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英雄譚の語り部という人生は嫌なので、人生やり直して今度は俺が魔王を倒します!  作者: 無自信


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第21話 第4章 作戦終了。

 「(クソッ!まだ仲間がいたのか!)」


この現状をどうすることもできず、俺とスピドロは毛むくじゃらの男の言う通り突っ立っていた。


「よーし。それでいい。一歩でも動いたら、この娘の命はないものと思え!あと、手に持っている物を2人とも手放すんだ!」


俺はエリスを守るためにすぐに木剣を手放した。


だがスピドロは手に持った鍬《くわ》を手放そうとしなかった。


「おい!お前!聞こえないのか⁈手に持った物を手放せって俺は言ってるんだ!早くしないと本当にこの娘をぶっ殺すぞ!」


「スピドロ!何やっているんだ?早く鍬から手を放せ!」


「嫌です。デフトル様。」


「スピドロ、お前は何を言っているんだ?エリスが殺されても良いって言うのか⁈」


「そうは言いません。でも、あいつは結局俺たち全員を殺すつもりです。ここで俺が鍬を手放したら俺とデフトル様が先に殺されるだけです。俺はデフトル様の護衛です。エリス様には悪いですが、デフトル様を死なせるわけにはいきません。ですから、俺は鍬を絶対に手放しません!」


「……」


俺はスピドロの意見に何も言い返すことができなかった。


確かに計画のことを知っている俺たちを生かして帰すことをこいつらはしないだろう。


もうこうなったら、エリスの命を諦めるか全員殺されるかの2択だ。


でも俺は目の前でエリスを殺されたくはなかったのでスピドロにエリスの命を無視して毛むくじゃらの男を攻撃しろとは言えなかった。


「アッハッハッハッ!お前、スピドロとか言ったか?見上げた忠義《ちゅうぎ》だが、俺も冗談でこんなことを言っている訳ではないぞ!お前が鍬を手放さないんだったら、まずはこの娘から殺してやる!」


毛むくじゃらの男が恐怖で口を開くことさえできないエリスにナイフの刃を近づけ始めた。


「やめろ!やめてくれ!」


俺がエリスを目の前で殺されたくない一心で、そう叫んだ瞬間、ドスッと音を立てて矢が毛むくじゃらの男の左側頭部に突き刺さった。


毛むくじゃらの男は事切れたらしく矢が刺さった勢いで俺から見て左へ倒れて行った。


エリスは倒れていく毛むくじゃらの男の左腕を振り払って、こちらへ駆け寄ってきた。


「デフトル!スピドロ!」


「エリス、無事でよかった」


「いきなり私を捕まえていた男が倒れたのですがどうやったのですか?」


「それが私にも何が何やら」


「エリス‼デフトル様‼無事か⁈」


矢が飛んで来た方から騎士たちを連れて弓を左手に持ったシトロギー伯爵がやって来た。


「お父様!さっきの矢はお父様の放った矢だったのですね?」


「ああそうだよ。エリスの首に男が腕を回しているのが見えたから遠くから注視していたのだけれども、刃物も持っているのが見えたから矢を放ったんだ。」


「シトロギー伯爵、助かりました。ありがとうございます」


「デフトル様もご無事で何よりです!ところでアナカト、エリスとデフトル様の命を危険にさらすなんて一体何をやっているんだ!」


「(そうだ!まだアナカトがいたのだった!)」


俺がバッと後ろを振り向くと、アナカトはスピドロによって後ろ手に押さえこまれていた。


「スピドロ、何もそこまでしなくてもいいのではないかな?」


事情をよく分かっていないシトロギー伯爵はスピドロがやり過ぎだと思っているらしい。


俺はシトロギー伯爵の誤解を解くため、ここまでの経緯を説明した。




 「つまり、アナカトとそこらへんに転がっている奴らは私の領地に眠っている魔石を違法に採掘していて、ここにある小屋にため込んでいたという訳ですね?」


「そうです」


「そして、そのことを神のお告げで知ったデフトル様とスピドロは魔石を採掘している坑道と魔石をためた場所を特定するためにアナカトを追跡して、この小屋までたどり着いたと」


「そうです」


「そして、この小屋と坑道には普段カムフラージュの魔法がかけられていることとアナカトたちがため込んだ魔石を移動させようとしていることを知ったデフトル様は、戻って私たちに知らせてもアナカトたちの悪事の証拠を押さえることができなくなると考えて、アナカトたちを捕らえようとしたと」


「そうです」


「けれども、一緒についてきたエリスがアナカトの仲間に捕まり、どうしようもなくなっていたところに私たちがやって来たという訳ですね」


「そうです。その通りです」


シトロギー伯爵は俺の説明を1回聞いただけで理解してくれた。


だが、俺の説明を理解した後はしばらくの間、黙り込んで考え事をしている様だった。


理解はできたみたいだが納得はできないのだろう。


俺がこの土地の領主でエリスの父親だったら到底納得できないことだから、それも仕方ないだろうと理解できる。


だからお叱りの言葉は謹んでお受けしようと考えていた。


「あの、デフトル様、いろいろ申し上げたいことがありますが、それは後にしましょう。とりあえず、今はアナカトたちを連れて関所に戻りましょう」


「分かりました。この小屋にためられた魔石はどうしましょうか?」


俺へのお叱りの言葉は先延ばしになった。


現状を考えれば仕方のないことだが、さっさとお叱りの言葉を受けてスッキリしたかったのが俺の本音だった。


だが、シトロギー伯爵がお叱りの言葉をすぐに言わなかったのは、すぐにスッキリさせずに、もやもやとした気持ちを抱え続けろという俺への罰なのではないかとも思った。


「この小屋には、うちの騎士団員を2人置いて行きます。急場しのぎですが、デフトル様の話ではアナカトたちは遠くの人物と連絡が取れる魔石を持っていないみたいなので、仲間を呼ばれることはなさそうですから大丈夫でしょう。それにうちの騎士団員には、使える回数は少ないですが緊急事態を報告するための魔石を持たせていますから」


「それなら安心ですね。ところでアナカトたちは連れて行くとして、毛むくじゃらの男の死体はどうしましょうか?」


「毛むくじゃらの男の死体ですか?私とデフトル様とスピドロとうちの残りの騎士団員を合わせて6人。アナカトたちも死体を含めると6人。アナカトたちが暴れないように連行していくためには死体まで運ぶ余裕はないでしょうね。ですから死体はここに埋めておきましょう」


「分かりました。では、そうしましょうか」


スピドロとシトロギー伯爵領の騎士団員の方が穴を掘って毛むくじゃらの男の死体を埋葬してから、俺たちは関所まで戻ることにした。


幸いなことにアナカトたちは抵抗する気がないのか、逃げようと暴れることがなかったので、なんとか日が沈み切る前に関所まで戻ることができた。




 夜になってしまったので下山するのは諦めて、今夜は関所の小屋に一泊することになった。


ゆっくり休めるように俺とエリスには普段は関所の番人の方が使用している個室を貸してもらった。


「今日はお疲れになったでしょう。ゆっくりお休みください」


シトロギー伯爵はそう言ってくれたが、俺は興奮が冷めないみたいで全然寝付けなかった。


数十分くらいベッドに横になっていたが、全然眠くならないので少し外の風に当たってこようと考え、俺は部屋のドアを開けた。


ドアを開けるとスピドロが部屋の前にいた。


「ちょっと外に行きたいのだが」


「分かりました。俺がお供します」


スピドロに護衛されながら小屋の外に出ると少し離れた所で誰かが話している声が聞こえた。


俺が声の聞こえる方へと向かうと声の主はシトロギー伯爵だと分かった。


「……ではよろしく頼んだぞ」


「シトロギー伯爵」


「デフトル様。こんなところで一体何を?」


「眠れなかったので少し夜風に当たろうかと思いまして。シトロギー伯爵は何をしていらっしゃったのですか?」


「そうだったのですね。私は増援を手配していたのです。できるだけ早く魔石を違法に採掘している坑道を押さえたいので」


「そうだったのですか……」


会話が終わり、しばらく沈黙が続いた。


俺もシトロギー伯爵に言いたいことがあるがシトロギー伯爵も俺に言いたいことがあるのだろう。


お互いにどちらが先に口を開くか様子を見ていた。


「「あの!」」


「「どうぞ」」


「シトロギー伯爵からどうぞ」


「いえ、デフトル様からどうぞ」


シトロギー伯爵の話は100%お叱りの言葉だ。


だったら、先に俺が謝罪した方が印象は良くなり、お叱りの言葉も少しは減るかな?


という打算的な考えから、俺が先に口を開くことにした。


「では私から。シトロギー伯爵、エリスの命を危険にさらして申し訳ありませんでした。加えて、独断で行動した挙句にエリスを人質に取られて全員殺されそうになっていたところを助けていただき誠にありがとうございます。私は自分が思っている以上に無力な存在だと今日のことで痛感しました。私には根拠のないことでも信じてもらえるように人に話す勇気とエリスを危険にさらさなくて済むくらいの力が足りませんでした。本当に申し訳ありませんでした」


俺は深々と頭を下げた。


「デフトル様、頭を上げてください。確かに神のお告げという根拠のない話でも一度は相談してほしかったですし、エリスの命を危険にさらしたことは父親からすると簡単に許せることではないです。ですが、私がデフトル様から相談を受けてもすぐに信じたかは分かりませんし、アナカトという間者が潜り込んでいることにも気づいていませんでしたから、私だけ一方的にデフトル様を諫《いさ》めることはできませんね。それにエリスからもエリスが無理やりデフトル様について行ったことも聞いていますからね。だから、私から言うことは1つだけですね。デフトル様、ありがとうございました」


「え?何で私が感謝されるのですか?私は大事なことを相談するのを怠《おこた》ったり、あなたの娘の命を危険にさらしたりした男ですよ!怒りをぶつけるのが普通でしょう?」


「先程も申し上げた通り、悪いのはデフトル様だけではなく、私やエリスにも悪い点はありました。それにデフトル様は人質に取られたエリスの命を守るために武器を捨ててくれたとエリスに聞きました。自分の命よりも娘の命を優先してくれた人をどうして諫められましょうか?」


「いや、ですが……」


「デフトル様が納得できないなら1つだけ諫言《かんげん》を言わせていただきます。これからは何でも相談してください。」


「それだけですか?分かりました。以後気を付けます」


「あ、そうそう。相談するのは私に対してだけではないですよ。デフトル様のご家族や信頼できる友人なども含めてですよ」


シトロギー伯爵はおそらく俺が勇者を目指していることを覚えていらっしゃったのだ。そういうことは事前に相談しておいた方が良いと再度助言してくれていらっしゃるのだ。


「そうですね。特に父上に対してはそうしたいと思います」


「それが良いと思います。そろそろ部屋に戻られた方が良いのではないですか?明日はトラチス山を下りて私の屋敷があるコミセまで馬車で戻らなくてはいけないのですから」


「そうですね。そろそろ部屋に戻ろうと思います。シトロギー伯爵、お先に失礼します」


「おやすみなさいませ。デフトル様」


俺はスピドロを連れて部屋まで戻り、ベッドに横になった。


夜風に当たって興奮が冷めたのか、ベッドに横になると俺はすぐに眠りについた。


朝になると俺たちは山を下りた。


シトロギー伯爵と騎士団員の方は増援が来るのを待つため関所に残った。


増援が来たらアナカトに坑道がある場所まで案内させて、坑道を押さえに行くみたいだ。


山を下りるとすぐにふもとの村を馬車で出発してシトロギー伯爵の屋敷へ向かった。


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