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トロワ邸到着

いつもありがとうございます。


 トロワ子爵領のマナーハウスに到着した。

 領地経営に力を入れてきた甲斐あって、子爵領は実り豊かな大地、安定した生活を送る明るい領民たちのお陰で、潤いは多いようである。

 トロワ邸も、なかなか立派な建物であった。


 邸宅の前に馬車が着くと、正門の大きなドアが勢いよく開いた。


 父が両手でドアを開け放ったポーズのまま突っ立っている。

 そして、泣いた。


 父は家族が馬車から降りているのを確認すると、速度はかなり遅いが駆け足で近寄ってくる。

 目の前に来ると、無事でよかったと繰り返し発し、母、ミシェル、兄の順で抱きしめた。

 一周廻ると、再び戻って母に抱きつきながら、こう言った。


「エリィ~、私、侯爵になるみたい。」


「「「ええぇぇええ!?!?」」」

 家族がそろえて声を上げた。


「侯爵になるってどういうことよ?」

 母が問う。

「え、修道院はどうなるの?ちょっとだけ本気だったのに。」

 ミシェルが問う。

「処罰を受けるはずではなかったのですか?」

 兄が問う。

 同時に質問した。


「あ…被ったから、お先にどうぞ。」

 兄が譲る。

「えっ、私も別に。どうぞどうぞ。」

 2人でアタフタしていたら、父も一緒になって困り出している。


「もう、シモン、どれでもいいから早く答えて。」

 と、母が憤慨する。


「は、はい。実はあの後…」

 父が語り出そうとした時、咳払いが聞こえた。


「ゔゔん。」

叔父さんだ。


 父の後ろから追いかけてきていた叔父さんが気づけと、私達の後ろへと視線を促す。

 皆が一斉にそちらへ視線を移す。


 あっ!?と思わず声が出そうになった。


 そう言えば王族が居たのだった。

 気が付いたトロワ家はちょっとだけ焦った。



「ユーグ殿下、レオン殿下。お、お待たせして申し訳ありません。このような状況なので十分なおもてなしは致しかねますが、どうぞ体を休めていってください。」

 応接室へと王子達を父が案内する。


「ただいま部屋を用意しております。その間、どうぞ、こちらでごゆるりとおくつろぎください。私達は少しの間、外させていただきます。」


 父が紳士な微笑みで伝えると、第二王子がこう言った。

「どうせ、あなた達は先程の話の続きをするのだろう。ここでしたまえ。」


 父が少し考えたのち、ではここでと王子達の座るテーブルを囲み家族に座るよう合図を送った。

 皆、父に従う。


 父がこれまでの経緯を語り始めた。


 ***


 二手に分かれた後、大聖堂でミシェルの婚約解消を行い、父の弟(ミシェルの叔父)の元へ向かい、爵位を譲ることを承諾させた。

 その後、正体不明の者達によって、父は連れ去られたのだと言う。


 父の侍従兼護衛のポールに家族へ先に逃げるよう伝言を託し、大人しく捕まっていた。

 なぜ大人しく捕まったのかというと、傭兵の一人の剣筋から捕まえた人物に見当がついたからであった。

 そして、その人物は、自分の事を絶対に傷つけることはないと確信していたのである。


 小屋の扉が開いて入ってきた人物は…サン侯爵であった。


「やはり、サン侯爵様でしたか…」

 自分は分かっていたと主張するかのように、父は渾身の決め顔をした。


「やあ、トロワ子爵…いや、もうすでにトロワ前子爵だったな。元気なようで何より。儂は最近、足が酷く痛むのだ。立っているのがとても辛い。ここではなんだから場所を移そう。早く腰を下ろしたいのでな。」

 サン侯爵がそう言うと、父の体を椅子に縛り付けていた縄を傭兵が解いた。

 椅子から立ち上がり、父は侯爵の後をついて行く。


 馬車に乗り、着いた先は、ある人物の領地の要塞であった。


「シモン。こんなことになってしまって、すまない。」

 慌てた様子で謝りながら、玄関口へと迎えにきたのは、王弟であった。


 ***

 

「ちょ、ちょっと父さん!話が長いよ!このままだと日が暮れちゃう。細かい事はいいから、端折って話してくれない?それと、王弟様は敵なの?味方なの?そこが肝心だから先に話して。」

 兄は先が気になりすぎて、父のダラダラとした長話にしびれを切らした。


 気持ち良く話を語っていた父へ、重要な部分だけ端折るよう要求がきてしまい、父は少し残念に思い、若干焦りながら話を伝えようとする。

 王弟の印象を悪くしたくないので棘のように鋭い言葉は回避しようと考えを巡らせる。

 だが、父の王弟への気遣いの想いはあっけなく散る。

 割り込みがあった。


「フィリップ叔父は所謂、寝がえったのだ。我々と手を組んだ。」

 第二王子が横から乱暴に放り込んできた。


 父を見ると落ち込んだ様子で、だいだいそうだと小さく頷いた。

 その様子にミシェル達は、父は王弟に裏切られてショックだったのだなと同情した。


 そんな雰囲気はお構いなしに、意気揚々と話し続ける第二王子。


「いい作戦が思いついたから我々が提案したのだ。子爵がトロワ家で無くなれば、トロワ家のモットーなど気にしなくてよくなると叔父に助言した。そうすれば、レオも君の妹と婚約できるし、私は君を傍における。もちろん、君の父親もフィリップ叔父と頻繁に会える。叔父が君の父親を大事に考えていることは調べがついていたのでね。前から考えていた作戦であったから叔父へと協力を仰いだ。だが、叔父はずっと渋っていたのだ。それで、どうにも決行出来ずにいたが、なんと、君達の方から我々の策中へ舞い込んできてくれた。それを叔父に伝えたら手を貸すと言ってくれたのだ。」


 その時の様子を思い出しているのか、拳を握り絞め、第二王子は満ち足りた表情で握った両手の拳を持ち上げ天井を見上げる。

 天井には何もない…。

 本人は演説が決まったようで、大変満足している様子。


 皆がそっと視線を戻す。


王弟様(あっち)から依頼しておいて、それは酷い仕打ちよ。」

 ミシェルが言うと、


「それがさ、その話なんだけど、案外、悪くない話しなのだよ。」

 ミシェルの叔父が割って入る。



=名前Memo=

第二王子:ユーグ 第三王子:レオン

ミシェル父:シモン 王弟様:フィリップ


サン侯爵:ミシェル父を養子にした侯爵

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