54話(4.2話)僕と、ハーレムの誘惑。
村の中央にある大きな広場に、これでもかと豪華な料理が並べられた。
こんがりと焼けた謎の大きな肉、色鮮やかな果物、香ばしいパン。一晩中森を走り回ってお腹ペコペコだった僕にとって、それはまさに夢のような光景だった。
「さあさあ旅人さん! たくさん食べてね!」
「あ〜んしてあげる! ほら、口開けてぇ」
「私のお膝、使っていいよぉ〜」
左右から美少女たちに抱きつかれ、あ〜んまでしてもらう始末。
「うまい! 肉もうまいし、みんなの優しさが心に染みる!!」
僕は深く頷きながら、完全に鼻の下を伸ばしてるのがバレないように苦労していた。
ふと横を見ると、リアが広場の隅っこで、出されたスープの器を怪訝そうな目で見つめていた。
「ねえリア! お前も遠慮しないで食べなよ! すっごい美味しいぞ!」
僕が声をかけると、リアは器をテーブルにそっと置き、果物を手に取りながら、冷ややかな視線を向けてきた。
「ご主人様。……よくそんな、泥水で煮込んだような物体を、嬉々として口に運べますわね。主人の味覚センサー、完全に腐食してるんじゃありませんか?」
「料理に対する酷すぎる暴言やめろ!! こんなにジューシーなお肉に向かって何を言ってるんだよ!」
「……ええ、ご主人様にとっては極上のジューシーなお肉なのでしょうね。どうぞお腹いっぱい召し上がりくださいな」
なんだよその哀れむような目は! リアのやつ、さっきから僕の好みに難癖ばかりつけてくる! せっかくの最高のご馳走なのに!
あ、ひょっとしてエルフと人間は味覚が違ったりするのかな?
すると、僕の膝の上に座っていた一番年下っぽい女の子が、僕の顔を上目遣いで覗き込んできた。
「ねえねえ、旅人さん……。お願いがあるんだけど……」
「ん? なに? なんでも言ってみなさい」
「あのね……この村に、ずっと落ち着いてくれませんか……?」
「……え?」
女の子の言葉に、周囲の美少女たちが一斉に頷き、熱っぽい視線を僕に注いできた。
「そうだよ! 私たちの村で、ずっと一緒に暮らそうよ!」
「旅人さんがいてくれたら、私たちすっごく嬉しいな」
「外の世界なんて危ないよ! ここでずっと、私たちと楽しく暮らそう?」
きたーーーーーーっ!!
異世界転生モノのお約束、ハーレム定住ルートのご案内ーーーーっ!!
「う〜〜〜〜ん!!」
僕は腕を組み、重々しく頷きながら熟考に入った。
正直、めちゃくちゃ魅力的ではある! 毎日可愛い女の子たちに囲まれて、チヤホヤされながら暮らせるなんて夢のようだよな!?
「どうかな……? ダメ……?」
ウルウルとした瞳で見つめられ、僕の理性が崩壊しかける。
だが……!
……しかし! 僕はまだこの世界に来たばかりだ! もっと広い世界を見たい! ……いや、正直に言おう! この村の女の子たちには『夢と浪漫(巨乳)』が足りないっ!! もっといろんな異世界の浪漫(巨乳)を確かめてからでも遅くないのでは!?ここで永住を決めてしまったら、僕は一生『豊かな浪漫(巨乳)』を拝めずに人生を終えてしまうかもしれないではないか!!
男としての切実すぎる欲望が、ギリギリのところで僕を踏みとどまらせた。
「う、う〜ん。 どうしようかな。 気持ちはすごーく嬉しいんだけど、まだこの世界に来たばかりだし……もっと色んなおっぱ、んんっ、場所を見てみたいかな、なんて」
僕が濁すように答えると、少女たちの笑顔がほんの一瞬、ピキッと引きつったような気がした。
「……そっかぁ。まだ、決めたくないんだね……」
「あ、うん。ごめんね?」
遠くの切り株で、リアが哀れみとドン引きが混ざった目で見つめながら、ぽつりと呟いた。
「……その変態のこだわりというのは、よくわかりませんわ」
「なんか酷いこと言ったかリア!?」
「いいえ。ご主人様の性癖の深さに感心していただけですわ」
そんなこと言っても、リアも胸は無いからなあ。
「ご主人様……。ちょっと、ちょん切ってもよろしいですか?今すごく不愉快な視線を感じたので」
「よくねーよ!!!!勘弁してください!」




