五年後
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―――5年後。
トントン。
ドアをノックする音がする。
「入れ。」
ユーグ殿下が入室の許可をする。
「殿下、お忙しいところ申し訳ありませんが、こちらの案件の処理をお願いいたします。」
そう言って、ユーグ殿下の元へやって来たのは、ロベールである。
「ああ、これはレオンに回せ。これは厄介な案件だ。」
忙しさにイラつきながらユーグが返答する。
「残念ですが、レオン殿下は新婚旅行代わりにと、バーテン辺境伯の領地のイザコザ問題を片付ける為に、一昨日から王都を離れております。ですので、この案件にはとりかかれません。この件は急を要しますので、こちらでの処理をお願いします。」
ニコニコしながら言い放つロベール。
要するに、お前がやれと言っている。
「お前、アイツがいないって知っていたな。」
「ええ、存じておりました。昨年、この領地の同じ案件をユーグ殿下がレオン殿下に押し付けられましたよね。レオン殿下はどこに行くにも妹を同行させますので、昨年、あちらの領地で私の妹がかなり酷い目に遭わされたようで。まあ、母さまの侍女が念のためにと同行していたので難を逃れましたが。同じ目には絶対に会わせたくなかったもので。私は妹がとても可愛いのですよ。」
ロベールが悪気も無く言い放つ。
「はあ、この領地の貴族は、白馬の会に熱中するあまり嫁ぎ遅れた娘をどうにか王族の妾に添えたくて突拍子もないこと仕掛けてくるのだ。去年は町のゴロツキを雇い、侵入者を偲ばせたそうだな…捕まった時点でその者は自害したとかで主犯がうやむやになってしまった。はあ、本当に厄介だ。よし、わかった!それでは、私が動こう!とは、絶対にならんからな!!私がそう言う性格なのは、お前が一番よく知っているであろう。あっ、そうだ!?これはフィリップ叔父上に回そう。王族共通の管理地域での問題だから、叔父上でもよいだろう。お前が大公のもとへ直接行って渡してこい。」
書類をグイっと押し返し、ユーグは言った。
「クッ…分かりました。嫌がらせかよ。」
冷汗たっぷりにロベールは書類に手を伸ばすが、掴まずにいた。
ロベールとジャンヌの恋は進展していない。
私生活だけは安寧な日々を送りたいとロベールは希望しているので、ユーグ殿下によく似た性格であるジャンヌを妻にすることは荷が重いと考えている。
というか、最初から自分と王族との結婚なんか恐れ多く絶対にありえないと拒否してきた。
だが、美しい女性に慣れていない気の弱いロベールは、グイグイとアピールしてくるジャンヌを上手くあしらう事が出来ないので、今は逃げ回っている状態であり、もう何年もその鬼ごっこは続いていたのだった。
「ロベール、なぜお前はジャンヌを受け入れてやらないのだ?想いは否が応でも伝わっているだろう…アイツは従姉弟の私からしても美しい容姿だし、賢い女性だと思うのだが、何が不満か?」
ユーグがこんな風にこの話を切り出すのは初めてだった。
「不満などありません。私は、公女様とは何もかも釣り合いません。それに…私は、結婚を望んでいませんので。」
初めての質問に驚き、真剣に答える。
「お前、ヘタレだな……」
「ヘタレは父親の教えでして。」
「どんな教えだよ。」
「女性が喜ぶと教えられました。」
「……いいからコレをモンフォート公爵家へ渡しに行け。」
「うっ、はい。」
ロベールは逃げられないと諦めて、渋渋、書類を受け取る。
直接公爵家へ渡しに行けという殿下の命令は、かなりの嫌がらせであったが、彼の優しさでもあった。
本日は、短いので小話を。
レオンはミシェルが見える位置に居ないとトラウマの所為で眠れなくなるので、結婚してから毎夜、ミシェルと同じベットで寝ているのですが、婚前は流石に同じベッドとはいかなかったので、同室の端と端に二つベットが置かれ2人は寝ていました。
大変だったのがミシェルの侍女イリスとレオンの侍従(乳母の子)。
2人がベットとベットの間に椅子を置き座り、睨み合い、毎夜、彼らの監視をしていました。
そして、五年が経ち結婚する頃には、この2人は、いつの間にか恋仲になっており、結婚していたそうです。




