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番外編【Dandy~おじさまの集い~】7

いつもお付き合いくださり感謝申し上げます。



「何か失敗しておったのか?」

 前サン侯爵が、もう喧嘩は終わりかと残念そうな表情を浮かべながら話しに割って入り、サン侯爵に質問する。


「バーテン領を荒らしていた山賊ですよ。王家直属の騎士団が来るっていうので、ちょちょいと山賊退治を手伝わそうと思っていたのですが、殿下の行動が予想よりも遥かに早かったために計画の変更を余儀なくされたんです。私は妻にお願いして移動を速めることとなり、その為にバーテン領に予想よりも数日ほど早く到着しました。その所為で、バーテン辺境伯だけが山賊の元へと単独で動くはめになったのですよ。まあ、結果としてバーテン辺境伯領にとって、これ幸いとことが進み、山賊たちを捕えることが出来たのですがね。」


「それならば良かったのではないか。」

 息子と話しながらもチェスの駒を余裕で動かす前サン侯爵が軽く返事をする。


「そうなりますよね~無事に辺境伯領地での問題は解決へと導かれたのですから…しかし、その後ですよ。隣国フリップの領主と山賊との駆け引きが始まってしまって。領民とのイザコザもあり、結局バーテン領が和睦を結ぶのに5年も費やしてしまったのです。あれは和睦を結ぶと言うよりも、山賊たちによりあの地の領主が徐々に懐柔されたようなものでしたがね。今では山賊の娘が領主の第一夫人の座を得て支配していますよ。その間に私の息子の婚約者が息子の元へは来ることがなくなり、孫の顔を拝めない日々を送ることになりまして…さらに、どんどん家族にとって悪い方向へ話が進んでいき、私は心が苦しくて苦しくて、気を許すと倒れそうだった。」

 サン侯爵がホロリと泣いた。

 そんな中でもチェスの駒はリズムよく動かしていく。


 もはやその涙は、自由自在に操れる特技なのではと、カソンヌ子爵は彼を細くした瞳でジーっと無言で見つめ、そう考えていた。

 だって、今動かした盤上の駒は、涙を流しながら打てるような手ではなかったから…。


「そうなのです!!殿下達が亡命を阻止してしまったので、私の家族がサン公国へ行けなくなってしまった。全てが終わってから呼び戻す手筈であったのに、大きく計画が狂わされたのですよ。思い返すとなんだか腹が立ってきたなぁー。」

 サン侯爵はいつの間にか、涙から怒りへと表情を変化させている。


「まあまあ、落ち着いてよ、シモン。その後にちゃんとレオンにお灸を添えてあげたでしょう?」

 大公が宥める。

 お灸を添えたとは、仕事を増やして王城から動けなくしたということだ。


「そうですよ!娘さんが王子妃となられたことだし、自身も侯爵位を得たのですから、よかったではないですか!」

 アクセルが軽い口調でサン侯爵へ言う。


 そんなアクセルを王弟が蔑んだような目で見る。


「やっぱりこの男、駄目じゃないか…何も分かっていないぞ。」

 ボソッと、サン侯爵へ耳打ちする。

 だが地声が大きいのでコソコソ話もあまり小さくなく、筒抜けだ。


「だ・か・ら、大公様、聞こえていますってば。私がダメならば、サン侯爵の性格だってかなり問題ですよね!?優しい人柄や話し上手などの良い評判も聞くけれど、強く発言できないとか、流されやすいとかおっちょこちょいだとか、涙もろいとか、中央では彼への良くない評判もよく耳にしますよ。」

 アクセルがサン侯爵を引き合いに抗議する。


「私のそれはだね。妻がそうすると、私の頭を良々してくれるのだよ。だから、そう振舞っている。うちの妻は聖母様のようなお人でね。弱いものを放っておけない性格なのだ。ネガティブな私をいつも抱きしめて背中を摩り、頭をなでなでして励ましてくれる。この世のものではないかもと錯覚するくらい心の優しい素晴らしい女性なのだぞ。だから、ヘタレはいいぞ~とてもいいぞ~!!君もヘタレにならないか?」


 現サン侯爵はニコニコして話しているのだが、少し不気味さを強く感じる。

 この人って、実はヤバい人物なのではないのか!?と今さらハッとするが、口には絶対に出せない。

 そして、自分の足りなさが何なのかを、サン侯爵から少しだけ感じ取ったような気がした。


 自分に足りないのは “人を圧倒する何らかの力”なのではないかと…何らかの…ちから。

 横目でサン侯爵を見て、ブルっと震える。


「しかし、あの時のレオン殿下の動きは、若い頃の大公閣下を彷彿とさせておったな。間者を身近に忍ばせるなど粗削りであったが、迅速な行動と判断力が冴えわたっていた。我々の計画を凌駕したのには天晴れとしか言えまい。フィルによく似ておって誇らしかったわ~ハーハッハッハー。」

 マルク辺境伯が愛しい我が子を見るかのような眼差しで、王弟様をまじまじと見つめながら話す。


「恥ずかしいので、昔の私を思い出すのは止めてくださいよ。あとその幼少期の呼び方も。若い時の話は結構な黒歴史が眠っているのです。これ以上は勘弁してください。」

 王弟が唇に人差し指を当てて黙るよう合図し、照れて焦っている。


「フハハハハ、我らは大公がハイハイをしていた頃から見守っているのですぞ、あなたの多くを知っておるから、我らがその全て思い出し、語らっていたら長く時間がかかりすぎて、あの世へポックリ逝ってしまいますわ~。」

 前サン侯爵が茶化す。


「だから、止めてくださいってば。そ、それよりも、レオンのことです。私は、ゆくゆくは暗部の長の座をレオンに譲ろうかと考えているのですよ。」

 王弟様は話を逸らす。


 一瞬、沈黙となり空気が張り詰める。


 皆、真面目に考えるいるようだ。


 家令はその時思い出した。

 この集まりは裏部隊の会議も兼ねているという事を。

 唯のおじさま達の楽しい飲み会ではなかったのだ。





番外編は恋愛ではないです。おやじの恋愛はありません。仲良しではあります。

恋愛を期待して読んでくれていた方には、申し訳ないです。

本篇の裏話です。

次回は、レーニュ公爵という男。

=memo=

バーテン辺境伯領はサン侯爵の妹の嫁ぎ先、隣国のサン公国とフリップ国の山(山賊の棲み処)の一部に接している。


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