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59話(41.2話)僕と、耐性の特訓。

  

 教官の隣にはミントちゃんとルビーさん、それからなんと昔ゴブリン村で僕を助けてくれたイケメンエルフがいた。

 

「あれ?イケメンさん!?なんでイケメンさん、ここにいるの?」

「昔なじみの校長に呼ばれてな。そこで、元勇者パーティの僧侶が妙な訓練を始めると聞いて、興味があった」

「やっぱ妙な訓練って認識なんだ……」


「ふむ。今回の戦いは、精神へ干渉する魔物と遭遇する可能性もある。ルビー様が対精神防御を鍛えてくれるそうだ」

 

「ルビー先生にお任せください!」

 

 ルビーさんが元気おっぱいに胸を張った。

 くっ、さすがだ。居るだけでおっぱいが頭を浸食する。

  

「なんとなくわかるけど、なんでルビーさん?」

「魅了のスキルを使えるからですわ」

「なるほど」

 

 初めてまともな特訓が始まりそうな気がする。

 

「それではルビー様。ご主人様を誘惑してくださいませ」

「スキルは!?」

「まずは素の状態でどこまで耐えられるか確認しますわ」

「それ魅了耐性じゃなくて僕の理性の検査だよね!?」

「細かいことを気にする男は嫌われますわよ」

「細かいことかな!?」

 

 ルビーさんが僕の前まで歩いてきた。

 そして両手を後ろで組み、少し前屈みになって僕の顔を覗き込む。

 

「ユーキさぁん?」

「はい」

 

 即答した。

 

「早いですわ」

「まだ何もされてない」

 

 ルビーさんがニコッと笑う。

 

「私のこと……好きですか?」

「好きです」

「ご主人様?」

「違う!! これは人間として好きって意味だから!!」

「開始三秒ですわ」

「まだ始まってないだろ!?」

 

 ルビーさんは楽しそうに僕の腕へ抱きついた。

 

「じゃあユーキさん。私と二人で遊びに行きませんか?」

「行く」

「ご主人様」

「待って! 今のは反射!!」

「重症だな」

 

 イケメンエルフまで真顔で頷いている!

 

「じゃ、じゃあ本番! 本番お願いします!」

「はーい! では魅了のスキル、いきますよぉ!」

 

 ルビーさんの瞳が淡く桃色に輝いた。

 ふわりと甘い香りが漂ってくる。

 頭がぼーっとする。

 だけど負けるな僕!

 あのゴブリン村の悲劇を思い出せ!

 どんな美少女に見えたって、中身は年配の雄ゴブリンかもしれないんだぞ!

 

「ユーキさぁん……」

「ぜ、全然……効いて……ない……」

「ほう」

「意外ですわね」

 

 リアとイケメンエルフが感心したような声を上げる。

 そうだろう!

 僕だってやればできるんだ!

 

「ぜんぜん……平気……」

「ご主人様」

「なに?」

 

 リアの視線を追う。

 

「え?」

 

 僕の右手がルビーさんの胸を揉んでいた。

 

「んっ。」

 

「…………」

「…………」

「いつから!?」

「十五秒ほど前からですわ」

「止めろよ!!!!」

 

 僕は慌てて飛び退いた。

 

「ぜ、全然効いてないと思ったのに!?」 

「頭部だけ抵抗に成功して、身体は完全敗北したようですわね」

「そんな負け方ある!?」

 

「えへへ。私の勝ちですね!」

「勝負だったの!?」

 

 ルビーさんが満足そうにおっぱいを張っている。

 すると、イケメンエルフが静かに前へ出た。

 

「次は私が試そう」

「イケメンさん!?」

 

「精神干渉への抵抗は冒険者にとって重要な技術だ。私にも無関係ではない」

 

 さすがイケメン。

 僕とは心構えから違う。

 

「では、いきますよぉ!」

 

 ルビーさんがイケメンエルフの前に立つ。

 再び瞳が桃色に輝いた。

 

「私のこと……好きですか?」

「…………」

 

 無反応。

 

 ルビーさんが腕に抱きつく。

 

「二人っきりで遊びに行きません?」

「…………」

 

 無反応。

 

「すごい!」

 

 僕は思わず声を上げた。

 表情一つ変わってない!

 

「さすが!」

「当然だ。長年の修練によって精神統一は身につけている。この程度の誘惑で心を乱すほど私は」

 

 リアが静かに言った。

 

「手」

「ん?」

 

 全員の視線が下へ向いた。

 イケメンエルフの右手が、無表情のままルビーさんの胸を揉んでいた。

 

 あ、つねった。

 

「あん」

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 長い沈黙。

 イケメンエルフが口を開いた。

 

「終わったか?」

「完全に効いてるじゃねえか!!!!」

「何のことだ?」

「その手だよ!!!」

 

 イケメンエルフが自分の右手を見た。

 

「…………」

 

 揉んだ。

 

「確認するな!!」

「…………」

 

 もう一度揉んだ。

 

「追試するな!!!!」

「ふふん!」

 

 ルビーさんが満面の笑みで胸を張った。

 

「今夜はお楽しみですね!」

「それ宿屋の主人が言うやつだろ!!」

「ユーキさんも陥落! イケメンさんも陥落! 二戦二勝です!」

「僕ら魅了耐性の特訓してたんだよね!?」

「ご主人様は開始前にも一敗しておりますので、実質二敗ですわね」

「勝手に戦績を増やすな!!」

 

 その横で、イケメンエルフは膝から崩れ落ちていた。

 

「……イケメンさん?」

「…………」

 

 自分の右手を見つめている。

 

「どうしたの?」

「…………私は」

「うん」

「まだ未熟だったようだ」

「そんな深刻な話!?」

 

 イケメンエルフはゆっくりと立ち上がった。

 その瞳には、今まで見たことのないほど強い決意が宿っている。

 

「修行に出る」

「何の!?」

「さらばだ」

「待って待って待って!!」

 

 イケメンエルフは振り返らなかった。

 颯爽と森の奥へ去っていく。

 

「イケメンさーーーーん!? めっちゃ強そうな助っ人キャラじゃなかったの!?」

 

 返事はない。

 やがて金色の長い髪が木々の向こうへ消えていった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ルビーさんが満足そうに腰へ両手を当てた。

 

「私の全勝ですね!」

「だからいつから勝ち負けになったんだよ!!!!」


「じゃあ今から、クラスのみんなも始めるね!」


 またルビーさん無双が始まる未来しか見えないよ!!! 


ご愛読ありがとう御座いました!

山吹先生の次回作にご期待ください!


コンテスト受賞したら続き書きます…

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