52話 僕らは重々しく頷いた。
僕は死んだ。
きっと。
たぶん。
だって目の前に天使の輪っかみたいなのが浮いている、女の人が立っているのだから。
女の人の後ろの机の上で二匹の白いリスがお皿の上のひまわりの種を頬袋に詰めている。
しかし問題は、その人が何やらやたらサイバーな光るボンテージを着て、タバコ…いや、葉巻……?を、ぷかーっとさせていることだ。
「で、死んだわけだが」
僕は、後ろを振り返った。誰もいない。
「お前だよ!他に誰もいないだろ!」
僕は重々しく頷いた。
「やっぱり、死んだんですか。でもなぜ?」
全然身に覚えがない。僕が首を傾げていると、
女の人は僕に向けてぷかー、と煙を吐きながら呆れたように言った。
「覚えてないか?よーく思い出せ」
「うーん。あ。」
その瞬間、僕の脳裏に異世界を冒険した記憶がフラッシュバックして蘇った。
「裸の村人達とスライムを倒したり、裸の村人の踊りを見たり、裸の村人と温泉に入ったり……!」
なんかろくな記憶がないな!
サイバー女神はうむうむと頷きながら、
「他には?」
「ジャガイモを村人と一緒に育てたり……、なんでだかジャガイモって言葉がやけに嫌なんだけど……それから学園に通うことになって、魔王に攫われて……邪神を倒した!僕凄くない?」
「死因も凄いな『百合の間に挟まれて死亡』」
「ぐふっ(吐血)」
「お前には二つの道がある。いま向こう、異世界でお前を蘇生させようと呪文を唱えてるものがいる。そのまま向こうの異世界で生き返るか」
「え、それいいじゃん!あ、もうひとつはなに?」
「条件を満たしていない。もうひとつは二人でここに立ってないといけなかった」
「なんだそれ?僕とあなたしか居ないじゃん」
「そうだな」
ぷかーとけむりを吐く女神。
「その扉だ。そこから戻れる。ああ、もう必要ないから、次からはガイドはなしだ」
ガイド?ガイドってなんだ?そんなのいたっけ?
後ろにいつのまにか光る青い扉があった。その隣の黄色い扉は鎖で封印されてる。
黄色い方が条件を満たしてないってやつかな?
僕は青い扉のノブに手を掛け、もう一度後ろを振り返った。
机の上で、二匹のリスの内の一匹が、もう一匹からヒマワリの種を奪って独り占めして口の中に詰め込んでいる。
リスと目が合った。
自然と口に出た。
「何やってんだリア、行くぞ」
あ。
次の瞬間、ぼふん、とリスが白い煙に包まれ、メイド服のエルフの少女に変わった。
「ほひょひんはまもふひょふとおまひふぉ」
「何いってるかわからないよ!?」
あれ? 僕、なんで今までリアのこと忘れてたんだ……?
サイバー女神が、嬉しそうに口角を上げた。
「くっくっくっ。条件達成だ。黄色い方も解禁されたぞ。どこに通じてるかは言えん。選べ」
後ろを見ると、青い扉の右側にある黄色い扉も、神々しく光を放ち始めていた。
リアが袋の中に口の中の種をドバッと移しながら、涼しい顔で言った。
「ご安心ください。ネオ・ヨコハマ・シティではありませんわ」
「その様子だと、向こうの世界のこと知ってるな!?」
「さて、どうでしょうね? 私としては、ご主人様がサイバー義手に改造されて、またジャガイモみたいに不器用なトラブルを起こすのも一興かと思いますけれど」
「もう絶対に小指を自販機に挟んだりしないからな!!あと百合の間にも挟まらない!絶対にだ!!」
僕はリアと顔を見合わせた。
僕達は重々しく頷いた。
それから、二人同時にニッと笑った。
「よし、行くか!」
「ええ、どこへでも。お供いたしますわ、ご主人様」
僕は勢いよく、光り輝く黄色い扉のノブを押し開けた。
僕達二人は光に包まれて──
おしまい。
完結しました!
ここまで読んでもらって、本当にありがとう御座います。
と、思ったのですが!
狙ってたコンテストに文字数が足りませんでした!!
4〜10話追加します!
次から
53話(10.1話)みたいな形になると思います!
もしよければもうしばらくお付き合いくださいませ!




