第11話 第1章 魔王を倒すための仲間を集めます!(スピドロ編)②
フィラカ村に着いた次の日からスピドロに魔法の特訓をさせた。
ミソールに勝つには平民の魔法なんてたいしたことないと思っているだろうミソールの隙を突くしかないと考えたからだ。
スピドロは自分の魔法の魔力供給源が何なのかも理解していなかったので、そう思われていたとしても仕方なかった。
まず俺はスピドロの魔法の魔力供給源が何なのかを伝えた。
何故他人の魔法の魔力供給源が分かるのか不思議がられたが、神のお告げがあったからだと言ったら、スピドロはすんなり受け入れていた。
あまりにもすんなり受け入れたので少しスピドロを仲間にすることが心配になったが、スピドロに求めているのは強さだけなので俺が気を付けておけば大丈夫だろうと結論付けた。
スピドロは魔法の使い方もよく分かっていなかったので、魔法の特訓は魔法を自分が出したいときに出せるようにすることから始めた。
農作業の手伝いをしていた時に偶然魔法を出せたみたいなので、まずは木剣ではなくて鍬を振らせて魔法を出せるか試してみた。
小一時間鍬を振らせてみたが全く魔法は出てこなかった。
さすがにこれはまずいと感じた俺は、「何か掛け声を出してみたらどうだ?」と、スピドロに助言してみた。
魔法を出すのに掛け声を出す必要性はないのだが、掛け声を出すことによって「魔法を出すぞ!」と気合を入れて魔法を発現させやすくするのは貴族の子どもたちもよくやる訓練方法なのでスピドロにも勧めてみた。
「どんな掛け声でも良いんですか?」
「気合が入れば何でも良いぞ」
「分かりました。それじゃあ……どっ、こい、しょー‼」
ドーーーンッ‼
掛け声を出しながらスピドロが鍬を振り下ろすと魔法が発動した衝撃で地面がえぐれ、周辺の木が数本折れて倒れた。
スピドロは現状が理解できず困惑した表情をしていた。
そんなスピドロのことを置いてけぼりにして、「よーっし!上出来だ!スピドロ!」と俺はスピドロを褒めた。
初めは俺が褒めている理由が理解できず呆然としていたスピドロだったが、しばらくすると自分が魔法を発動させた事に気づき声を上げて喜んでいた。
そこからはスピドロが魔法を自由に出せるように特訓した。
スピドロは飲み込みが早いのか一度コツをつかむと、すんなり魔法を出せるようになった。
2日間ほどスピドロに鍬で魔法を出せるように特訓させたら、3日目から木剣で魔法を出せるように特訓させ始めた。
飲み込みが早いスピドロなら、すぐに木剣からも魔法を出せるようになるだろうと俺は踏んでいたのだが、特訓最終日の5日目になっても地面をえぐるどころか砂煙すら起こせなかった。
鍬を振っていた時と同じく、掛け声を出して木剣を振り下ろしても何も起こらなかった。
目標物があれば、それを狙うことによって魔法を発動しやすくなるかと思い、スピドロが魔法で折って倒した木を丸太にして置いたのだが、全く効果がなかった。
俺もスピドロも顔に出るくらい焦り始めていた。
ミソールに勝つにはミソールが予想だにしない強力な魔法をスピドロが使って倒すしかないと考えていたからだ。
「どうすれば良いでしょうか?デフトル様?」
すごく申し訳なさそうにスピドロが俺に尋ねてきた。
「……仕方ない。こうなったら……」
「こうなったら?」
俺は父上が許されるかは分からないが、最終手段で行くことを決めた。
「本当に……うっ、大丈夫でしょうか?」
「分からん。でも、これ以外に俺たちが勝つ方法はない。父上に認めてもらえるように頭を下げてお願いするしかない」
「分かりました。俺の頭に……うっぷ、価値があるか分かりませんが……うっ、いくらでも頭を下げますよ!」
「ああ、頼むぞ。ほら、見えてきた。あれが試合会場だ」
「あれが試合会場ですか」
俺とスピドロを乗せた馬車は試合会場であるドーカスにある騎士団の訓練場に着いた。
俺とスピドロは馬車を降りて訓練場の中央へと向かった。
俺とスピドロよりも先に父上とミソールが試合会場に着いて待っていた。
「父上、お待たせしてすみません。まだ試合開始まで1時間近くあるので大丈夫だと思っていたのですが」
「気にすることはない。私は試合会場の準備に不備がないか確認するために早く来ただけだからな。試合開始時刻に遅れて来なければ全然問題ない。その子がスピドロか?」
「はい。そうです。ここにいるのがスピドロです。ほら、スピドロ、父上に挨拶するんだ」
「お初にお目にかかります……うっ、ペトラス様。スピドロと申します……うっぷ、以後お見知りおきください」
「うむ。覚えておこう。しかし、デフトル、2つ気になることがあるのだが」
「何でしょうか?父上?」
「スピドロは何故鍬を持っているんだ?」
「ああ、そのことですか。ちょうど説明しようと思っていたところです。スピドロが木剣よりも使い慣れた鍬の方が魔法を出しやすいので、どうしても鍬で試合に出たいと申しているのですがよろしいでしょうか?もちろん、試合の規定通り金属の歯は取り外して木製の鍬にしてあります」
「試合の規定通りなら私から言うことは何もないな。ただ対戦相手のミソールにも一応許可を取らなくてはいけないな。ミソールどうだろうか?」
「私は構いませんよ。ペトラス様。『使い慣れているものであれば勝てた』と後で言いがかりをつけられても困りますからね」
ミソールは皮肉を交ぜてスピドロが試合で鍬を使うことを許可してくれた。
少しだけ腹が立ったが、こちらがお願いしている立場なので言い返すのはやめておいた。
「そうか。良かったな、デフトル。」
「はい。ミソールさん、ありがとうございます」
「いえいえ」
「ところでデフトル、もう1つ聞きたいことがあるのだが」
「何でしょうか?父上?」
「スピドロの具合が悪そうなのだが試合に出られるのか?」
「ああ、そのことですか?それなら大丈夫です!スピドロは少し緊張しているだけなので。スピドロ、そうだよな?」
「はい。うっ、おっしゃる通りです」
「そうか。今にも吐きそうにしているが一度吐いた方が気分が良くなるかもしれないぞ。まだ試合の時刻まで時間があるから一度吐いてきたらどうだ?」
「いえ!それには及びません!なっ、スピドロ⁈大丈夫だよな⁈」
「はい。大丈夫です」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫といったら大丈夫です!それよりもミソールさんも来ているのなら試合を始めませんか?」
「そ、そうか?ミソールとスピドロは、もう試合を始めて構わないか?」
「私は構いませんよ」
「私も……構いません」
「それでは少し早いがミソールとスピドロの試合を始める!両者、訓練場の中央へ!」
ドーカスの訓練場は空から見下ろすと直径100メートルの円の形をした建物で、ここでハモン家の騎士団員は訓練を行ったり模擬試合を行ったりしている。
ミソールとスピドロは訓練場の中央へと向かって行った。
さっきから気分が悪そうにしているスピドロのとぼとぼとした歩みよりもミソールの方が歩みが遅かった。
というのもミソールはずいぶんと頑丈そうで重そうな鎧を身にまとっていた。
2度目の人生を生きている俺にはミソールが何故そんな鎧を身にまとっているかは容易に想像できた。
普通だったら頑丈な鎧を身にまとっているのだからミソールは接近戦を考えているように見えるがそうではない。
ミソールは強力な魔法を使って一気に試合を終わらせようとしている。
ミソールの魔力供給源は暑い又は熱いという感覚なので、暑いと感じれば感じるほど強力な魔法を使える。
おそらく鎧の中も厚着をしていて、できるだけ強力な魔法を使えるようにしているに違いない。
スピドロとの接近戦は分が悪いと考えたのか遠距離からの魔法攻撃で戦おうと考えたのだろう。
だがそれはこちらの思う壺と言うやつだった。
なぜならこちらも接近戦ではなくて魔法で勝負を決めようとしていたからだ。
「それではこれよりミソールとスピドロの試合を開始する!お互いに礼!」
ハモン家の騎士団長のアーチゴさんが審判として試合を進めていた。
ミソールとスピドロが礼をし終えると、アーチゴさんが「始めっ!」と言って試合を開始した。




