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長い間ひきこもっていたあたしは
美容院に行っただけで体力を使い果たした。
綺麗にしてもらった髪型に心が軽くなることもなく
倒れそうになりながら帰宅した。
「若いモンが情けないねぇ。
それで仕事なんて出来てたのかねぇ。」
おばさんがぼそりという。
「仕事はちゃんと出来てましたよ。
人よりも余計にね。」
気分が悪くてはきそう・・・・
「そんなフラフラじゃ、満足に人並みの暮らしさえ
出来やしないよ。」
おばさんがいう言葉に反論さえできない。
車にかろうじて座りながら
しまいには反論することさえしんどくなってしまった。
帰宅したあたしは顔色も悪く、
今にも倒れそうだった。
そんなあたしを見て母はびっくりしてあたしに駆け寄った。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけないだろ。
こんなに弱るまで放っておくなんて
信じられないね。
この子はこのままじゃ死んでしまうよ。」
おばさんの言葉に母の顔が蒼白になる。
「あんたもいい大人なら、親に心配かけんじゃないよ。
いつまで引きこもろうってんだい。
いい加減に自分の食いぶちくらい
自分で稼ごうって気はないのかい。
情けないねぇ。」
容赦ないおばさんの言葉に母は
「この子は辛い目に会って帰ってきているんです。
休ませてやればきっと・・・」
と、あたしをかばってくれた。
「こんなに死にそうに弱ってんのに
まだ気がつかないのかい!」
おばさんの一喝に母が一瞬ひるむ。
「いいかい?人間どんなにつらくても
生きていかなくちゃいけない。
だったら、しっかり前見て歩くべきじゃないのかい?」
あたしの目をじっと見つめて
おばさんが言った。
「働きなさい。外に出て人と関わって
いろんなものを吸収して、頑張るんだよ。」
「もう疲れた・・・・」
あたしは、ぐったりして言った。
「もう頑張れない。。。。」
「いつまでも甘えてんじゃないよ。
明日また来るからね。
9時には出かける用意しておくんだよ。」
「おばさん・・・・・」
有無を言わせぬ強さで言い放ったおばさんは
打って変わって優しい声で
「今日はゆっくりお休み。」
と、一言残して
「邪魔したね。」
と、帰って行った。
「無理だったらお母さん、断ってあげるから
行かなくてもいいのよ。」
優しい母の声に、あたしは少し微笑んで
「ありがとう。」
と、一言残し部屋に戻ると
そのまま倒れ込むようにベッドに入り
朝まで目を覚ますことはなかった。




