても気になったので、直接エリスに尋ねてみた。
エリスは少しばつが悪そうに不機嫌だった理由を答えてくれた。
「つまり、俺がエリスに勇者を目指していることを話してなかったことに腹を立てて不機嫌になっていたという訳なのですね?」
「……はい。だって私とデフトルは友だちじゃないですか!友だちなのにデフトルの将来の目標も教えてもらえていなかったのかと思うと寂しいような悲しいような気持ちになってしまって……」
「エリス、申し訳ありませんでした。もっと実力をつけて打ち明けても恥ずかしくなくなったら父上だけでなく、あなたにも話そうと思っていたのです。ですが、あなたをそんな気持ちにさせてしまったのなら、もっと早く打ち明けるべきでした。本当に申し訳ありません」
「いえ、私の方こそ申し訳ございません。自分でも子供っぽい考えだとは思っていたのですが、すごく寂しくて悲しかったもので」
「今度からは重大なことでも些細なことでも全部相談することにします!」
「ありがとうございます。私も相談することにいたします。デフトル、私をあなたの魔王を倒す旅の仲間にしていただけませんか?」
「え?」
「もちろん、私も勇者の仲間として恥ずかしくないような実力をつけますので、どうかお願いいたします!」
いずれ俺の方からお願いしようと思っていたことなので、エリスの方から申し出てくれたのは好都合なのだが、ここですぐに了承してしまうと勇者の旅の仲間が誰でも良いように感じられてしまう気がした。
ここは少し渋った方が良さそうだな。
「エリス、理解しているのですか?勇者の仲間になるということは、今の不自由のない生活は送れないし、危険と隣り合わせの旅に身を置くということなのですよ」
「『分かっています!』と言いたいところですが、私が想像するよりもはるかに危険な旅なのでしょうね。ですが、そんな危険な旅に出ようとしているデフトルをただ見送ることだけはしたくないのです!お願いいたします!私も連れて行ってください!」
「……分かりました。ただし、連れて行くには条件があります。魔法の特訓をしてください。私が勇者に選ばれた時に魔法を使いこなせるようになっていたら、仲間として一緒に旅に出ましょう」
「ありがとうございます!私、魔法の特訓頑張ります!」
「ところでエリス、魔法といえばエリスを人質に取った毛むくじゃらの男をシトロギー伯爵が射殺しましたが、あの異様に高い命中精度はもしかするとシトロギー伯爵の魔法によるものではないのですか?」
「はい。おそらくあれはお父様の魔法によるものだと思います。お父様の魔法は物を意のままに操るというものなので」
「やはりそうでしたか!物を意のままに操るというのは大きかったり重かったりしても大丈夫なのですか?」
そこからはシトロギー伯爵や俺やスピドロの魔法のことや俺が勇者になるためにどんなことをしているかをエリスと話し合って盛り上がった。
次の日にシトロギー伯爵の屋敷に着いたらエリスと別れて、俺とスピドロと執事たちとハモン公爵領の騎士団員たちは、うちの屋敷へ向けてすぐに出発した。
少し休んでいくことをエリスは提案してくれたが、気持ちが萎えない内に勇者を目指していることを父上に伝えたいと考えていたので、申し訳ないがエリスの申し出を断ってすぐに出発した。
馬車で移動している間、どう父上に説明したら勇者を目指すことを許してくれるか考えたが、結局俺の気持ちを正直にぶつけるしかないだろうという結論に至った。
4日かけてうちの屋敷に戻ってきた俺は屋敷の中に入ると父上の居場所を使用人に聞きだして書斎へ向かった。
書斎へ向かう途中、俺の帰りを待っていた母上に呼び止められた。
「ただいま戻りました。母上。」と挨拶をしたら、母上は俺を抱きしめて泣き崩れてしまった。
どうやらシトロギー伯爵と父上は遠くにいても会話することができる魔石を使ってやり取りをしていたらしく、俺がヴノーに行って起きたことをすでに父上と母上はご存じだったみたいだ。
母上は俺が危険な目に遭っていたことを父上から聞いて、俺に大事ないか気に病んでいたみたいで俺の無事を確認すると緊張の糸が切れて泣き崩れてしまったようだ。
母上を安心させたい気持ちもあるが父上にすぐに話したいこともあったので、母上が泣き止んだところで母上を使用人に任せて父上がいる書斎へ向かった。
急いで書斎まで来たが、いざ書斎のドアの前まで来るとなかなか中に入る決心がつかなかった。
父上も俺が独断専行して最終的には自分の命だけでなくエリスの命まで危険にさらしたことを知っているとなると、まず初めにお叱りの言葉、いやお怒りの言葉を受けることになるだろうと思うとなかなかドアをノックする勇気が出なかった。
さらに、俺は父上に「勇者を目指したい」という簡単に承諾してもらえそうにないことを承諾してもらえるように説得しようとしている。
それも原因で俺はドアをノックするために上げた右手を何度も上げ下げした。
しかし、このくらいのことで躊躇しているようでは、勇者になんかなれるはずがないぞと自分を奮い立たせて、書斎のドアをノックした。
「どうぞ」という声があったので俺は、「失礼します」と言ってドアを開けて中に入った。
書斎の中には椅子に腰かけた父上がいた。
「デフトル、お前に言いたいことがいくつかあるが、まず初めにお前から私に何か言うべきことがあるんじゃないか?」
ここで何から話すかで俺の処遇が決定されるのか。
ここは間違えるわけにはいかないな。
「申し訳ありませんでした!」
俺は即座に頭を下げて謝罪をした。
「それは何についての謝罪だ?」
頭を下げたままなので父上の表情が分からないが声のトーンから、まだ間違えている訳ではないことが分かった。
あとは謝罪する内容についての説明を間違えなければ大丈夫だろう。
父上がシトロギー伯爵から今回のことでどんな説明をされたのかが気になるが、ここで俺が隠し事をするような誠意のない謝罪をしたら父上はきっと俺のことをお許しにならないと思うので、ここはつまびらかに説明しておこう。
「これは私が父上やシトロギー伯爵に相談もせずに独断で悪事の証拠を掴もうとしたうえに、自分の命だけでなくエリスとスピドロの命までも危険にさらしたことに対する謝罪です。本当に申し訳ありませんでした」
「ふむ。自分がやったことの反省はしているみたいだな。それなら私が叱る必要性はないみたいだな」
「お叱りになられないのですか?」
「ああ、そうだ。十分反省はしているみたいだし、それにシトロギー伯爵からも『あまり叱らないであげてください』と頼まれているからな」
「そうですか。シトロギー伯爵が……」
「エリスさんを人質に取られた時にデフトルがすぐに武器を手放してくれたおかげでエリスさんの命が助かったとシトロギー伯爵が何度もお礼を言ってきてくれたからと言うのも叱らない理由の1つにある。あと独断専行のうえデフトルたちだけでは事件を解決できなかったとはいえ、悪事の証拠を押さえるのに一役買ったのも叱らない理由の一つだな」
「ありがとうございます」
「今のは褒めたわけではないからな。ただ叱らないと言っただけだからな。勘違いはするなよ」
「はい。承知しております」
「それとシトロギー伯爵が違法に魔石を採掘していた坑道を何事もなく押さえることができたと伝えてほしいと言っていたぞ」
「そうですか。それを聞けてホッとしました」
「話は以上だ。4日間馬車に乗っていて疲れただろう?あとはゆっくり休むと良い」
「ありがとうございます。ゆっくり休ませていただきます。ですがその前に父上、私から1つお伝えしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「ん?何だ?言ってみろ」
俺は意を決して魔王を倒す勇者を目指していることを父上に伝えた。




