それから
大変お久し振りでございます……ッ!!
皆さんは、覚えておいでだろうか?
オレアノの『いつか巨大化するから』発言を。
三年に進級した辺りから、確かにその兆候は見えていた。
大体同じくらいだった私とオレアノの身長が、少しずつ離され始めたのだ。
まぁ男の子だしねぇなんて暢気に構えていたのだが……。
三学年目の夏休み明け、正門に程近い船着場で、わあきゃあと声がする。
何だまた公爵令息と愉快な仲間達かと身構えたのだが、どうやらそうではないらしい。
何故ならば頻りに、「あれ誰!?」なぞといった声がする。
流石に皆が皆、こぞって生徒会メンバーを忘却したとは考え難いので、まぁ別の人間だろう。
という事で、ちょいと興味を惹かれて私も野次馬だ。
人垣の外からピョンピョンと跳ねて覗き見る。やけに滞空時間が長いのは、風使いのご愛嬌である。
跳ねる……跳ね……。
「は? あれ?」
見えたのは一人の男子生徒。
柔和で整った顔立ちは、黄色い悲鳴も納得の美形。
180cmを越えるだろう長身は細みに見えるが、その実しなやかに鍛えられた筋肉が服の上からでも窺える。
変わった髪型をしていて、長さは毛先が肩につく程度。長めの前髪をさらりと流しているけれども、左の米噛辺りの髪だけ後ろに向かって編み込み、それを大きな琥珀が飾られた髪留めで留めている。
瞳はその髪留めと全く同じ琥珀色。髪は他でお目に掛かったことのない、特徴的すぎる極々薄い水の色だった。
「オレアノっ!?」
驚いて声を上げれば、ニコリと笑った彼は気安く手を振ってくれた。
「レイチェル、久し振り。」
オレアノと二人、並んで正門を潜る。
「本当に驚きましたわ。随分と身長が伸びましたのね。」
「俺の家系の特徴なんだ。成人前に、急に身長が伸びるの。」
そう言えばこの夏休み中にオレアノは誕生日を迎え、本成年となった筈である。
「遅れましたわ。お誕生日おめでとうございます。」
私がお祝いの言葉を口にすると、彼はどこか誇らしげに微笑んだ。
「ありがとう。これで漸く――対等に並んだ。」
「対等に? どなたと?」
まさかアーノルドだろうか。私を守る為に、オレアノ――というか操船科の皆は、あのスットコドッコイと対立する事が多かった。
そんな私の思考が読めたのだろうか。
「……彼のこともね、決着を付けないとね。」
言って視線を流したその先で――、喧騒が聞こえていた。




