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華池(かち)の誓い


【前日譚のあらすじ】

後宮の庭園「碧蓮池(へきれんち)」で、目が見えず水ばかり呑んでいた不器用な錦鯉に恋をした若き官吏・陸雲(りくうん)。一度はあの子の姿が消えて悲嘆に暮れた彼だったが、朝廷の命で娶(めと)った盲目の幼き新妻・蓮華(れんか)こそが、人の娘へと生まれ変わったあの錦鯉その人であった。運命の再会を果たした二人の、その後の物語――。

【第一章 ぎこちない朝】

祝言の夜が明け、静謐(せいひつ)な朝の光が錦の帳(とばり)を透かして室内に差し込んでいた。

陸雲が目を覚ますと、すぐ隣で小さな体躯の蓮華が、どこか緊張した面持ちで縮こまるように横たわっていた。その手は、昨夜からずっと陸雲の衣の袖を固く握りしめたままである。

「……蓮華、起きておるのか?」

優しく声をかけると、蓮華は跳ね起きるように上体を起こし、光を宿さぬ瞳を瞬かせた。

「あ……旦那様。申し訳ございません、私、お側を離れまいと、ついつい袖を握りしめたまま……」

恐縮する少女に、陸雲の胸が甘く締めつけられる。

かつて池の縁で、ただ揺れる影を見つめることしかできなかったあの日々が嘘のようだ。いまや手を伸ばせば、その愛おしい温もりに触れることができるのだから。

「謝る必要などない。……むしろ、離さずにいてくれて嬉しいのだよ」

陸雲がそっとその手を包み込むと、蓮華の頬がポッと朱に染まった。

しかし、二人の甘やかな空気とは裏腹に、朝廷という場所はどこまでも冷徹であった。

朝の支度を整えにやってきた老侍女(じじょ)たちの目は厳しい。盲目で若すぎる新妻が、優秀で将来を望まれる若き官吏の足を引っぱりはしないか、と探るような視線を隠そうともしなかった。

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