第19話 第3章 作戦実行!③
デフトルの視点
「……という訳なのです」
俺はトラチス山のエレンチ関所の番人のアナカトを追いかけながら、エリスにエリスの父親であるイリキルがシトロギー伯爵領の魔石を狙ったアプリト大臣に国家反逆罪を捏造されて領地や爵位を剥奪されそうになっていることを説明した。
エリスは俺の説明を黙って聞いていたが説明が終わると、「それが本当なら絶対阻止しなくてはいけませんね」と怒りをにじませていた。
「ところでアナカトさんを追いかけているのは何故ですか?」
「それはですね、アナカトがアプリト大臣とつながっているからです」
「え⁈」
「今日私がここにやって来たのはアプリト大臣が掘削させている魔石採掘用の坑道と採掘してためた魔石を見つけるためなのです。だから、俺とスピドロは一時身を隠したのです。そうすればシトロギー伯爵は俺を捜させるでしょう?そしたら坑道やためた魔石を見つけられてしまうかもしれないと考えたアナカト自身が俺たちを捜すふりして坑道の安全を確認しに行くと俺は考えたのです。そしてアナカトが案内してくれた坑道やためた魔石がある場所をシトロギー伯爵に教えればアナカトたちを捕まえてくれて一件落着という訳です」
「なるほど。そういう訳だったのですね。すみません。2つ質問しても良いですか?」
「はい。何でしょうか?」
「デフトルは今どうやってアナカトさんを追いかけているのですか?アナカトさんがデフトルたちを捜すふりをして向かった道は分かっても、ずっと道なりに進んでいるかは分からないのではないですか?」
「そうですね。だから私はこの魔石を使ってアナカトの居場所を把握しているのです」
そう言って俺はポケットから直径3センチくらいの赤褐色の魔石を取り出してエリスに見せた。
「この魔石はどんな魔法が使えるのですか?」
「この魔石はこの魔石に触れた人や物の位置を教えてくれるのです」
「そうなのですか。でもどうやってアナカトさんに、この魔石を触れさせたのですか?」
「実はこの魔石を少し削って粉末にしてアナカトと握手する前に手に付けておいたのです。それでアナカトの居場所は、この魔石の魔法で丸わかりという訳です」
「そうだったのですね。さすがですね、デフトル!アナカトさんと握手するときはハンカチで手を拭いて綺麗にしているふりをして、逆に魔石の粉を手に付けていたのですね!」
「ハハッ。そんな、たいしたことではないですよ」
「いえいえ。十分すごいですよ!さすがです、デフトル!」
「いやいや。ところでもう1つの質問は何ですか?」
「ああ、そうでしたね。もう1つの質問と言うのは、デフトルはどうやってアプリト大臣の策略に気づいたのですか?この土地を預かっているお父様ですら全く気付いていないというのに」
「そ、それは……」
エリスの質問は一番説明するのが難しい質問だった。
スピドロの時は「神のお告げがあったのだ」で済んだが、エリスにはそれで通じるとは思えず俺は何か良い言い訳はないか考えるため黙ってしまった。
「神のお告げがあったんですよ!エリス様」
俺が言い訳を考えているとスピドロが俺が答えるよりも先に答えてしまった。
「神のお告げ……ですか?」
「そうです!神のお告げです!すぐには信じられないかもしれませんが、私がこうやってデフトル様の護衛ができているのも神のお告げのおかげなんです!」
「どういう意味ですか?デフトル?」
こうなっては仕方ないと考えて、俺はスピドロを自分の護衛にするために父上が用意した護衛候補と試合して勝たなくてはいけなかったことをエリスに説明した。
その時、スピドロの魔法の魔力供給源や試合相手の作戦が神のお告げで知ることができたとも説明した。(本当は神のお告げではなくて1回目の人生で得た知識よるものだったのだが。)
俺は信じてもらえるとはあまり思っていなかったのだが、説明を終えてエリスの目を見るとキラキラ輝いているように見えた。
「さすがです!デフトルは神様にも愛されているのですね!」
「え?信じてもらえるのですか?」
「もちろんですよ!神様にも愛されるなんて本で読んだ英雄みたいです!きっとデフトルなら勇者にも選ばれますよ!」
「そ、そうですかね?ありがとうございます」
「それでは早くアナカトさんに追いつかなくてはいけませんね!先を急ぎましょう!」
エリスは俺の話を信じてくれたみたいで坑道やためられた魔石を見つけることにやる気を出したみたいだ。
本音を言うと、エリスにはついて来てほしくはないのだが、そんなことを伝えてもついて来るのをやめるはずもないので黙ってアナカトを追いかけることに集中した。
1時間近く歩いただろうか。やっとアナカトに追いついた。
追いついたと言ってもアナカトは魔石を採掘している坑道の中にいるみたいなので目で見て確認することはできなかった。そして坑道の入り口には見張りが3人いた。
3人の内の1人はアナカトと一緒に俺とスピドロを捜していることになっている内の1人だった。
予想できてはいたが、やっぱりその1人もアナカトとグルの様だった。
草むらに隠れながら3人の会話をエリスが持っている魔石の魔法で聞いてみると、「公爵様の馬鹿息子と護衛がどこかに行ってしまったのでシトロギー伯爵が捜している。ここに来ることは、まずないと思うが警戒だけはしておこう」といった内容を話していた。
俺は全然気にしていないのだが、3人が何度も「公爵様の馬鹿息子」と口にしていたので、エリスとスピドロは激怒していた。
「デフトル様、あいつら殴り倒してきていいですか?」
スピドロが引きつった笑顔で尋ねてきたので、これはヤバいと思い、「ダメだ!まだここで採掘された魔石を貯めた場所がどこにあるのか分からない。だから騒ぎを起こすわけにはいかない」と言って、今にも跳びかかりそうなスピドロを制止した。
「……分かりました……」
納得はしていないが理解はしてくれたみたいでスピドロは跳びかかるのをやめてくれた。
とりあえずアナカトが絶対に魔石を貯めた場所に向かうと俺は考えていたので、アナカトが坑道から出てくるのを待った。
しばらく待つとアナカトが坑道の中から出てきた。
するとアナカトは一緒に来た関所の番人の奴に向かって、「とりあえず今日は作業を中止するように言ってきたから、次は小屋の方に行くぞ」と指示を出した。
「公爵様の馬鹿息子がもしやってきても良いようにカムフラージュの魔石は発動しておけよ!」
アナカトが坑道の見張りの2人にも、そう指示を出すと見張りの1人が魔石をポケットから取り出し魔法を発動させた。
すると、行動の入り口があった場所がただの山肌に変わってしまった。
「よし。これなら見つからないだろう。さあ小屋に向かうぞ」
アナカトたちが移動し始めたので、俺も後をついて行こうとしたら、エリスが俺の服の裾を引っ張った。
「どうかしましたか?エリス?」
「すぐに追いかけたらアナカトさんたちに気付かれるかもしれませんよ」
「そうでしたね。でもこの魔石を使えば大丈夫ですよ。この魔石は使用した人の姿を他の人から見えなくする魔法が使えるのです」
「なるほど。デフトルとスピドロはその魔石を使って身を隠していたのですね。」
「そうです。でもエリスに見つかってしまいましたが。話し声は聞こえてしまうみたいですね。あまり物音を立てずに尾行しましょう。さあ、2人とも私の服の裾を掴んでください。そうすれば魔法が2人にもかかりますので」
「分かりました」
エリスとスピドロが俺の服の裾を掴んだのを確認したら、俺は魔石の魔法を発動させた。
自分では分からないが、これで俺たちの姿は他の人には見えない。
俺たちは採掘した魔石をためた小屋に向かったアナカトたちを追いかけた。




