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バーテン辺境伯の娘

お読みくださりありがとうございます


 その頃、ミシェルとレオン殿下はと言うとバーテン辺境伯領と隣国であるフリップ国の境界線付近にいた。


 山賊の出現していた山(フリップ国内)の麓の広大な平地に、大きなテントが建てられている。

 その中でも巨大なテントの中に四角いテーブルが一つ置かれ、三方面にそれを囲む者たちが顔を突き合わせていた。


 左側にバーテン領に隣接したフリップ国の領主貴族とその従者、その正面にはバーテン辺境伯と息子のジャン、その右隣の面にはフリップ国の山を勝手に支配していた元山賊の頭が難しい顔をして話を聞いている。


 本日は、和睦を結んだ隣国の貴族と元山賊の頭が、バーテン領へ和平協定をしにやって来ていたのだ。

 これまで元山賊は隣国にもバーテン辺境伯領にも多大な被害と悪行を繰り返してきた。


 五年前、この地へ、とある一家が亡命しにやって来た時もそうである。


 調度その頃も、山賊がバーテン辺境伯領で暴れまわり被害が出ており、バーテン辺境伯も武装し彼らを倒しに向かおうとしていたのだが…。


 そう、そんな時に、当時トロワ家だったサン侯爵家の面々がサル公国へ亡命するためにやってきたのであった。


 最初はなんてタイミングが悪いのかと、バーテン辺境伯は恨み節をもらしたのだが、妻の実兄一家であり、気の良い彼らを無下には扱えないと息子たちを当時のトロワ家(彼らの)もとへと向かわせ、伯爵だけが数人の一部隊を率いて一足先に山賊退治へと赴いたのである。


 だが、これが功を奏した。


 いつもは大人数で武装し撃退に押し寄せ動いていたのだが、山賊はその様子を遠くから確認するとサッサと逃げ帰ってしまっていた。

 だが、今回の隊を目にし、少ない人数と分かるや否や山賊は応戦してきたのだ。


 バーテン辺境伯領はバーテン伯爵を筆頭に見た目に反して猛者揃いである。

 あっという間に彼らを打ちのめし捕らえてしまった。


 長年苦しめられてきた問題が一気に解決した瞬間であった。


 それから隣国、フリップ国側の領主も加わり、話し合いが始まったのだが、問題が生じた。

 かなり話し合いが長引きそうであった為に、山賊は隣国へと一度引き渡され、まずは、隣国の領主と山賊による話し合いが始まったのである。


 山賊は思っていたよりも統率力の強い大きな集落を山中に作っていたため、すんなりと話が進まなかったのだ。

 隣国の領民との間でも反発が酷く有り、揉めにもめ、時間が掛かった。


 あれから五年、隣国と山賊はようやく和睦を結ぶ。

 そして、漸くバーテン領の出番となった。


 今後、バーテン辺境伯の領地にも悪さは一切しないという約束を交わしに、これまでのお詫びとして金塊を携えて山賊と隣国はやってきていたのだ。


 それが本日のこと。


 そして、異国間の問題でもあるため、それぞれの国から見届け人として代表者もやってきていた。

 フリップ国側からは、国から派遣されてきた少しだけ偉い地位のどこぞの貴族。

 ルッツ国側からの見届け人は王族のレオン。

 もちろんミシェルも連れている。


 レオンは五年前の出来事により、逃げることはないと分かっているのだがミシェルが傍にいないと落ち着けないというトラウマを抱えている。

 一日姿が確認できないとソワソワしだして不安で眠れないらしい。


 王族がわざわざ足を運ぶような案件ではないのだが、2人は新婚旅行ついでにと望んでやって来ていた。

 もちろん、例の厄介な案件を引き受けない為でもあるのだが…。


 だがそれだけでなく、今回はもう一つ重要な任務がミシェルには課せられていた。


 なぜこんな案件に王族がワザワザ?と、フリップ国側にビクつかれながら、話はスムーズに進んでいく。


「無事に終わりましたね。」

 ミシェルがバーテン辺境伯に話し掛ける。


 すると、バーテン辺境伯がやんわりとした口調で答えた。

「ああ、これも全て、あの時に君たち一家が、我が領地へ来てくれたおかげだ。君達は我が領へ平和という福を運んできてくれたのだ。とても素晴らしい一家だ。」

 何故か、バーテン辺境伯から神々しい者のような扱いを受ける。


「いえいえ、その節は、大変な時に押し掛けてしまい、ただただ迷惑な親戚でした。このことを後で知ることとなり、多大な迷惑をかけたことを心苦しく思っておりました。それなのに、今回のことをすんなり受け入れてくれて、サン侯爵家は大変感謝しておりました。」

 ミシェルは心から礼を述べる。


「何を言うのだ。恩人の侯爵家が娘を貰ってくれると言う話。喜ばしい限りですよ。あの子も、この件が全て片付くまではと、そちらへ待ってくれと我儘を通し続け長らく待たせてしまいましたから。我々は白紙にされてもおかしくないと考えていたので…どうか我が娘を、家族として愛してやってくれ。よろしく頼みます。」

「はい、承知しました。」

 ミシェルは強く返した。


 本当に、バーテン辺境伯は紳士で、優しく、強い、素敵なお父さんだ。

 どこからともなく沸き上がる威厳が、うちの父とは違うなと、心の中で思いながら握手を交わす。


 バーテン伯爵は、この後、隣国の領主と元山賊と語らいの宴があるそうで、この場に残ると言う。


 ミシェルとレオンは馬車に乗り、バーテン伯爵の要塞へと向かった。


 到着すると、大きな門を数名の騎士が押して開ける。


 2人を乗せた馬車が要塞の入り口に辿り着き、レオンが先に下り、ミシェルをエスコートする。

 そのタイミングで、バーテン伯爵家の面々が迎えに出てきた。


 向き合った際に、レオンが目を丸くして驚いていた。


「レオ、どうしました?」

 ミシェルが聞く。


「ああ、前に訪れた時は、その、そこに居る者には一度会ったのだが、確か甲冑を身に着けていたので勝手に男性だと勘違いしていたので。驚いたな、本当に女性であったのか。」


 そう、例の亡命の際、こちらに来たレオンは、彼女を女性だとは認識していなかった。

 しかし、現在、目の前にいるこの者は肩掛けのマーメイドなドレスを着こなす健康美人さんである。


「ええ、彼女がバーテン辺境伯の子女、ガブリエル。そして、兄さんの婚約者よ。」



ガブリエルは男女共に使われる名、愛称は女性だとガビ(他にもある)、男性だとガブ(他にもある)といった感じに異なっていたりする。


逃亡した際のガブリエルが甲冑姿の時は、まだ幼い時に数回会った従兄妹扱いだったので、そこまで親しくなくガブリエル呼び。

お兄ちゃん、実は昔からガブリエルが大好きだったので、まだガブリエルに婚約者がいないと知り、その後に結構頑張りまして、ガビと呼ばせてもらえるようになりました。


=Memo=

バーテン辺境伯の領地は、サル公国とフリップ国の山に接している。

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