番外編【Dandy~おじさまの集い~】4
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「そんなこと言ったら、私の娘のことも後悔しかないぞー。まさかジャンヌがロベールに惚れるなど誰が予測できたか。私は、娘をロベールと結婚させてやりたかったのに。シモンといつでも家族になる準備は出来ていたのにだぞ~私は悲しかったぞ~。」
子爵の話に反応した大公が大きな声で謎の対抗意識を燃やし話し始める。
大公様は、酒が入りすぎである。
これまでの大公様は人前で酔っぱらう事は無かった。
昔は前サン侯爵とマルク辺境伯との三人だけで飲む空間でしか、彼が酔っぱらう姿は見られなかったそうなのだが、最近はよくこの様子を目にするらしい。
大公自身がベストフレンドと紹介するサン侯爵が同じ酒の場に居る時は、いつもこうなるそうだ。
本人は自覚はないが、サン侯爵の居る場所では安心してお酒が飲めるようで、気が緩んでいるのではないかと思われる。
そんな、ベストフレンドのサン侯爵が、大公のボヤキに対してお怒り気味である。
「その話はもう沢山話し合っただろう?ぶり返さないでくれよ。」
サン侯爵が嫌そうに大公へ言葉を返す。
酒が入り、皆の零す愚痴がどんどん増えてきている。
この部屋に入れる屋敷で働く者は、家令の私だけという決まりなので、部屋の外に待機する使用人に不足している品などを伝え部屋の前まで運んでもらい、私が全力でお酒とおつまみの給仕を行っている。
聞き耳を立てる余裕はないに等しいのですが、私は主人の為にと優秀な家令でありたいのだ。
その大切な仕事の一つとして些細な言葉でも拾えるように耳をダンボにして諜報活動も頑張っているのです。
もう、必死ですよ。
そんな折、長年給仕をしながら私も疑問に思っていた事を口にする者が現れた。
「あの~お聞きしてもよろしいですか?」
アクセルが恐る恐る手を挙げ、口を挟む。
「何だ?」
涙目であったはずの大公が、アクセルをギロリと睨みを聞かせ返答する。
「私はこの会に初参加ですので、詳しい話を聞きたいな~と思いまして…国の裏部隊は暗武隊、諜報隊、支援隊の三部隊で構成されており、それを大公様が纏められていると言う事はエド様から教えられ知ったのですが、この暗部隊が何故出来たのかは知りません。表舞台と何故、分けているのかが、疑問なのです。私は、現陛下よりも頭脳明晰で能力もある大公様が表に立ち、国を暗部も含め動かした方が、より良い国造りが出来るのではと考えてしまうのですよ…ぶっちゃけ、現国王が国王になると決定した時にも貴族からは多くの不満の声が上がりましたよね?なぜ、大公様が王にならなかったのか、どうして暗部隊を率いているのか、そこを詳しく知りたいのですよ。」
ほろ酔いのアクセルの言葉を聞いて、裏トップとしての頭に切り替え、一気に酔いから醒めた大公が答えようとしたが、それを遮り、サン侯爵が答えた。
「確かに、フィリップは優秀だ。だが、王の器ではない。」
サン侯爵が重量のある声で言い切った。
「何故ですか?現王よりも遥かに優れた御方ではないですか?」
そのアクセルの言葉に、フィリップは感激し、先程、アクセルを虐めてしまったことを心の中で少しだけ懺悔した。
「それは、優秀過ぎるからですよ。優秀過ぎる王は時に貴族たちから恐怖心を抱かれる。それが、問題の火種となりえるのです。それに、現王は人望があり、国民からとても愛されている。貴族からも。薄毛事件を例に挙げれば、分かりやすいですよね。あの時、皆が王を悲しませたくないと考えた。それがあの結果へと繋がったのだ。無償で人から愛されるという資質は、王にはなくてはならない特別なものなのだ。」
カソンヌ子爵が続く。
「暗部が出来た理由じゃが、王は太陽であり、国民を照らす。だから王には健全で居てもらわなければならないのじゃ。一点の曇りもなく、己は正義だと。心から言えなければならない存在じゃ。その為に代わりに我々暗部が動く。王が太陽であるならば、我々は照らされた先にある影。暗闇の中で動き、日の光が当たる場所では動かせない事を動かし、国を正す。それが我らの役割なのじゃ。これは、現王から数えて3世代前のルイ国王の時代に王弟アンリ様とその家臣たちが敬愛する兄、リチャード王を支えるために始められたことなのじゃ。」
そう前サン侯爵が説明した。
「なるほど、そんな理由でしたか。現王には、大公様にはない人望がおありなのですね。うん、確かにそうですね!あっ!?でしたらつでに、もう一つお教えいただきいたいことがあります。私は今回の作戦に途中から加わったので、作戦の一部しか聞かされていなかったのですが、いったいいつ頃から、この作戦は始まっていたのですか?」
話の途中で言いたい事言いやがってと王弟から反感を買い睨まれていることに気がついたが、ビクつきながら続けアクセルは最後まで発言した。
気の抜けた力のない声が怖い顔の王弟の横から聞こえてくる。
その声がアクセルの質問に答える。
「最初はこんな大きな戦略を立てるとは思っていなかった。」
答えたのはサン侯爵だ。
「元をたどれば、フィリップが私に泣きついてきた案件で、ちょっとした頼み事という程度だった。まあ、時々困りごとや悩みがあると、家族の目を盗んでお忍びでうちに来て、色々と発散しぶちまけていたのだけれどね。毎回、無理難題を押し付けて帰っていくから困る奴さ。でも、あの日は違った。正々堂々と、正面からきやがって、第一王子の改心をさせたいという可愛い頼み事をしていったのだ。私の息子を使って、やりたいことがあるのだと。まあ、私の息子がどこまで一人でやれるのかを見定める丁度良い機会であったので、その件は引き受けることにしたのだが。最初は息子に自由にやらせていたのだよ。結構健闘していた。だが、あの日、フィリップの元へ更生させるはずの第一王子が第二王子を従え訪れた。それがこの計画の始まりとなった。直ぐにここにいるメンバーが集結し、この組織をまったく知らない私が、強制的にこの会の仲間に入れらた。」
チーズをのせたクラッカーをヒョイと摘み口に放り込み、ワインを喉に流しいれ、サン侯爵が淡々と話した。
絶対に裏組織について知っていただろうと思ったが、誰もサン侯爵から小さな恨みを買いたくないので口には出さなかった。
国の裏部隊は
暗武隊:マルク辺境伯が率いる力系実行部隊。剣技、武芸の達人が多く、普段はマルク辺境伯領の騎士団に所属している
諜報隊:王の耳と称される諜報を行う貴族の部隊。
支援隊:資金や物資の提供。時に情報などの協力も行う。国内だけでなく国外の貴族とも秘密裏に協約している。
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