終わった
「キリシマ様の勇者特権は剥奪となりました」
そんな言葉が何度も頭の中で鳴り響く、ただ何となく分かっていたし心当たりがある。
勇者キリシマの冒険は終了しました。次回作を乞うご期待ください。レベルの打ち切りエンドだ。
流石に終わった。16歳で勇者となり、バール・バリ戦役ではその活躍を買われ、その当時一番勢いがあったバンバーラアーチと言うギルドに勧誘され、そのまま所属することになる。
最初は真面目に頑張ってたと思うが、弱いパーティメンバーをないがしろにして上を目指す俺カッケーと思ってたし、先輩から小言を言われても正論パンチで論破してやった。
「頑張れない奴が悪い」そんな事を言い続けたと思うが正直覚えてない。気分が乗っていたし、細かい事を考えるのは苦手だ。
昔はただ何となく地道な修行や強くなっていく感覚にハマりずっと繰り返していた様に感じる。お勉強より楽しかったし、アトラクション感覚で無我夢中で取り組んでいた。
それからカーラーン砦防衛戦では初の防衛戦ながら功績を挙げ先輩からも褒められ誇らしかったのを覚えている。勇者になって2年目、さらなるステップアップをするべく所属していたバンバーラアーチを抜けてゴールデンソウルと言うトップクラスのギルドに入る事ができた。
自分が満たされている感覚がたまらない。俺はこの頃から顕著におかしくなっていったんだろう。気が乗る戦いには参加するが、それ以外は女をはべらせて、さほど飲めもしない酒を飲んで、女たちに誘われるままカジノで遊んでは持ち金を溶かしていた。
あまりの素行の悪さに俺を追放するギルドマスターにツバを吐きかけ脱退する事になり、それ以降はソロで活動するが借金も増え実りの良い依頼はソロで受注する事ができず、追い込まれ、怪しい仕事にも関わり、委員会から厳重注意を何度も受けたが変われず、反省も出来ず、場末のスナックで先日に入れたボトルの残りを気にする日々、口を開けば愚痴ばかりでもうこれ以上はないと思っている中で、もちろん下はある。
勇者特権、これだけで数年は遊んで暮らしていた。馬鹿な人間だった。仮設パーティに入っても口だけ出して、これと言った活躍もせず、失敗した奴がいれば必要以上に叩きまくった。
当然だがギルドから教育枠などの勧誘はされなかった。当たり前だ昔、さんざんいびったギルド職員の彼がいまや副ギルドマスターだしな。
もう28歳、再就職するにもまともに働いた事が無い俺はニートと大差ない。久しぶりに現実世界に帰ってきた。前回は親が亡くなった時、様々な手続きがあったから戻るしか無かった。
できれば一生をあちらで暮らしたかったが、勇者特権を剥奪された俺があちらにいても何もできなくなっていくだけだ。
借金もあるし、返済のため稼がなくてはと思うがどうやって稼げば良いのかすら分からない。だから結局はあちらで稼ぐしか能が無いと言うかあちらの世界しか知らないだけで、他のことに挑戦する勇気がなかっただけである。
戦闘職からクラフターかギャザラー転職しようとしたが、両ギルドから申請が却下された。そう言えば出禁をくらっていたのを忘れていた。
仕方がないので運営に連絡する事にした。すると転職はほぼ出来ず、観測者くらいしかなれないそうだ。観測者と言うのは世界にほぼ干渉出来ないただ世界を旅行出来るサービスだ。
観測者では当然、借金を返すどころかむしろサービスを受ける度に金がかかる。そこで運営から新たなサービスのテスターを紹介され、色々と説明されたり、書類にサインしたりなどしたと思うがよく分からないので読み飛ばし、どうでも良いのでさっそくアクセスしてみる。
この時の俺はここから始まる人生が過酷なものになるとは思わなかった。
帝国暦780年
ここはアルトリア帝国の西側に広がる山岳部の中にバーコ領ウルド地方の片田舎チチ村に俺は生まれた。
設定では無い。ゲームじゃない。何処か分からない星の何処か分からない場所でハイランド人として生を受けた。
何度もステータスやアクセス終了を試みたが戻れないし、システムメニューも何もかも出来ず諦めるしか無かった。
普通の両親に兄が二人と姉が一人末っ子だったが2年後に妹が生まれ、更に翌年に弟が生まれ、俺が5歳になったある日、お隣のガルガンティア王国が攻め込んできた。
村は燃やされ村人は殺され、家族は散り散りとなった。俺は森を彷徨い同じ村出身のおじさんと二人で逃げる事になった。ただ、俺が寝ている間におじさんは消えていた。
そこから何日歩いたか分からないが街道を見つけたが軍隊が行軍していた。旗をみる限りガルガンティア王国のものだったので見つかっても殺されると思い行軍の方向とは違う場所を目指す。
まだ10歳の俺だが頭脳は三十過ぎのおっさん、大まかな地図や森での過ごし方は講習を受けているので知っているし経験もある。
ただ装備が小さいナイフしか無かったから火を起こせないのが辛い。しかし火を起こして見つかる可能性が高まるリスクを抑えられていると考える事にした。
ただ森を歩くこと2週間がたちそろそろ限界を感じた時、森を抜け別の街道に出ることができた。しかしどちらに行くべきか迷ったが深く考える性格では無いので適当に決めて歩き始めた。
1日歩くと小さな宿場街に到着した。さてここからどうすべきか、門番にいままでの事を全部話し、代表の元に連れて行ってもらった。同じ話しを再びして、スープとパンを貰う事ができ、身体を洗うと案内された狭い資材庫に布を渡され眠る事になった。やっと安全に寝れるとあって起こされるまで寝ていた。




