第10話 第1章 魔王を倒すための仲間を集めます!(スピドロ編)
次に仲間探しについてだが、エリスみたいに1度目の人生の時にプルトの仲間だった残りの2人を勧誘できないかと考えたが、2人とも他の貴族の領民だったので探し出すことはほぼ無理だった。
そこで、ハモン家の領民の中から有能そうな人材を探すことにした。
そして俺が目をつけたのが5歳年上のスピドロだった。
スピドロは農家の次男ではあったが、魔法が使えるということで1度目の人生の時はハモン家に仕える騎士団に入団して功績を上げて、最終的には騎士団長にまでなった。
スピドロが騎士団に入団してから口説いても遅いと考えた俺は、何とか理由をつけてスピドロの住む、フィラカ村まで連れて行ってもらい、何度も「俺が勇者に選ばれたら一緒に魔王を倒す旅に出てくれ!」と頼み込んだ。
最初のうちはスピドロも幼い子どもの戯言だと考えていたのか、スピドロ自身も幼いために俺の発言の意味を理解できなかったのか、何度も断られた。
それでも俺は諦めずに一ヶ月に一度は訪ねてスピドロを仲間に勧誘した。
そして2年と6ヶ月経った時、やっとスピドロは首を縦に振ってくれたが、二つ条件を出してきた。
一つ目は今すぐ自分のことを雇って、きちんと給金をくれということだった。
スピドロが仲間になることを承諾してくれた年は冷夏で作物の出来が悪く、野菜の収穫量が少なかったために税を払ったら家族が普通に暮らしていくことも難しくなってしまうと考えたスピドロが、何とかして家族が暮らしていけるくらいのお金を稼ごうと考えたための条件だった。
ハモン家は悪徳領主ではないので、冷夏で作物の出来が悪い時は農民の税の負担を減らしてあげることはしていたのだが、そのことを伝えてスピドロの考えが変わってしまうことを恐れた俺は何も言わずにスピドロの条件を受け入れることにした。
ちょうど父上が俺にあまり年の離れていない護衛をつけようとしていたので、スピドロを推挙すれば大丈夫だろうと俺は考えた。
スピドロは12歳で身長170㎝近くあり、農家の仕事を手伝っているのでそれなりにたくましい体をしていたので、父上も認めてくださるだろうと俺は考えた。
二つ目の条件は俺が勇者に選ばれなかった場合でも自分のことをクビにせずに雇っていてほしいということだった。
スピドロとしても俺が勇者に選ばれなかった時に職を失うことを恐れて、この条件を出したのだろう。
俺が勇者に選ばれなかった時のことなど考えたくもなかったが、その時はスピドロをハモン家の騎士団に入団させることを約束した。
スピドロの出した条件を俺が受け入れたので、スピドロは魔王を倒す旅に同行する仲間になることを承諾してくれた。
スピドロと仲間になってもらう約束を取り付けた日の夜、俺は父上に新しい護衛としてスピドロを推挙した。
俺はスピドロを推挙した理由を父上につらつらと述べた。
父上は黙って聞いてくれていたので、これは大丈夫だろうと俺は思っていたが、父上の返答は「許可できない」だった。
「なぜですか⁈」と俺は尋ねた。
すると、父上は「お前の護衛はもう私の方で決めてあるからだ」と返答してこられた。
そこで俺は1度目の人生の時に俺の護衛についてくれたミソールのことを思い出した。
ミソールは俺よりも11歳年上で護衛兼家庭教師みたいな存在だった。
炎の魔法を使うことができて頭もいい、武術の心得もそれなりにある、さらに男爵の家系なので家柄もそれなりに良いため護衛を任せるにはうってつけの人物だった。
それに比べてスピドロはハモン家の領民なので出自は分かっているが農民の子なので家柄は良くないし頭も俺より悪い。
唯一ミソールに勝てそうなのは肉体的強さだけだった。
しかし、ここで父上の言う通りミソールを護衛にしたら、スピドロは魔王を倒す旅の仲間にはなってくれないだろう。それは困る!
そこで俺はスピドロを護衛にしてもらえるように父上に必死に食い下がった。
「護衛を任せるなら何よりも強い人がいい!ミソールよりスピドロの方が強いのでスピドロに護衛を任せたい!」と、とりあえずミソールよりもスピドロの方が優れている点―肉体的に強いという点―を父上に訴えかけた。
10分ほど訴え続けたら父上は根負けして、「デフトルがそこまで言うのなら良いだろう。スピドロを護衛にしよう」と承諾してくれた。
それを聞いて俺が喜んでいると、「ただし、スピドロが本当にミソールよりも強いと証明できたらな」と父上は条件を出してきた。
「(そのくらいの条件は仕方ないか)」と俺が考えていると、父上はさらに条件を足してきた。
「2週間後にコンタ侯爵の跡取り息子のクリロノくんの結婚式に参加するから、その時に新しい護衛を連れて行こうと考えている。それまでに新しい護衛をミソールにするかスピドロにするか決めなくてはいけないので、1週間後にミソールとスピドロのどちらが強いか決める試合を行ってもらう」
1週間後、正直言って準備期間としては短いと俺は思った。スピドロが肉体的強さにおいてはミソールよりも強いことは疑いようがない。
だが、魔法や武術はまだまだ初心者なので、1週間後ミソールに試合で勝てるとは確信できなかった。
しかし、ここでごねたら父上は有無を言わさずにミソールを新しい護衛に決めてしまう可能性があったので、俺は父上の条件を呑んだ。
その日の夜は、どうやったらスピドロがミソールに勝つための作戦を考えているうちに朝になってしまった。
一睡もしていないが、着替えをして朝食を食べた後、すぐに馬車に乗ってスピドロの住む、フィラカ村まで向かった。
馬車に乗って十数時間かかるので馬車の中では眠って時間をつぶした。
フィラカ村に着いた時はすでに夜で、今スピドロに会いに行っても迷惑なのは分かっていたが、そんなことを言っていられるほど時間も残されていないので、村に着いたらそのままスピドロの家に向かった。
スピドロやスピドロの家族は驚いてはいたが、すぐに出来得る限りのもてなしをしてくれた。
俺はそんなもてなしにお礼を述べた後、スピドロに俺の護衛になるために父上から出された条件などを伝えた。
俺が話し終えると、目を皿の様にして聞いていたスピドロは、「無理ですよ!」と開口一番に答えた。
スピドロの言い分を聞くと、魔法も使えて武術の心得もあるミソールと魔法をまだ完璧には使えなくて武術の心得もない自分が戦っても勝てるわけがないというものだった。
それを聞いて俺は笑ってしまった。
スピドロが言ったことは俺が昨日一睡もせずに悩んでいたことと全く同じだったからだ。
しかし、それについては解決策を俺は見出していた。
俺は満面の笑みで、「そのことについては大丈夫だ。俺に秘策がある!」と答えた。
「秘策ですか?」
スピドロは俺の発言を信じていないみたいだったので、俺は秘策をスピドロに伝えた。
俺の秘策を聞き終えたスピドロの第一声は、「大丈夫でしょうか?」だった。
「その秘策がうまく行かなかった場合、俺はほぼ負けると思いますが……」
「いいんだ。どうせ普通に戦って勝てる確率は極めて低いのだから。こんな奇襲みたいな作戦を実行でもしないと勝てないぞ。もしスピドロが負けても、うちの騎士団に推薦してやるから頑張ってくれ!」
「……はい。分かりました」
とりあえずスピドロはミソールとの試合に出てくれるみたいなので、俺は少しホッとしていた。
試合の前日には試合会場があるハモン家の領地の中心都市ドーカスに着いていなくてはいけないので、スピドロに特訓させる時間はあと5日しかない。




