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裏切りの代償

ありがとうございます。今週もがんばります。



食堂にて、王族を前にしてミシェル、兄、母は黙々と食事を取る。


「ど、どうだい?口に合うかな?修道院は食事がとてもとてもとても質素だと聞く。こことは雲泥の差だとか。」

 第三王子が横に座る私に声を掛ける。


「はい、ここの食事はとても美味しゅうございます。私は質素なのも嫌いではありません。」

 食べるのを一度止め、平坦な口調で一言答える。


 そして、もう話すことはないと言った具合に、すぐさま続きを食べ始めた。

 夕食の時間はもの凄く早かった。


 ミシェルが立ち上がり、食堂を後にしようとした時に、第二王子が言った。


「少し待ちたまえ。女性は支度を手助けする者が必要であろう。そなた達には専属侍女をお返ししよう。」

 言い終えて、第二王子が手を叩くと、母の専属侍女と我が家を裏切っていた私の専属侍女が入室した。


 母は、自分の侍女に声を掛け従えて、部屋を出る。

 彼女は母が嫁ぐ前からのお世話をしている信頼し合う侍女だ。

 母の安堵する表情がその関係を物語る。


 それに引き換え、ミシェルは怒りに満ちていた。


 そして、

「私は、自分の事は自分でいたしますので必要ありません。申し訳ありませんが、彼女は既に我が家の者ではございませんので王宮にお返しいたします。それ故に、私は金輪際、この者に会う事はないでしょう。」

 ミシェルが悔しさを滲ませ、強く言い切る。


「ミシェル様!!」

 ミシェルの名を叫ぶ侍女の横を、寒々とした表情で通りすぎる。

 目も合わせないミシェルの態度に侍女は膝から泣き崩れた。

 振り返ることなく食堂を出て行った。


  ***


 夜遅く、ミシェルは寝付けないでいた。

 喉が渇くが侍女が居ないのでお水を貰おうと、廊下に出た。

 うつらうつらと眠りこけかけていた兵士が、瞬時にシャキッとし背筋を伸ばし聞く。

「どうかなされましたか?」

「お水をもらいたいの。」

「では、私が持ってくるよう言いますので、お部屋でお待ちください。」

「いいえ、少し歩きたいから、そのついでに自分で取りに行くわ。」

「分かりました。お供いたします。」


 兵士の誘導で、厨房へと歩く。

 近づくにつれて、誰かの泣き声が聞こえてきた。


 厨房の横にあるメイドたちの休憩所からであった。

 そこに、2人の女性が座っていた。

 突っ伏した女性が鼻を啜りながら激しく泣いていて、もう一人が泣いている女性の肩を優しく撫で、慰めている。


「どうして、どうしてこうなってしまったの?ズズッ。私はミシェル様の侍女でいたかっただけなのに。グスン。私の身分だと王宮務めは出来ないけれど、このことが成功したら、ミシェル様が王子妃となられても、側でお世話をさせてくれるって約束したのに。ミシェル様に嫌われてしまった…もうお側には居られないわ。あああああぁぁ。」


 その言葉を聞いて、ミシェルはもと来た廊下へと引き返す。


「あの、よろしいのですか?」

 兵士が尋ねると、

「ええ、私は清らかな善人ではない。それに貴族なのよ。我が家を裏切った人間をおいそれと受け入れることは到底出来ない…。」


 兵士は飲み水の事を聞いたのだが、声を震わせ苦しそうな表情で答えるミシェルを見て、兵士は口を閉じる。

 兵士はそっと気配を消し、ミシェルの後ろを歩いた。


 部屋に戻ると、ミシェルはベッドに潜り込み、布団を体に巻き付け丸まった。


 朝になり、少し腫れた目をこすり、食堂へ行く。

 兄に会い、顔色の悪さを指摘される。


「大丈夫、少し寝不足なだけ。」

 兄を安心させるために出来る限りの笑顔で返した。


 食事は進まなかった。


 また、馬車に乗る。

 昨日と同じく第三王子と2人きりだが、話す気力はない。

 無言で外の景色を眺め続けた。


 いつの間にか、寝てしまっていたようだ。


 気が付いたのは、随分経ってからであった。

 馬車が小さな石に乗り上げ揺れた時に、その衝撃で起きたのだ。


 目覚めた時の自分の視線に驚きを隠せなかった。

 目の前に誰かの肩があった。

 そして、少しばかり目線を上げると、第三王子の顔が間近にある。

 驚いて、飛び起きた。


「ご、ごめんなさい。私ったらはしたない。昨夜眠れなかったからって殿下に対して無礼な行動を。申し訳ございませんでした。」

「構いません。それにシェリーの可愛い寝顔を眺めることが出来たので、私は得をしてしまった。」


 そんな嬉しそうな顔…何でするのよ…き、気まずいわ…恥ずかしいわ。

 困った表情で、次にかける言葉を探していると、王子が言った。


「もうすぐシェリーの家に着くよ。それまでは、私と2人きりだけれど…我慢してくれ。」

 そう言った時のレオン殿下の表情は、なんとも寂しげな微笑であった。


 ミシェルはチクリと胸を刺すものを感じたが、レオンの言葉に小さく頷き、距離を保って座り直す。


 ミシェルは、先程の王子の表情が気になっていた。


 私が冷たい態度だから、あんな表情をしたのよね?

 そんなに私の事を思っていると言う事なのかしら?

 でも、私は彼の事を何も知らない。

 横目でチラッと王子を確認する。


 王子と目が合う。

 焦って瞬時に顔を背ける。


 王子は苦笑いである。


 それから車内には、重い沈黙が居座っていた。



ありがとうございます。ヤッホイ!ありがとうございます。

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