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図書室での出会い

お読みいただきありがとうございます。

 あれから五日後。

 本日は、国の裏諜報部隊、通称‘王家の耳’の集まりである。

 表向きには、何にものにも属さない中立派と称される貴族がお呼ばれしたサン侯爵家主催の晩餐会だ。


 父がこの組織の次の総代となる予定なので、侯爵は彼らに父をお披露目し、反応をみたかったらしい。

 招待状にその意志を示すコードを織り交ぜて送ってあるので、侯爵の横に父が居るのを見れば、父が新たな長になると認識してくれるはずだ。

 きっと皆、賛同してくれるとサン侯爵は自信満々に言っていた。


 その言葉通り、侯爵の元へやってきた貴族が横に居る父へ話し掛ける際に、口を揃えてこう言っていった。

「我が家にも是非いらしてください。」


 この言葉に含まれるコードは、代替わりを受け入れたというものらしい。

 その言葉に父は一先ず安心したのだった。


 どうやら、大公のお陰で、裏での父の評判はすこぶるよろしいようだ。

 

 ミシェルは晩餐会には出ないのだが、食後に皆へ紹介はするからと、ロラさんから呼ばれるまでは、眠らないで起きているように言われていた。

 それなので、図書室で本を読みながら時間を潰して待っている。


 そこに、楽しそうなお喋り声を響かせて令嬢達がやってきた。

 彼女達はミシェルを見つけると素早く移動して声を掛けてきた。


「初めまして、あなたにお会いするのは初めてですね。私はジャンヌ・ド・モンフォートと申します。」

 声を掛けてきたのは、銀髪に小さな花と真珠の飾りを絡ませ緩くまとめ編みしている、濃い紫色のドレスを纏った美しい女性であった。


 後ろに令嬢を2人、引き連れている。

 1人は気が強そうな印象で、目玉がこちらに飛んでくるのではと思うくらいミシェルを見てくる。

 もう1人は気の強そうな子の後ろに隠れており、オドオドしてこちらを伺っている。


「ミシェル・ド・サンと申します。あの、失礼ながらお尋ねします、モンフォート大公姫君でしょうか?」


 モンフォート公爵とは王弟様のことだ。

 今日、我が家に来ているモンフォートというならば、おそらくこの人は王弟様の娘だろう。


 王弟様は諜報部隊以外にも存在する王家の裏部隊をまとめる総隊長であるので、今日の晩餐会に招待されている。

 一緒に来たのだろう…でも、子供は晩餐会には参加できないはずだ。

 それなのに、なぜついて来ているのかと、不思議に思う。



 それにしてもこの姫君…確か、兄より歳が2つ上であったかな?

 もの凄く大人っぽく感じる。


 胸や尻の所為?スレンダーなのに、結構なボリュームがあるもの。

 いえ、唇の所為?厚みのある唇にこれでもかと真っ赤に塗ってあるから、白い絹肌には余計に際立って見えているもの。


 私が健全な男だったら誘われていると勘違いしそうな雰囲気が漂っている…羨ましい。


「そうですわ。モンフォート大公は、私の父です。やはり、貴女がミシェル…フフッ、ある御方から貴女のお話をよく聞かされておりますの。それはそれはよく。フフッ。」

 優しく笑い、大公令嬢はその後も行きつく暇も与えず会話を続けた。



 気が付けば、後ろの令嬢達も自然と会話に加わっており、さらに話が弾んでいた。


「知っていまして?ルイ殿下の王位継承権の剥奪が本格的に決まったそうです。」

 あの先程までオドオオドしていた令嬢がミッシェルに得意げに話し掛けてくる。

 彼女は、ボンボン子爵家の令嬢マリー。

 どうやら打ち解けてくれたみたいだ。


「それ、この前、ジャンヌ様から聞いたばかりのやつでしょう。」

 マリーに、気の強そうでこちらを見ていた令嬢がツッコミを入れる。


 こちらのご令嬢は、ナヴァル男爵家の令嬢クロエ。

 彼女は大公令嬢の大ファンで姫君に近づく者には男女問わず警戒心が強く出る。

 ジッと見つめる癖があり、目力がもの凄く強いので、よく誤解されてしまうそうだ。


「いいじゃない。この話、面白いもの。」

 マリーがクロエに睨みを利かす。


「面白いのですか?私はここの所忙しく過ごしていたので、その話を知りませんでした。ぜひ知りたいわ、続きを教えて。」

 ミシェルは本当に知らなかったので、続きを聞きたがった。


「もう貴女、最高ね!ミシェルって呼んでいいかしら?私のことは好きに呼んで。それじゃあ、続きを話すわよ。実は、ルイ殿下が事件を起こしたことにより王位継承権を剥奪されたから、婚約者であるイル公爵令嬢が婚約破棄となったことは御存じよね?それなのに、すぐにユーグ殿下の婚約者候補となったの!しかも、ユーグ殿下の婚約者へ決まりそうなのですってぇえ。」


 この言葉にミシェルは固まった。

 何故ならば、ここに居るジャンヌ様こそが、第二王子であるユーグ様の最有力婚約者候補だったはずだからだ。

 昔から社交界ではかなり有名な話である。

 この短期間で、何が起こったのか?


「その顔は、私の噂を知っておいでのようですね。そう、ユーグの婚約者最有力候補と、今まで私は噂されておりました。だがしかし、私はアイツが心底嫌いなのです!同族嫌悪なのですよ!だから、彼との結婚生活など全くもって考えられず、ずっとこの縁談話を断る方法を模索し、両家に損のないように世間的には殿下が学生の身であるので正式発表は保留と通してきました。これは彼にも都合がよかったのです。そこに降って湧いた、有難いお話。逃がせない、推し進めるしかないでしょう!そう、殿下を説得したのですよ。イル家ご令嬢ロザリア様は、未来の第一王子妃でした。のちのち王妃という立場で王妃教育をすでに受けております。さらには第一王子派の筆頭貴族のご令嬢なのです。上手くすれば派閥問題もサクッと解決出来ますよと。多方面に説得、誘導を全力で行いました。それになんと彼女、実は、ユーグの事が大好きだったのです!つれないルイ殿下の態度より、横で優しく話し掛けてくれる男にコロッとだま…とまあ、あんなに容姿端麗なロザリア嬢からユーグ殿下は好意を向けられているわけですよ。どうですか?これで正常な男が落ちないわけがないじゃないですか!?落ちたのです!!…すみません、つい嬉しさで熱が入ってしまいました。」

 先程まであった彼女の色気は何処へやら?

 ジャンヌは大興奮しながら全てを熱く語ってくれた。


「そ、そうだったのですね。」

 そんなに大公姫君はユーグ殿下と結婚したくなかったのかと察し、彼女の強く熱い想いに圧迫され、ミシェルは一歩後ろへとたじろいだ。


 ジャンヌに話を横取りされ面白くなかったマリーが、さっさと次の話題へ変えた。

「ミシェル、ではこれを御存じかしら?レオン殿下の話は、お聞きになりましたか?彼は第三王子で今まで派閥争いには一切関与しなかったので、あまり貴族たちから有力視されておらず婚約話は持ちかけられていなかったそうなのですが、例の事件以来、レオン殿下のもとにも多くの婚約話が寄せられているとかで――」


 マリーが話している途中に

「ミシェル!?ここに居たのですか?」

 と背後から声が掛かった。

 呼ばれた方を振り向くと、兄のロベールがいた。


王弟は語る。

貴族なのだから、地味に目立たなく過ごすなんて、それ相応の努力と根回しが無ければできやしないことだと、だから俺の親友シモンは誰よりも凄いと酒を飲んでは自慢している。

=人物memo=

ジャンヌ・ド・モンフォート:王弟(大公)の娘。王女。公爵令嬢。見た目は妖艶な美人だが…中身はまだ秘密。

クロエ・ド・ナヴァル:男爵令嬢。ジャンヌの熱烈ファン。ジャンヌとは幼い頃に祖父に連れられて参加した王宮でのお茶会でジャンヌと出会う。目力が強いので誤解されやすい。背が高く、正義感が強い。

マリー・ツー・ボンボン:子爵令嬢。人見知りが激しい。クロエとは幼少期に母親に連れられて参加したお茶会で知り合い、仲良くなった。小柄。打ち解けるとお喋りが止まらない。センスが良く友人の衣装の世話をしたがる。


ロザリナ・フォン・イル:元ルイ殿下(第一王子)の婚約者。公爵令嬢。今はユーグ殿下の婚約者候補。


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