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会えない間の変化

いつもありがとうございます。


第三王子に皆の目が集中している。


「逃げるのは困ります。私は、シェリーと夫婦になりたい。だから、それはダメなのです。勝手なのは十分承知です。それに、我が一族には、あなた方が必要なのです。手放したくないのです。こうでもしないと逃げられてしまうと焦り、強引に事を運んでしまい、申し訳ないと思っています。王家を代表して詫びます。」

 第三王子が必死にあやまってきた。


「王族が易々と頭を下げてはいけませんよ。殿下は寄宿学校で耳にしていたでしょう。それに、相手があの侯爵ならば、逃げ切れるわけがないじゃないですか。ただの我が家のコミュニケーション、ブラックジョークですよ。それから私は両親の意見に従いますから。」

 兄が言う。


「そうですよ、殿下。身内の楽しい会話です。どうか気にせず流してください。それに、侯爵夫人になるのも私は悪くないし、とても面白そうだと思いますわ。ホホホッ。」

「私も侯爵のお仕事、なかなか面白そうだなと感じないわけではないのですよ。アハッ。」

 父も母もなんだかんだ言って現状を受け入れるようだ。


 残すは、ミシェル…。

 皆の視線が集結する。

 熱い視線を向けられたミシェルは、悩んでいた。


 家族がイイと言うのであれば、侯爵家となることは賛成である。

 というか、すでに父の養子縁組は済んでいるし、侯爵になることは確定しているので、どうこう言うつもりは全くないのだ。

 ミシェルが気がかりなのは、さっきも話していた通り、第三王子との婚約のこと。


 このままいったらあの用紙を提出されて有無を言わさず婚約は結ばれてしまうのだろう。

 何せ、相手は王家である。

 拒否件はこちらには無いに等しい。

 第二王子は約束を守ってくれるのと言っていたが、トロワ家からの名残で、王家を完全に信用できるかと言ったら、信しがたいのだ。

 いざとなったら亡命作戦再びである。


 正直、頭の中は大混乱だった。

 昨日まで亡命することで一生懸命動いていて、そして、王子に捕まえられ連れ戻された。

 その際に、信用していた侍女が裏切り、王家に唆されていたことを知ってから、気持ちは沈んだままだ。

 ミシェルは深く、深く傷ついていた。

 傷が癒える間もなく、突然の憎むべき相手からの求婚である。

 すんなりとこの状況を飲み込めないでいるのだ。


 言葉が出ず黙っていると、王子が口を開いた。


「大丈夫ですよ。シェリーの御父上が侯爵になったからと言って、私との婚約をあなたの意思無しで無理矢理に推し進めようとはしませんから。だから、そんなに思いつめないでください。あなたを苦しめたくはないのです。」

 苦笑いを浮かべ、王子がそう言った。


「あっ……」

 自分は素で顔に出てしまう程、侍女の裏切りを強く引きずっていたと気づく。

 それと同時に、彼の事を悪人と認識しているわけではないが、発端の引き金を引いたので、彼のことを受け入れられない自分がいて、ぎこちない笑顔で謝罪する彼を見ているといたたまれない気持ちを抱く。


 むしろ、これまでの対応から、彼は根がとても優しく善人だと思われるのだ。

 いっそ受け入れられないような酷い人であったならば、簡単に切り捨て、気持ちの整理が出来るのにと思ってしまう。


 それから、父は、ミシェルの気持ちを汲み取り、我が家族は現状を受け入れ、もう逃げることはないからと第三王子の前で誓い、城への帰路を促した。


 それにより、近いうちに、また会いに来ますと王子はミシェルへ言い残し、安心して城へと戻って行った。


  ***


 だが、近いうちにと言っていたにも関わらず、あれ以降、レオン殿下はミシェルに会いに来なかった。

 二月後にはサン侯爵の爵位を父が継ぐと決まっているので、侯爵領へ向かわなければならない。

 あと王都にはどれだけの日数、居ることが出来るのか不明なのに、これではもう会えないのではないのか?と、不安になる。


 子爵家に全く関与してきていない叔父の為に、両親が領地の全てを説明し引継ぎを終えるまで、しばらくの間はここに居るようなのは確認したのだが、正確な期間は分からない。


 さらに数日後、相変わらず、王都のトロワ子爵邸で過ごすミシェルの元へ、王子が訪れることはない。

 だが、第三王子は手紙と贈り物を毎日贈ってきていた。


 手紙の中で好きな花の事が触れられていたら、その花を

 好きな食べ物なら、その食べ物を

 好きな詩ならば、それが載る本を

 と言った感じで、あの時の言葉通り、自分を知って欲しいが溢れているやり取りであった。


 そして、レオンが来られない理由も、手紙にて判明した。

 第一王子の後始末で忙しく動いているから屋敷へ伺えないと記されていたのだ。

 その文章を読んだのだが、仕方がないなという反面、約束したのに来てくれないというのは面白くないなという不満な感覚が沸き上がった。


 贈られてくる手紙には、自分の事を知りたいと思っていることや王子の事を知って欲しいという気持ちが溢れてはいるのだが、婚約のことについては一切触れてこなかった。

 婚約のことに触れないから、心に負担になることもなく有難かったのだが、何故か少しばかり寂しさも感じていた。


 家族でサン侯爵領へ旅立つ日の前日に、第三王子はミシェルにようやく会いに来た。


 王子の訪問を聞かされた時は、やっと会えるのかと喜びの感情が沸いた。

 その気持ちに気づいたミシェルは、戸惑い、恥じた。

 短期間での気持ちの変化に動揺するのであった。


 王子訪問日が知らされた。

 ミシェルは王子が来る前夜、早い時間にベッドへ入り、横になっていた。

 だがしかし、ここ最近悩まされている感情の変化問題がチラつく。

 悶々とした感情がぶり返しされてしまう。


 長い時間、否定と肯定を繰り返し、考え続けたのだが答えは出ることが無く、その夜はなかなか寝付くことが出来なかった。



やっと王子に会えるね。


ブックマーク、評価、ありがとうございます。

読んでくださっている人がいてくれると思うと、毎日頑張れます。



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