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番外編【Dandy~おじさまの集い~】6

お読みいただきありがとうございます。


 サン侯爵が発した言葉に対して、

「それならば、私でもよかったではないですか~。」

 と、か細い声でカソンヌ子爵は呟く。


 ご主人様は諦めが悪いのです。


「子爵はダメだよ。だって子爵は家に帰ってこないじゃないか。家族が寂しがる。」

 まだミシェルへの未練を口にするのかと、カソンヌ子爵の言葉にサン侯爵が軽口をたたく。


「うわあ、それ、あなたが言います?言っちゃいます!?私が、なかなか屋敷に帰れずに、ひとり夜の王城で秘密裏の報告を受け取り、通常業務に差し支えないようにと働き詰めとなっているということを…誰の所為とは言いません。でも、あなた方はよくご存知ですよね~??」

 サン侯爵に詰め寄るカソンヌ子爵は、号泣だった。

 その鬼気迫る決して演技ではない子爵の本音に、サン侯爵はこう言うしかなかった。


「ごめんちゃい。許して。」

 サン侯爵は心当たりがあるらしく、カミカミになりながら素直に謝った。


 この時、家令である私は給仕で手一杯になっていて、この会話を聞き逃してしまっていたので、遠くで侯爵が謝っている理由は分かっていなかった。

 だが、サン侯爵が主に謝罪をする現場だけは家令はバッチリ目撃した形となる。

 いつもと立場が逆転している光景に、家令の脳内は大変混乱した。


 サン侯爵が謝っている?

 ご主人様が、珍しく激しく感情を露わにしてお怒りである…いったい何があったのか??

 大丈夫であろうか…あとでひとり自室にこもって反省会とならなければよいのだが…。


 また枕が濡れる日々が続くかもしれないと、家令はそっと心に止める。



「まあ、私が王子達の話を聞いて、彼らの計画を利用しつつ、ルイを後継者から外し、王家の継承権を入れ替える計画を練り直したのだ。公の場での婚約破棄はなかなかいい案だったな。ルイは愚行による失墜の証拠を手にし、イル公爵令嬢とユーグの縁を作る。さらにはヴァンドム伯爵子息と君の娘との婚約破棄をいっきに片付けられたのだから本当に素晴らしい。しかも、その後にヴァンドム伯爵も静かになって、儲けものだった。ヒャッハー、ヒーハッハッハー。」

 大公の大笑いだ。


「確かに、一気に片が付いた。例のヴァンドム伯爵の案件も同時に片付けられたし。実力不足の息子には、目の前で繰り広げる由々しき事態に手も足も出せない衝撃は、よいお灸となったようだったな!子には試練を与え、成長を促さねば育たない。よい機会となったようだ…それに、ヴァンドム伯爵子息(あいつ)にたっぷりと復讐出来たし…フフッ。」

 最後の言葉は聞こえないくらい小声だ。


 サン侯爵は気に入らないヴァンドム伯爵子息への復讐を密かに実行していたのだった。


 子を想う優しき父親の顔をサン侯爵はしているようだが、やられた側(ロベール)はさぞ辛かっただろうと、サン侯爵の言葉を聞いてからアクセルはロベールを思い浮かべる。

 常日頃から彼は大変な目にあっているのだなと、同情心を強く抱くのであった。

 彼の性格が変に歪んでいる理由は父親の影響が大きのだと、アクセルは勝手に理解し納得するのであった。


「あ!?そういえば、あの時、お前、帰り際に殿下たちに小声でロベールの苦手なものを教えただろう!!ロベールが大変な目に遭ったのだぞ。下手したら死んでいたかもしれなかった!!」


 ロベールの父であるサン侯爵は怒り心頭だ。


「え?苦手?あ~確かに、ロベールの苦手なものを聞かれたから、林檎を食べて腹を下したことがある話を思い出して、林檎が苦手なようだと彼らに話したな…え?林檎で死にかけたのか?」

「ああ、それが原因で高熱で苦しんだのだ。対処が遅かったら死んでいたのだぞ。フィリップ、この件に関して、私は許さない。」


 周りに恐怖心を与える程の怒りのオーラに、王弟はタジタジだ。

 そこまで危機に陥ることだとは知らなかったと、必死で訴えている。


 その雰囲気に室内の者達は息が出来なくなってきたので、必死に場の雰囲気をアクセルが切り替えようとする。


「あああっと、そうです!そうです、サン侯爵!婚約破棄計画後に、トロワ家はなぜ逃亡をなさったのですか?そこ、教えてください!!私も命令で殿下と共に彼らを追いかけたのですが、とても大変だったのですよ……。」

 まがまがしい気配を放つサン侯爵に声を震わせ、アクセルが質問する。


 だが、その問いに答えたのは王弟だった。

「それはだな~時間稼ぎをするためだったのだ!!!」

 どうにかこの雰囲気を脱したいらしく、糸口を探し話に乗ってくる。


「えっ、大公様?あっ、時間稼ぎですか?いったい何の?え?時間稼ぎなのですか?」

 アクセルが、この空気をなんとか変えようと、王弟の答えに乗っかって会話を続ける。


 本当は、2人共、この場からすぐにでも逃げ出したい。


 会話をしている自分達を無言で無表情で見てくるサン侯爵が、怖すぎるのだ…。


「ええっとね、王子達を王都から追い出すための時間稼ぎだったのだ。王子らがいない間に、ルイの行き先をキャメル国にしたかったのと、派閥の一掃をしてしまいたかったから。ユーグに口を挟まれると何かと面倒になるのでね。だから彼にトロワ一家の捕獲と回収を命じたのだ。ユーグはロベールを側近に欲していたから、ちょっとアドバイスをしたら快く引き受けてくれた。レオンは…すでに勝手に動いていた。大好きな令嬢を他国へ亡命させないようにと全力で。」

 顔に恐怖が出てしまっているアクセルへ王弟が丁寧に優しく説明しだした。


 明るく、場の雰囲気を取り戻そうと…さきほどのサン侯爵の会話から話をずらそうと、彼は必死だ。


「あの計画通りに進むのであれば私には得しかなかったから、彼らがちゃんと動いてくれたことは、とてもありがたかったのだが…まさか、この時の行動で、ことあるごとに裏目に出て落ち込む羽目になるとは思いもしなかった。唯一の計画が狂った場所だ。」

 サン侯爵が穏やかな口調で話に入り、嘆く。


 彼は頭の回転はよく働く男なので、ここは一旦引いて友好ムードを選んでくれたらしい。


 そのサン侯爵の行動に、大公とアクセルは一安心し胸をなでおろしたのは言うまでもない。





次回、サン侯爵、ヘタレを推す。

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