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死に戻った私は、冤罪で殺された娘の幸せだけを求めます  作者: 凛蓮月@記憶をなくした孤独な妻発売!
第四章/運命に抗うもの

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69.娘の幸せだけを求めます


 一度目の時、病弱で泣き虫で、ヴァイス様と幼馴染みだった私に遊びで加護を授けたらしい。

 これは偶然のもので、ヴァイス様としても振りだけで、本当に授けるつもりはなかったそうだ。


 その後互いに婚約者ができ、その相手を愛していた。

 だが政略結婚という事もあり、中々上手くはいかずそれぞれ問題を抱えていたらしい。

 そんな中、ルークスとユリアーナが出会い、愛し合い結婚した。

 反発し合いながらも惹かれあい、ルークスはブランシュ公爵家に婿入りしたそう。


 だが程なくして王国は革命が起き、ルークスがユリアーナを庇って死亡した。

 嘆き悲しんだユリアーナを救うため、処刑された国王と、覚悟を決めたユリアーナの血をもって生贄とし、最初の時戻りを試みたのだそう。


 だがその時許可を出したのが先程神様が言っていた木っ端の闇の女神。

 時を戻る権限も無いのにイタズラに命を奪い、絶望した私の闇の加護に引かれて力を増幅させ、厄災となったそうだ。


「お主のよう分からん闇の力は厄災になる程強力のくせに木っ端の神だったからじゃの。分かってスッキリしたわい」


 木っ端神が厄災になったのは、夫に愛されなかった私の心、娘を失った絶望が親和性があったかららしい。もしかしたら木っ端神もそういう逸話があったのかもしれない。


 それで緊急事態として、目の前にいる神様が時を戻した。

 だが一度目の時は宝剣が無かったので、魔術師であるヴァイス様は時を戻れなかった。

 独り遺された彼が憐れだったので、特例で時を戻った事を他人から聞いたら記憶が戻るように細工されていたらしい。

 だから最初のうちはヴァイス様には記憶は無かったのか、と腑に落ちた。


 二度目は、早々にルークスが死んでしまったため、早めに時を戻る事を模索していたようだ。

 だが何もできないうちに私は殺されてしまった。

 どうにもできないと思っていたが、ユリアーナに取り憑いていたため条件が整ったとして時を戻せたらしい。


「ここにいるのは……」

「時を戻るために生贄になった者じゃの。まあ、一度は死後の世界に行った者だから時の狭間に引っ張られたともいう」


 床に転がったままのクラーラ、ロッテは厄災によって死ななかったのかしら?

 ヴァイス様も身体を動かしながら止まっている。


「時を戻るために生贄になったからの」


 ……なるほど、神様に二度同じ事を言われて納得した。


「そいでのう、どうするかの?」

「どうするかの? って……」

「わしとしては、このまま時が止まったままでもいいような気もしとる。時が止まるという事は、なんも発展も衰退もないという事じゃ。この先傷付く事も死ぬ事すらなくなるじゃろう」


 私が望むならば、ユリアーナと二人だけの世界で何も傷付かずに永遠の時を過ごせるらしい。

 ……だから、このままでもいいのでは? ですって?

 話を聞いていた三人が同時に息を呑む。

 特にカールハインツとラルス殿下は、表情が強張っていた。


「いいえ、神様。時が止まったままというのは、人々にとって死んでいるのと同じですわ」


 ユリアーナと二人だけの生活も悪くはない。

 だがそれは、私が望む幸せではない。

 私はこれからどんな風にユリアーナが成長していくのか見守りたい。

 ブランシュ公爵家の後継者として、きっと沢山悩むわ。

 私はもう恋は懲り懲りだけれど、ユリアーナはきっと素敵な恋をする。

 候補は沢山いるし、まだ見ぬ相手に巡り会えるかもしれない。

 友人だった人が恋に変わったり、好きになった人の愛を得られなかったら誰よりも共感できる。

 その時、相談に乗ってあげたい。

 喜びも、悲しみも、不安も、怒りも、全て分かち合って、先に生きてきた者として助言もしたい。

 それは全て、この灰色の世界では叶わない事だ。


「私は、ユリアーナが幸せになるために、生きていきたい」


 成長するためには、ここに留まってはいられない。

 神様は目を細めて頷いた。


「そうかい。そなたは母として生きていくのじゃな」

「ええ。ユリアーナが私を母として認めてくれる限りは」

「私のお母さまは一人だけです! 他にはいりません!」


 ユリアーナが再びぎゅっと抱き締めてくる。

 私もそっと、ユリアーナの背中に手を回した。


「ほんじゃ、お主の中の余計なモンはわしが預かっておこうかの」

「え?」


 神様は私の背中に回り、どっこいしょ、と手を伸ばして身体の中に手を入れる。

 ……手を入れた!?


「ちょ、神様!?」

「動くでない。もう、ちょっと……よし、捕まえたゾイ!」


 背中からグイッと引っ張って神様が取り出したのは、何かの欠片だった。


「これは……」

「木っ端神じゃ。この空間はこやつの最後の力じゃな。お主の娘を救いたい気持ちに共鳴して時を止めたのじゃ」


 闇の加護に反応して力を増幅させ、厄災になって世界を滅ぼすほどの存在になった小さな神様は、弱々しく横たわっていた。


「力を使い果たして消滅するからといってお主の中に残っていたのでは厄介じゃ。これは回収しておく」


 何故だろう。今まで長い間私の中にいたせいか、愛着というか離れてしまう事に寂しさがある。

 でも一緒にいる事はできない。

 また世界を滅ぼす存在になれば、私がユリアーナを害してしまう恐れもある。

 それでも御礼を、と手を伸ばしかけたのを止めた。


「そろそろ時が動き出す。お主の闇の加護も、効力を失くすじゃろう。再び闇の女神にとらわれる事もなくなる。これから先はもう二度と時を戻る許可は出せぬじゃろう。だから、ゆめゆめ慎重に生きるのじゃぞ?」


 神様が神々しい光を放ちながら空に昇っていく。


「ありがとうございます」


 そう言うと、神様はバチッとウインクして去って行った。



 空間がぐにゃりと歪んでいる。

 気付けば世界に色が戻り、動き出したヴァイス様が……前のめりになって盛大に転んだ。


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