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「3冊で1800円になります。」
いつもの片桐さんの明るい声。
その声と笑顔を目当てにレジに来る人たちがいる。
そんな人たちに笑顔を振りまき
店の売り上げをアップさせている片桐さんだけど
その声がトーンダウンする瞬間があった。
「これ、来週の予約しといてくれる?」
大学生の廣岡さんは、
週に一度必ず週刊誌を買いにやってくる。
理系の大学に通う廣岡さんは
専門の週刊誌をいつも予約して帰るのだった。
片桐さんは、そんな彼がくると
いつも不機嫌になる。
「よその店で買ったら?」
と、書店の店員にあるまじき言葉を吐いているのを
偶然聞いてしまった。
「なんで?」
天然かイジワルか、彼は片桐さんをじっと見据えて
聞き返した。
「あんたの顔なんて見たくないからよ。」
片桐さんが、心底嫌そうに言うと
「俺はここの客だ。
別にお前に会いに来てるわけじゃない。
自意識過剰じゃねーの?」
と、若干目を細めて毒を吐いた。
「はいはい、悪うございましたね。
540円です。ありがとうございました。
次のお客様どうぞ♪」
明らかにテンションの違う声で
列の後ろの客に声をかける片桐さんを見て
廣岡さんは、フッと小さく笑った。
「あいつ、ほんとむかつく!!!」
ボソッとつぶやく片桐さんを見て
「高校の同級生なんだってさ。」
と、雄輔さんが教えてくれた。
ただの同級生にしては、あの態度は妙だ。
あたしは、廣岡さんが来るたびに
密かに観察をした。
からかって面白がってる。
怒らせて笑ってる。
余裕の廣岡さんと、全く余裕のない片桐さんの
態度のコントラストが面白くて
何だか毎週廣岡さんが来るのを
あたしはひそかに楽しみにしていた。
そんなある日・・・・・・
閉店時間ぎりぎりに廣岡さんはやってきて言った。
「片桐、ちょっと付き合えよ。」




