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英雄譚の語り部という人生は嫌なので、人生やり直して今度は俺が魔王を倒します!  作者: 無自信


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第18話 第3章 作戦実行!②(エリスの視点)

エリスの視点


 デフトルと護衛のスピドロがトイレに行ってから10分以上経ち、周りの大人たちが少しソワソワし始めた。


それはそうよね。公爵様のご子息がトイレからなかなか戻られなかったら、体調が悪いのではないかと不安になるのは当然だと思う。


でも、ここの番人のアナカトさんがデフトルに、「近くで待っていないでください」とお願いされたらしく、周りの大人たちはなかなか様子を伺いに行こうと決断できずにいた。


そんな状況にしびれを切らしたお父様が、「仕方がない。ここは私が行こう」とおっしゃった。


周りの大人たちはお父様がそうおっしゃられたことで胸をなでおろし、口々に、「ありがとうございます」や「よろしくお願いします」とお父様に向けて言っていた。


お父様は周りの大人たちの期待を一身に背負って小屋の外にあるトイレへ向かわれた。


お父様が小屋を出て数分後、「デフトル様ーーー!何処にいらっしゃるのですかーーー⁈」というお父様の叫び声が外から聞こえてきた。


シトロギー伯爵領の騎士団員、ハモン公爵領の騎士団員、関所の番人の人たち、それに私を含めて小屋の中にいた人たち全員が外へ飛び出した。


「イリキル様ー!いかがなさいましたか⁈」


一番初めに小屋を飛び出たシトロギー伯爵領の騎士団員の一人が、お父様にそう呼びかけながら近づいて行くと、お父様は、「いらっしゃらないんだ!デフトル様がトイレにいらっしゃらないんだ!」と大声で答えていた。


「ひとまず落ち着いてください!デフトル様がトイレにいらっしゃらないんですね?今はドアが閉まっていますが、ドアを開けて確認されたのですか?」


「ああ、当たり前だろう!先程私がデフトル様の状況を確認しに行くことになって、小屋を出てトイレに向かうと、トイレのドアの前でデフトル様を護衛しているはずのスピドロがいないことに気付いた。急いでドアをノックしたが返事がないので、仕方なくドアを開けると中にデフトル様がいらっしゃらなかったんだ!」


小屋を最後尾から出てきた私はようやくトイレに近づくと青ざめた顔をしたお父様とトイレの中を確認する騎士団員が見て取れた。


「確かにトイレの中にはいらっしゃらないですね……」


「ああ、デフトル様の身に一体何が起こったというのか……?スピドロもいないというのは良かったのか悪かったのか……?ハッ、そうだ!アナカト!この山に野盗はあまりいないと聞いたのだが、本当だな?」


「はい。シトロギー伯爵様、その通りです。このトラチス山に野盗はあまりいません。険しい山道なので通る人があまりいないからだと思われます」


「そうか。それなら、デフトル様たちが野盗に襲われた可能性は低いのだな?」


「はい、その可能性は低いと思われますが、野盗があまりいないというだけで、全くいないという訳ではないので断言はできません」


「そ、そうか。うーん、ここであーだこーだ言っていても仕方がない!すぐにデフトル様たちを捜しに行くぞ!」


「ハッ!承知いたしました!」


お父様とここまでお父様と私を護衛していたシトロギー伯爵領の騎士団員全員―騎士団員全員で5名―が急いでデフトル様たちを捜しに行こうとしたところ、関所の番人のアナカトさんが、「お待ちください!」と制止された。


「何だ?事は一刻を争うかもしれないのだぞ!急いで捜しに行った方がいいだろう⁈」


「はい。シトロギー伯爵様の言う通りなのですが、この山の地理に明るくないシトロギー伯爵様たちだけで捜しに行かれると、伯爵様たちが道に迷われるという二次被害が起こる可能性があります」


「だったらどうしたらいいのだ⁈」


「ですから、私たち番人が同行しますので少しお待ちください」


「だが、その場合関所の番は誰がするのだ?」


「番人は全員で10名います。そのうち8人がデフトル様たちの捜索に参加して、残りの2人とハモン公爵領の騎士団員の皆さんで関所の番をしてもらうのはどうでしょうか?」


「私たちもデフトル様たちの捜索に参加したいのですが」


ハモン公爵領の騎士団員のうちの一人が意見を述べられた。


すると、ハモン公爵領の騎士団員の皆さんが、「そうだ!デフトル様に何かあったかもしれないのにジッとなんてしていられるか!」と口々におっしゃった。


しかしアナカトさんは、「ハモン公爵領の騎士団員の皆さんがデフトル様たちのことを心配されるお気持ちは分かりますが、この山を登りなれていない皆さんが一緒だと遠くの方まで捜索できない可能性があります。ここは私たちに任せて、皆さんはここに残る2人の番人と一緒に関所の番をしていただきたいのです」と説明して、ハモン公爵領の騎士団員の皆さんが捜索に参加するのを制止された。


アナカトさんの説得が効いたのか、ハモン公爵領の騎士団員の皆さんは渋々だがアナカトさんの提案を承諾してくれたみたいだ。


アナカトさんの提案をみんなが承諾したのを確認すると、アナカトさんは番人を集めてデフトルたちを捜索に行く人と残って関所の番をする人に分け始めた。


そして、お父様とシトロギー伯爵領の騎士団員の人たちの中から二人と関所の番人の中から二人で四人一組の班を三組作り、余った番人の二人の班も一組作り、四組でデフトル様たちの捜索に向かわれることになった。


アナカトさんは番人二人の班で他の三組が行けそうにない険しい山道を捜索に行かれるみたいだ。


私はお父様に指示される前から関所の小屋で待っていると表明していた。


どうしても確認したいことがあったからだ。




 お父様たちが出発した後、残った番人の方とハモン公爵領の騎士団員の方たちが、「小屋の中で待たれてはいかがですか?」と提案してきたけど、私は、「お気遣いありがとうございます。でも外の空気を吸いたいんです」と言って、外でお父様たちが戻るのを待っているふりをしながら捜し物を始めた。


まずはポケットから魔石を取り出して耳を澄ました。


「……外で待たれる……エリス様……変わった……ですね……」


「……そうだな……小屋の中……としても……すること……からな……」


これは小屋の中のハモン公爵領の騎士団員の方の話し声だ。


これじゃない。もっと耳を澄まさないと。


まだ、そんなに遠くには行っておられないと思うけど。


「……トル様、そろそろ……大丈夫……ですか?」


「……そうだな……遅れると……追いつけ……しれないからな……」


これだ!デフトルたちの会話が聞こえる!こっちの方から聞こえるわ!


「……それでは……ましょうか……エリス様が……づいて来ている……見えるのですが……せいでしょうか……」


「……気のせいだろう……たちの姿は見えてないのだから……」


ここだ!ここからデフトルとスピドロの話し声が聞こえる!


関所の小屋から離れた草むらからデフトルとスピドロの話し声が聞こえたので、私は、「デフトル、スピドロ!そこにいらっしゃるのでしょう?お願いです。出て来てくれませんか?」と呼びかけた。


草むらと言ってもそんなに草丈が高いわけではない。


ただ隠れているだけだったらお父様たちも気が付いただろう。


おそらく魔法を使って隠れているに違いない。


この草むらの中にいるのは分かっていても、私には視認することができない。


だから出て来てくださるまで呼びかけるしかない。


「デフトル、スピドロ。お願いです。出て来てください。」


「……デフトル様、どうしますか?ここは姿を見せた方が良いんでしょうか?」


「シッ!静かにしろ!この状況で俺たちが出てくるのを待っているということは、俺たちがいる場所は分かっていても俺たちの姿は見えていないってことだ。それなら素早く移動してしまえば追いつけないだろう。ここは黙って移動するぞ。」


私がデフトルとスピドロの話し声から場所を特定したことに気付かずに、デフトルとスピドロは逃げようとし始めた。


「そうですか。そちらがそう出るのならこちらにも考えがあります。フー、誰か来てくださーい!!ここにデ……」


「分かりました!分かりました!姿を見せるので誰かを呼ぶのは勘弁してください!」


ようやくデフトルが根負けしたみたいだ。


「それでは姿を見せていただけますか?」


「その前に人払いをしてくれますか?」


「人払い?ここには誰も……」


「エリス様ー!いかがなさいましたかー⁈」


関所の小屋からハモン公爵領の騎士団員の方が3人飛び出して私の方へやって来た。


「(なるほど。そういうことですか。)」


「すみません。ここにデっかい虫がいるように見えたのですが、木の枝でした。勘違いして申し訳ありません」


「そうですか……では、何もないのなら私たちは戻ります」


そう言い置いて騎士団員の方は小屋に戻って行かれた。


騎士団員の方が小屋に入るのを確認すると、「これで大丈夫ですよね?姿を見せていただけますか?」と私はデフトルの声がするところを向いてお願いした。


「分かりました」


そうデフトルの声が聞こえた後、目の前にデフトルとスピドロの姿が現れた。


「どうして私たちがここにいると分かったのですか?魔法を使っていたので、そう簡単には分からないと思うのですが」


「それはですね、この魔石のおかげです」


私は得意げに右手に持った紫色の魔石をデフトルに見せつけた。


「この魔石のおかげですか?どういった魔法が使えるのですか?」


「それは、どんな小さな音や遠くの音も拾って聞くことができる魔法です」


「そうですか。この魔石の魔法で私たちの声を拾って、私たちの場所を特定したわけですか」


「その通りです。ちなみに朝のデフトルとスピドロの会話を聞いていたから、2人が隠れていることは分かっていたのです」


「朝の会話も聞かれていたのですか⁈エリス、あなたはどこまで知っているのですか⁈」


「デフトル、私からも質問させてください。大臣の策略とは何のことですか?」


私がそう問い質すとデフトルは目を見開いて驚いた表情を一瞬したが、すぐに苦しそうな表情に変わり黙り込んでしまった。


デフトルが黙り込んでから数十秒の時間が過ぎたところで、スピドロが、「デフトル様、どういたしましょうか?このままではアナカトとの距離が離れてしまいますよ⁈」とデフトルに声を掛けた。


「アナカトさんとの距離が離れると何が困るのですか?」


私が更にそう問い質すと、スピドロは自分が聞かれてはまずいことを言ったことに気付きうろたえ始めた。


するとデフトルは何かを決心した表情をして、「その2つに答えないと小屋に戻ってはくれないのですね?」と尋ねてきた。


「そうですね。でも、答えによっては答えを聞いても小屋には戻らないかもしれませんね」


「分かりました。お答えします。でも、時間が惜しいので歩きながらでもいいですか?」


「ええ。構いません」


これ以上隠し事をされるのは嫌だ!答えを聞き出すまで何処までも付いて行くわ!


私の決意の固さに根負けしたデフトルはアナカトさんを追いかけながら答えを聞かせてくれた。


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