第12話 第1章 魔王を倒すための仲間を集めます!(スピドロ編)③
試合が始まるとすぐにスピドロは俺の指示した通りミソールと距離を取るため後ろへ下がっていった。
それを見たミソールは兜をかぶっているので表情は分からないが、おそらく満面の笑みで、「ハハハッ。この私と魔法勝負しようというのですか?それは愚策というものですよ!」と高笑いしながらスピドロに向かって言っていた。
「あなたが間違った作戦を立てていても私は手加減なんてしませんよ!くらえ!」
そう宣言してミソールは成人男性がすっぽり収まるくらいの大きさの炎の玉をスピドロに向けて飛ばしてきた。
かなり暑苦しい格好をしているだけあってミソールの魔法の威力はかなりのものだった。
何も作戦を立ててなければあっさりとスピドロが負けていただろう。
だが、このくらいのことは想定済みだった。
スピドロは慌てることなく鍬を振り上げて、「どっ、こい、しょーー‼」と掛け声を発しながら鍬を振り下ろした。
するとスピドロが鍬を振り下ろした衝撃が形となってミソールに向かって行った。
スピドロの魔法は剣の斬撃を飛ばすことができるというものだ。
1度目の人生の時には、ちゃんと剣から斬撃を飛ばしていたが、今はまだ鍬からしか飛ばせないという不完全なものだった。
だが、スピドロの魔法の威力と大きさは申し分なく、ミソールが飛ばしてきた炎の玉をかき消してミソールの方へと向かって行った。
スピドロの強力な魔法が自分に向かってくることに慌てたミソールは魔法で相殺しようという考えも思いつかないのか、「うわーー‼」と叫んでいるだけだった。
ドーーーンッ‼
すごい音を立ててスピドロの魔法が訓練場の壁に激突した。
どうやらミソールはすんでのところで回避することができたみたいだ。
けれども、腰が抜けたのかミソールは地面にへたり込んでいた。
俺が「勝つためには情けをかけるな!」と言ってあったので、スピドロはへたり込んでいるミソールを次の魔法で攻撃しようと鍬を振り上げていた。
「どっ、こい……」
スピドロが鍬を振り下ろそうとした瞬間、「わー‼待て待て‼私の負けだ‼降参する‼」とミソールが叫んだ。
「それまで!勝者、スピドロ!」
アーチゴさんが試合の終了を宣言したので、俺は、「よっしゃー‼良くやった!スピドロ!」と叫んでしまった。
スピドロも試合に勝ったことが分かると、「やった!やりましたよ、デフトル様!」と叫びながら、こっちへ向かってきた。
俺とスピドロが喜びを爆発させていると父上が、「おめでとう。デフトル、スピドロ。約束通りデフトルの護衛はスピドロ、キミだ。」と声を掛けてくれた。
「それにしてもスピドロの魔法はすさまじいな。訓練場の壁に防御魔法の魔石を設置していなければ、壁は破壊されていただろうな。こんなに強力な魔法を使えるスピドロの魔力供給源は一体何なのだ?良ければ教えてくれないか?」
父上はスピドロの魔法の威力に驚きを禁じ得ない様子だったので、俺は得意げになって父上の質問に答えた。
「父上、スピドロの魔力供給源は満腹感なのですよ!」
「満腹感?……なるほど、だからスピドロは気分が悪そうにしていたのか」
「さすが父上、もう気付いていらっしゃるようですね?」
スピドロの魔力供給源は満腹感なので、試合会場に来るまでに俺はスピドロに、「もう食べられません」と言うくらいの食事をとらせておいたのだ。
そのため、スピドロは試合前に父上が心配になるくらい、今にも吐きそうにしていたのだった。
「うむ。合点が行った。ハッハッハッ!この試合はデフトルとスピドロの作戦勝ちだな。」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。ペトラス様」
「うむ。それではスピドロ、デフトルの護衛は任せたぞ!ハッハッハッ!」
そう言い置いて、父上は仕事があるのか、訓練場を後にされた。
父上が去った後も俺とスピドロは喜びを分かち合っていた。
ミソールはアーチゴさんに連れられて訓練場を後にしていた。
「デフトル様、やりましたね!デフトル様の作戦通りに事が進んでくれましたよ!さすがです!デフトル様!」
「まあな!ミソールの考えそうなことなんて手に取るようにわかるぜ!」
「へぇー、どうしてですか?」
「ん?」
「ですから、どうしてミソールさんの考えることが手に取るように分かったのですか?初対面だったんですよね?」
「それは……その……か、神のお告げだよ!ほら、スピドロの魔力供給源も知っていただろう?それと同じ神のお告げがあったのだよ!だから、ミソールの考えることが手に取るように分かったのだよ!」
ちょっと、いや、かなり苦しい理由かな。
でも、神のお告げというのもまんざら嘘ではない。
知の女神であるグノース様の加護によって、俺は1度目の人生の記憶を持ったまま2度目の人生を送っている。
1度目の人生の記憶があるから、ミソールの性格や使える魔法、魔力供給源を知っていたのだ。
神のお告げか神の加護かの違いはあるが、どちらにせよ神様のおかげで良い作戦を考えられたのに変わりはない。
だが、そんなに頻繁に神のお告げがあるなんて、いくらスピドロでも信じないか?
「そうだったんですね!さすがデフトル様!神様にも愛されていらっしゃるんですね!」
「ハハハ。ま、まあな!」
「(信じたよ、スピドロの奴。こんな奴を仲間にして大丈夫かな?)」と自分で選んだのだが、俺は早くもスピドロを仲間に選んだことを後悔しそうになっていた。
「ところで、話は変わりますがデフトル様の魔王を倒す旅を共にする仲間ってまだ俺しかいないのでしょうか?」
「ん?ああ、そのことか?今のところスピドロだけだな。一応もう1人候補はいるが」
「候補ですか?その人は仲間にはなってくれそうですか?」
「たぶん大丈夫だろう。だが、そのためにはスピドロ、お前の協力が必要なんだ。力を貸してくれるか?」
「もちろんです!具体的には何をすればいいでしょうか?」
「う~ん、とりあえずハモン家の騎士団の訓練に参加して、もっと強くなってくれ!」
「分かりました!頑張ります!」
とりあえず、これで仲間を1人確保できたな。
あとはエリスを仲間にできれば良いのだけれど、それには2年後に起こる事件を解決すれば良いはずだ。
エリスに恩を売れるから、その対価として俺の仲間になってもらえばいい。
フッフッフ、何て完璧な計画なんだ!
そのためにはまず、エリスともっと親しくならなければいけないな。




