55話(4.3話)僕と、一括プロポーズ。
宴もたけなわとなり、盛り上がりが最高潮に達した頃。
広場の奥から、一際豪華な衣装を纏った美魔女風の女性──この村の村長さんが、しとやかな足取りで歩み寄ってきた。
「旅人さん。宴はお気に召していただけましたかしら?」
「はい! もう最高です! ご馳走様でした!」
僕がデレデレの笑顔で重々しく頷くと、村長さんは満足そうに微笑み、僕の前にそっと膝をついた。
「それは良かったわ。……そこで旅人さん、一つご提案がありますの」
「ご提案……ですか?」
「ええ。我が娘と、結婚してはいただけませんかしら?」
「ブッ!?!?」
唐突すぎるプロポーズのご指名に、飲んでいた謎の甘いジュースを吹き出しそうになった!
「け、結婚!? 僕と、村長さんの娘さんが!?」
「ええ、そうですわ」
「あ、あの……ちなみに、どの娘さんですか……?」
村長さんの後ろには、さっきまで僕の周りでチヤホヤしてくれていた可愛らしい女の子たちがズラリと並んでいる。どの子も甲乙つけがたい可愛さだ。僕が緊張しながら尋ねると、村長さんはニッコリと口角を上げた。
「え? ここにいる、全ての娘ですけれど?」
「全 部 の 娘 だ と ! ?」
僕の叫び声が夜空に木霊した!
全員!? ここにいる二、三十人全員と一括結婚!? なんだその夢のような重婚パラダイス!? 異世界法律どうなってんだ!?
「もちろん、全員あなたの妻として心を込めてお仕えさせますわ。……ただし、一つだけ条件がありますの」
「じ、条件……?」
「ええ。実はこの村の近くにある洞窟に、恐ろしい魔物が住み着いておりましてね。我が娘たちと結婚する挙式を行う前に、その魔物を討伐してきてほしいのですの」
村長さんの言葉に、女の子たちが一斉に「お願い、旅人さん……!」「私たちを助けて……!」とウルウルした瞳で手を合わせて頼み込んできた。
「う、う〜む……!!」
僕は腕を組み、重々しく頷きながら熟考に入った。
一括全員結婚……めちゃくちゃ揺らぐ! 揺らぐけど……やっぱり全員まな板なのが男として引っかかる……! いやまてよ……まな板でも四まな板で一巨乳ぐらいだと思えば……!
飯もご馳走になったし、困っているまな板たちを無下にして逃げるのも寝覚めが悪い……
僕はポンと手を叩いた。
「よし! 分かった! 結婚するかどうかは置いといて、食事の恩義もあるし、その洞窟の魔物の様子を見に行くだけならやってあげるよ!」
「本当!? 嬉しい! さすが旅人さん!」
「きゃーっ! カッコいい〜〜っ!」
歓声が上がり、まな板たちが一斉に僕に抱きついてくる。
ふと遠くの切り株に目をやると、リアが「あーあ」という顔でこめかみを押さえていた。
「……自分から進んで肥溜めに飛び込んでいくスタイル、実に潔いですわねご主人様。その飽くなき変態的冒険心には脱帽いたしますわ」
「人助け(?)しようとしてるご主人様に向かって肥溜めとか言うなよ!!」
こうして僕は、可愛いまな板たちの為に、翌朝一番で村の近くにあるという「魔物の洞窟」へと向かうことになったのだった。




