奴隷
宿場街の倉庫でおばさんに起こされて少ない食事を渡され、辺りを見るとここが宿屋であることに気がつく、そこから有無を言わさず掃除を命じられ、サボると棒で叩かれた。
朝から晩まで働かされ、少ない食事と質素な寝床に数ヶ月でギブアップ、準備に数週間かけて俺は街を抜け出し気ままに街道を歩き始めた。
テキトーに森で野宿しながら街道沿いを黙々と進んでいく、森で食べられるきのみを取りつつ、目的地も分からないまま進んで、途中で次の村があるのかとか、道を間違えていないか不安が過るが進むしかない。
何でこんなことになったのかそんな事を考えるが、意味が無いのでひたすら歩くことと食べられそうな物を探す旅が始まる。
昔は勇者特権のストレージと補給スキルで不自由したことは無かったが、初心者の時に受けたサバイバルスキルの授業のお陰で何とかなっている。
大きめな街に辿り着いた。街に入るのに税金が課されるがお金何て持っていない。どうすべきか悩んでいると、とある老人に声をかけられ、お金を貸してあげると言われ良い人がいたもんだとお金を貰い、さっそく街に入った。
まずはギルドに登録すべきだろう。そもそも知識があるからモンスターでも狩れる様になればしばらくは生きられる。道を歩く人にギルドの場所を聞き、すぐに向かう。
到着すると違和感が強い。受け付けに確認すると商業ギルドだったので冒険者ギルドの場所を聞くと、伝わら無かった。
この街には冒険者ギルドが無い様だ。だったらこんな街に入る必要は無かったのにと文句を垂れなが商業ギルドを後にする。
街を出て次の街に向かう。門番に聴いたもっと大きな街へ向かった。途中、食べ物が取れず空腹に苦しんだり、飲水が切れて脱水症状にもなりかけたが、何とか街にたどり着く、門番に身分証の提示を求められるが、無いと言うと入門税を求められた。もちろん持ってないので、うろちょろしている門番に捕まり投獄された。
罪状は借金をしたまま無断で街を離れたこと、よくよく考えればそりゃそうだ、そもそも借金してたのも忘れてた。
晴れて犯罪奴隷となった俺はここから地獄の日々を送ることになった。犯罪奴隷は奴隷のなかでも最底辺、扱いは最悪で俺は要領も悪いしすぐ反抗したのでいつも奴隷頭にボコボコにされ、黒パンもよく奪われほぼ水のスープで腹を空かせて過ごした。
他の奴隷からも疎まれ、糞尿まみれの寝床で過ごし、反骨精神ばかりが養われていく、ある日もパンを奪われ、腹が空きすぎていた俺は噛み付いた。
俺のパンを奪った他の奴隷に文字通り噛み付いた。ぶん殴られたが必死に噛み付くのを諦めなかったら、歯が抜けた。
歯が抜けて獣の様になった俺の顔を見てあいつは逃げていった。落としていったパンを食べ、そこからは獣になった俺は他の奴隷からパンを奪っては殴られ、糞尿を撒き散らし、ボコボコにされ、流石に奴隷小屋がおかしくなると、俺は独房みたいな場所で隔離された。
とりあえず、感染症が広がるからと身体を縛り付けられ全身を洗われ、奴隷小屋も洗浄が行われ、獣と化した俺を人間に戻すべく、何故か爺さんが話し相手となった。
数日間、まともな食事とまともな人間との会話、爺さんの落ち着いた話し方で、ずっと俺に優しく話しかけてくれた。
少しづつまともになってきた頃、奴隷頭が誤りに来てくれた。やり過ぎたこと、他の奴隷が自分を真似して俺に何しても良いって空気になったのに止めなかったこと。
俺も何とか謝れた。そこから独房から出され、他の奴隷と一緒に働き初めた。数年後、16歳になった俺は借金はすでに返せたが他に行く場所も無いのでここで働いていた。
腕っぷしと力仕事では他の奴からも一目置かれるようになり、御館様が新しい商売を始めるから下働きから始めないさいと言われ奴隷から解放されそのまま付き従った。
以前、御館様に何でこんな稼ぐより金のかかる子供や老人を雇うのか聞いたら、旦那様は稼げない人間などいない。だからこれは慈善事業ではなく、人間に投資しているにすぎないと言っていた。
よく分からないが実感がある。自分がここに来た頃は全く作業をするどころか、労働をする事すら分かってなかったし精神年齢で言えばいいおっさんなのに与えられることが当たり前で、ちょっとした理不尽すら反抗していた。
ただで食事と寝床を貰えるだけでありがたい立場を理解していなかった。自分は子供であるが彼らに養育する義務はない。街を見れば暗がりで寝ている浮浪者もいる世界だ、それなのにこんな何もできない子供を引き取る方が普通ではない。
今だに難しい事は分からないけど、頑張って働いた後の飯は美味いし、人に良くすれば、人も良く返してくれる関係が気持ちが良かった。
俺は御館様が始める新しい商売、大規模農場と食品加工工場を手伝っていると、計算を出来ることを驚かれた。流石に馬鹿な俺でも簡単な四則演算くらいはできる。
この世界ではそこそこ裕福な家庭からしか計算は出来ないようだ。ただそんな事はどうでも良い、食品加工工場の工場長が言っていたがここが上手く稼働できれば世の中はもっと安定して食べるものに困って犯罪を犯す者も少なくなるはずだし、食べ物を目的の略奪や戦争も減らせるらしい。
それを聞いた俺は何だか胸が熱くなる気がした。この時は頑張ろうと思っただけだが、これが感動とかやりがいってやつなんだと後になって思う。




