告げ口
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ロベールがジャンヌの名を呼んだ後に、二人は少し話をした。
その際に、これまでの話をジャンヌは話していく。
この件は、サン侯爵家や王族が揃って示し合わせていたことを、ロベールは知ることとなる。
ジャンヌがロベールに直接話して失恋したいからと皆にはこの件に口を挟むことを禁じ、王家、モンフォート公爵家、サン侯爵家が一丸となって協力し、彼女の婚約などの情報をロベールに知らせないようにしていたというのだ。
もう三年も前からの話なのだとか…。
ロベールは、これを聞いて自分は愚かでヘタレで無責任であったと、激しく後悔した。
「父は、サン侯爵が侯爵家の養子になると聞かされてから、こうなる事を予想していたみたい。私の事も沢山考えてくれて動いてくれたみたいだけれども…どうにも難しかったと嘆いていたわ。あなたの家族と親戚になりたかったとかなり落ち込んでいたわ。その後でも、どうにか出来ないかと色々と知恵を絞って、父は動いてくれたみたいだけれど、あなたの気持ちも父はサン侯爵から聞いて、とても悩んだみたい。そして、謝られたわ。私はそんな父が大好きだから、この結果を受け入れているの。さてと、協力してくれた皆に、お礼を言いに行かなければ。ロベール、ありがとう。そして、さようなら。」
ジャンヌはそう言って、王都とは逆の方角へと馬車を走らせ去っていった。
ロベールは、王城へと引き返す。
先程の会話以外にもジャンヌと会話していた。
その中で、ガブリエルはレイバックへは来ない、サン侯爵領へミシェルと向かっていること、王城でユーグからロベールに指示が出るはずだから、すぐに城で話を聞くように言われていたのだ。
ロベールは急いで城へ引き返し、ユーグの執務室の扉をノックする。
「入れ。」
ユーグの許可する声に重い雰囲気を感じ、恐る恐るドアを開け、入室した。
ユーグはロベールの不安そうな顔を見て、にたりと笑った。
「その顔からして、深く反省した様だな。お前が罪な男であったと漸く理解したようだな。」
その言葉に、アクセルがポカンと口を開けている。
意味がサッパリ分かっていないのだ。
急遽休みを宣言し消えた男が酷い顔色をして帰ってきたというのに、上司が掛けた言葉が酷かった…。
王子は血も涙もない男なのかと、アクセルはロベールを哀れに思う。
「全てを聞いてきました。殿下は御存じだったのですね。彼女の婚約の事も。」
「ああ、知っていたよ。」
ユーグは執務の手を止めて、ロベールをじっと見る。
「どうして…私に何も知らせてくれなかったのですか?早い段階で知っていれば…こんなことには。私は彼女の貴重な時間を無駄にしてしまった。苦しめてしまっていた。」
悔しそうに、胸を拳で叩きながら話す。
「そんなことはない。苦しめていたかもしれないが、それが男女の恋というもの。早めに知らせてくれればと言うのは、君のエゴだ。それに、彼女はこの状況下で大人へと成長した。あいつにとってなくてはならない試練だったのだ。それに、あいつは君程、この恋を引きずらないはずだ。君に忘れられないものを残したから、それであいつは満足するだろう。」
これを言い終えたユーグがニターっと笑うので、ロベールは口元を引き攣らせる。
「そうですね…私は、両親に本当に苦しい時には逃げてもいいと教わりましたが、彼女により逃げてはいけない時もあるのだと教えられました。そして、行動なくしては新たな気付きも成長も無いとうことも、一歩前へと自ら動く大切さを、彼女は気付かせてくれました。確かに、私に深く刻まれた。一生忘れられませんね…ハハ…ふぅ、それで、私に課せられる罰とはいったい何なのでしょうか?殿下。」
心底肩を落とし、落ち込みながらロベールは尋ねる。
「ハァ〜ハッハァ〜、恐れることはない!罰ではなく、心優しい我が命である。オホン、君にはあの厄介な貴族の領地へ王族代理として行ってもらう。少しばかり王家は忙しくなるのでね。従姉が隣国に嫁ぐので人手が足りないのだ。あの領地の問題は、来年に持ち越さぬように時間を掛けてもいいから、お前が王族代理としてきっちり始末してこい。それから、それが終わったら、サン侯爵領へ向かいなさい。君の婚約者が来ているのだろう。少しゆっくりしてくるといい。従姉がこの国を出るまでは、王都へは近寄るなよ。」
最後の言葉に力強く強調し、ロベールへ睨みをきかせる。
「…はい。その命、承りました。」
ロベールはユーグ殿下の気遣いの言葉に胸を温かくしていたが、反応したら何だか負けな気がして、いつものように粛々と答えた。
執務室の扉へと向かい、いつもより猫背になり歩くロベールの後姿を見て、ユーグは声を掛ける。
「ロベール、我もなかなかやるだろう?ルイ兄様の時の復讐だ!」
その言葉に勢いよくロベールは振り返り、ユーグを見つめて言う。
「はい、私はユーグ殿下のことも、公女様のことも、甘く見ていたようです。あなた方は素晴らしかった…あっ、そうですね。それでしたら私もひとつ、復讐をしてもよろしいでしょうか?幾度も私の計画を彼には邪魔されてきたので、実は今だに根に持っていまして。鬱憤を晴らしに告げ口をしようかと。実は、レオン殿下ですが、トラウマ、すでに治っております。彼はミシェルと一緒に居たいが為に、殿下の前では演技をしておりますよ。」
ロベールは飛び切りの笑顔で言い放つ。
「そ、それは誠か!?」
「ええ、オフシーズンに我が領に遊びに来るのですが、その際に妹がナヴァル男爵家へと出かけて行きます。百合の会という女性たちの集まりで、三日ほど男爵邸で女性だけで集まって過ごすのです。もちろん妹は泊ってきますので、レオン殿下は我が家で留守番をしています。その時に症状は一切見られませんから。」
悪い顔をしたロベールがそこには居た。
「レオンはその間に何を?」
ロベールの悪い顔につられて、何故かユーグも悪い顔になる。
「私の父とじぃじと共に…狩りをしたり、釣りをしたり、ボードゲーム等をしていますね。」
「へっ、じぃじ?…ブフッ、じぃじ。」
ユーグ殿下の悪い顔は一瞬にして解けた。
「クッ、前サン侯爵にそう呼ぶように強要されて癖になっているんですよ。笑わないでください。」
ロベールがユーグ殿下に笑われて悔しそうな顔だが、真っ赤にしている。
「よし、分かった。ロべール。先程の命を却下し、新たに命じよう。あの厄介な貴族の領地へ向かう前に、サン侯爵領へ赴き、レオンも共に連れていけ。全部バレたから遊びは終わりだとでも言ってこい。いいか、何が何でも2人を引き離して来い!今までいい想いをしてきたのだから、もういいだろう。私が知った以上、幸せな時間は終わりだ。よし、厄介な貴族の件が片付いたら、お前はサン侯爵領で婚約者と好きに過ごす。だが、レオンは城へ帰るようにと伝えろよ。これからは一人でも動けると判ったのだ。容赦はしないぞ。馬車馬のようにこき使ってやる!!!」
拳を握り、想いを巡らせ高揚するユーグ殿下。
「仰せのままに。」
そう返事をすると、ロベールは軽やかな足取りで執務室を後にした。
次回からサン侯爵領。
皆、腹黒よね〜。




