衝撃的な光景
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「今の言葉は聞き捨てならんぞ!?」
話に割り込んだのは、お怒りのユーグ殿下だ。
陛下(父親)に憤怒の弟を押し付けたことで、その後がどうなったのかが気にかかり、様子を見に来ていたらしい。
先程のジャンヌの言葉に腹を立て、コッソリ窺っていたはずが反応して前に出てきてしまった。
「王位継承権の順位が不服だと言うのか!?発言を撤回しろ!!私以上にこの国を想い、国の発展を願う者は居ないぞ。自分の方がましだと!?それだけはない。絶対にない!ジャンヌ、お前は頭が悪いのだから論外なのだぞ。」
闘争心むき出しの騎士のような威圧がミシェルの位置まで届く。
継承権順を否定されたことは、相当頭にきたようだ。
「そう言うところ、平気で人を下に見て、決めつけ、すぐに感情の沸点を上げる。そんなんだから、ロベール様の作戦に打ち負かされるのよ。」
ジャンヌによりロベールへと流れ弾が飛んできたが、ロベールはミシェルの後ろにすでに避難していたので無事だった。
雲行きが怪しくなる。
睨み合う2人の間にバチバチと火花が散る。
これは…嵐が来そうだ。
王妃やレオンのような遊びも含んだ傍からは優雅に見える喧嘩であるならば周囲に気づかれることはないのだが…。
こちらの喧嘩は日頃の鬱憤が溜まりに溜まった爆発寸前なガチ喧嘩な模様。
結構な大声を荒げてしまっている。
「そもそも、ロベールは私の側近だ。私が見つけたのだぞ。だからあとから手を出そうとするな。ジャンヌはいつも私の気にいる者ばかりを掻っ攫うとする。そういうのはもうやめてくれないか!?」
ユーグは人差し指をジャンヌの肩へとトントンと突きながら話し、最後に少し力を入れて押した。
ジャンヌの顔が歪む。
少し痛かったようだ。
「何を言っているのかしら?ユーグこそ、いつも私が目を付けている者ばかり強引に引き入れているじゃない。ロベール様は私のお父様が先に見出していたのよ。私は、父がこれ以上ない才能の持ち主だと言うので、ずっとずっと気になってた。ワザワザ彼に会いに領地まで行ったし。そして、彼と一日お話して彼の虜になったのよ。なかなかチャンスがなく、お会いするのにとても時間が掛かってしまった所為で、強引なユーグの側近にすでにされてしまって先を越されていたけれどね…腹立たしかったわ。よって、目を付けたのは私が先ですから。」
自分の肩に触れていたユーグの指を掴み力いっぱい掴み、勢いよく振り下ろす。
ユーグが腕を軽く痛める。
「お前!?いいか、ロベールはすでに私の側近だ。なんと言おうと私のだ。そうだ、彼に相応しい令嬢を私が選び、彼へと紹介することとしよう。決してジャンヌではないぞ。だから、これ以上、ロベールの周りをうろつくなよ。」
ジャンヌの肩を拳で先程の指よりも強めに押す。
軽いので、ジャンヌは少し揺れたくらいだ。
「痛いっ。あんたって人は!?なんて傲慢なのよ。私はロベール様を気に入っているって言っているでしょう。他の令嬢を紹介するですって…キィーーーー!!!許せない。ユーグの婚約を私がどれだけサポートしてやったのか知っているくせに。恩をあだで返す気なのね。それならば、私も黙っていないわよ。」
ジャンヌがユーグの肩を拳で思い切り押し返す。
結構強かったのでユーグがよろける。
「おい、痛いぞ。黙っていないってなんだよ。俺は、別にやましい事なんてないぞ。婚約もお前の手を借りなくても、公爵家との話し合いは、すでになされていたのだからお前に恩はないのだ。むしろ、ロベールがお前と夫婦にならない事の方がロベールは幸せなのだぞ。たから私は人助けをするだけだ。」
ユーグがジャンヌの肩をさらに力を込めて押す。
今回は結構強めで、ジャンヌが後ろへ二、三歩よろけ下げられるほどであった。
「イッター!!そう、そっちがその気ならば、バラすわよ。あんたのこれまでの恋愛が、来るもの拒まず去るもの追わずだったことを、男でも女でもとっかえひっかえして、叔父様たちを困らせてきたくせに、あんたが恋愛を偉そうに語るな!!人を本気で好きになったことがない奴が、人助けだ!?フンッ、お前に助けてもらった者は船が小さ過ぎて難破するわよ!!」
この言葉に反応したのは、ユーグの後ろに居たイル公爵令嬢であった。
「とっかえひっかえ…男も女も。」
顔面蒼白になっている。
「ジャンヌ!!お前って奴は!!!!!」
その一言が放たれた瞬間、ユーグの理性が爆発しジャンヌに掴みかかろうとしていた。
急いでジャンヌの前に体をスライドし、両腕を掴んで止めに入るロベール。
公の場での王子の暴力は流石にマズいと判断しての行動だ。
しかし、ユーグの怒りは相当であった。
「そこをどけ!!」
ロベールを振り払おうとする。
踏ん張るロベール、腕を右へ左へと押し問答をした後、左へ大きく体制を崩す。
そこに居たのがミシェルであった。
驚いたミシェルは、後ろへ下がろうと考えたのだが、高めのヒールが引っかかり、後ろへと倒れ込んでしまう。
それを見たレオン殿下がもの凄い速さで彼女の元へと走り寄る。
ミシェルは倒れそうになっていたが、差し伸ばされた手をとっさに掴み、頭を打つこともなく、ギリギリで尻もちをつかないでいられたのであった。
ミシェルは力強い手にそのまま引っ張り上げられ、倒れる前の体勢へと戻ることが出来た。
「兄さん、ありがとう。」
手を差し出し、助けてくれた兄にお礼を言った。
本当に尻もちをつくところ、ギリギリであった。
ドレスのまま倒れて込んでいたら、ドレスがはだけて、この注目の中で酷い恥辱を受けていただろう。
「ミシェルが無事でよか……ぎゃああああああああああ。」
ミシェルの体勢を戻した直後に、ミシェルの背後を見てしまった兄が、強烈な悲鳴を上げた。
ミシェルは驚き、何事かと兄の驚いた表情の先を確認すべく、後ろをゆっくりと振り返る。
するとそこには、衝撃的な光景があった。
ロベールの見たものとは…




