53話(4.1話)僕と、美少女パラダイス
4話と5話の間の話になります。
スターター村に着く前の話になります。
次は夜19時に次の話をアップします。
明日も7時と19時に更新します。
ネズミの大群から必死の思いで逃げ出し、夜が明けかけた森を抜けた僕たちの視界に、突如として飛び込んできた可愛らしい集落。
「はぁ、はぁ……! や、やっとついた……! 村だ! リア、村があるぞ!」
「ご主人様、見苦しく喘ぐのはやめてください。せっかくの朝の綺麗な空気が汚染されますわ」
相変わらずの毒舌を吐くリアの隣で、僕は感動のあまり涙ぐんでいた。
だが、その村の入り口に足を踏み入れた瞬間、僕は自分の目を疑った。
「あらぁ〜? 珍しいお客様ね!」
「本当だわ! 男の人よ! すごいすごい、カッコいいお兄さんだ!」
家々の扉が一斉に開き、中からぞろぞろと出てきたのは……なんとみんな、10代半ばから後半くらいの可愛らしい女の子たちだった!
しかも、異世界の民族衣装なのか、肩や太ももを惜しげもなく晒した、やけに露出度の高い服を着ている。
「なっ……ななな、なんだこの村はーーーーっ!?」
僕がパニックを起こしていると、女の子たちが群れをなして僕の周りに集まってきた。
「ねえねえ、旅人さんでしょ? 遠くから来たの?」
「お肌すべすべだね! どこから来たのぉ〜?」
「きゃーっ! 腕触っちゃった! 男の人の腕って力強いなぁ」
すりすりと体に擦り寄ってくる美少女たち。柔らかい感触と甘い匂いが僕の鼻腔をくすぐる。
鼻血が出そうだ! なんだこれ! 異世界ってこんな天国みたいなボーナスステージが存在するのか!? 10円玉の騎士として死んで本当によかったーーーっ!!
僕は重々しく頷いた。
「う、うむ。旅してるんだ。良かったら、食べ物をすこし分けてくれないか?できれば寝床も……」
完全にデレデレにならないように頑張って表情を整える。
すると、僕の腕に抱きついていた女の子の一人が、僕のすぐ後ろに立っていたリアにチラリと視線を向け、あからさまに嫌そうな顔をした。
「……ねえ旅人さん、後ろにいるその『ぶさいくさん』は誰? あなたの奴隷か何か?」
「ぶっ!?」
ぶさいくさん!?
あの流れるような銀髪の、顔立ちだけなら超絶美少女のエルフメイドであるリアに向かって『ぶさいくさん』!? どんな価値観をしてたらそんな暴言が出てくるんだよ!?
「あら、本当だわ。やだぁ、お肌も白くて気持ち悪いし、鼻もへんなかたち……すっごいぶさいく!」
「ねえぶさいくさん、私たちは旅人様をおもてなしするから、あんたはお給仕でもしててよね!」
女の子たちがクスクスと意地悪く笑う。
やばい! リアが怒る! あの毒舌エルフが本気を出したら、この村が魔法で灰燼に帰してしまうぞ!!
たぶん!しらんけど!
僕は恐怖に怯えながら、恐る恐るリアの顔を盗み見た。
……あれ?
リアは怒るどころか、どころか欠伸を噛み殺しながら、ドン引きしたような目で僕と『彼女たち』を交互に見つめていた。
「リア……? 大丈夫? 酷いこと言われてるよ……?」
僕が小声で囁くと、リアは僕の耳元に顔を寄せ、信じられないものを見るような低い声で言った。
「ご主人様。……まさかとは思いますが、そのような『特殊な趣味』をお持ちでしたの……?」
「は? 特殊な趣味って何のことだよ!?」
「いいえ、個人の性癖に口出しするつもりはありませんわ。ですが、その……私を『ぶさいく』と切り捨ててまでそちらを好まれるとは、ご主人様の業の深さには恐れ入りましたわ。どうぞ思う存分、そのお好みの相手と戯れていてくださいな」
リアは引きつった顔で後ずさると、僕からふいっと離れて適当な切り株に腰掛けた。
なんだよ……リアのやつ、自分が『ぶさいく』って言われたからって、意味不明な言いがかりをつけて逃げやがった。
「ねえねえ旅人さぁん、私たちの村、ゆっくりしていってね!」
「あはは、ありがとう! いやぁ、みんな本当に可愛くて……ん?」
僕を囲む十数人の美少女たちを見渡して、僕はふと、重大な違和感に気がついた。
……あれ?
確かに全員可愛い。肌もピチピチだ。
だが……。
そうだ!
だいじなものがない……!!
そう。この村の女の子たち、見事なまでに全員が「まな板」だ!!
僕の理想とする、豊かな膨らみ──いわゆる巨乳属性を持つ女の子が、誰一人として存在しない!
ううむ……贅沢を言っちゃいけないのは分かってる! 分かってるけど、だが僕は巨乳派なんだ……!
なんだと……なんだとぉ。
「旅人さぁん? どうしたのぉ? 難しそうな顔してぇ」
「あ、いや! なんでもないよ! えへへ、みんな可愛いねぇ〜(おっぱい……)」
デレデレと鼻の下を伸ばしたふりをしつつも、心の中で血の涙を流す僕。
そんな僕の情けない姿を、離れた切り株の上からリアが物凄い怪しい変態を見るような冷ややかな目で見つめていたのだった。
やめて。そんな目で見ないで!新しい扉が開きそうだから!




